第十話
カラとユーリルは今日も二人で食事している。
カラはようやく看護師としての業務を終え、再びユーリルと共に旅をすることとなった。
製薬工場の再建もそうだが注射器と針は使い捨てなので特に注意が必要である。
結局、工場が再開するまで王城内で血液検査をすることになった。
薬局で売ってる漢方薬はサングイス製薬に統一されクラス製薬ブランドは廃止された。
吸血族にとって漢方はあまりなじみがない。とはいえ……。
「慢性疾患に利くと言うから吸血族にもたぶんこの手の病気は利くはずだわ。思わぬ収穫ね」
ただ、既存の製薬ラインを復旧させないかぎり、人間に「サングイス製薬」の正体がばれる危険性がある。もう薬局では売り切れが続出している。
「それと俺たち、パワーアップしたよな」
「うん」
「もしかしてこのまま竜族の国を攻めるのかな」
ユーリルはドラグニアの方を見つめる。
「僕は竜族とも共存したいな」
「えっ?」
「だって竜の血はパワーアップアイテムなんだろ? だったら人間と同じように血液検査してドラゴンの病気を未然に防ぐ、その代りに竜の血を頂くという方法にしないって思ったの」
カラは意外そうな顔をしている。
「竜の血の効き目ってどのくらい?」
「そうね、一か月ってとこかしら」
「だったら竜族の血を飲み続ければ竜族よりも吸血族の方が立場が常に上になる」
「そうね。でも竜族の血は他の動物の血と同じ扱いで結局は人間の血を飲まないとダメなのよ」
「そっかー」
「でもいい提案だわ。明日、王様に進言してみたら」
「畏れ多いよ」
「じゃあ、私が進言しちゃう」
「ありがとう」
「ゼーマ様はもしかしたら獣人族、竜族、人間族、吸血族を束ねる王になるかも」
「すごいね。まさに大魔王だね」
「けど、この三種族だけじゃないの。海や島には海魔族もいるし」
「ああ……居たな。たまに船を襲う奴。あんまり強くなかったけど」
「西側の海岸線は海魔族の領土よ。なめちゃけないわ。島では私たちより強力よ」
ユーリルは少し考えたら言った。
「海魔族は全く動きないから一番後回しかな」




