第九話
獣人族とは……。
竜族や人間族と比べて素朴な一面もあるが怪力も持ち侮れない。そして魔族の中では一番人口も多い。繁殖力があるのだ。獣人族は獣の俊足さも兼ね備えている。獣人族の中には人間に化ける種族もいるから要注意だ。
竜族のような圧倒的強さはないが、ゲリラ戦も行える。
サラチア山脈を越える。本当に吸血族になってから格段に移動距離が増した。
獣族の王城ナハルニヤが見えてきた。
門番に国書の件を伝える。
すると謁見の間に通された。
「お前が元人間の勇者ユーリルか」
「はい」
「我は狐人のサニア」
(女王だ)
「何か重要な事情かな? 吸血国の財政は?」
「はっ。天候不順で穀物価格が増大しており……」
「ふっ、竜族も同じ事言っておったわ」
(竜族が来ていた!! しかも同じ理由で……しかも同じ嘘……)
「では賃借対照表も要求する」
(国の財務が丸裸になる!)
「返せない場合、そなたの国土の一部を担保に取る」
「えっ?」
「当然じゃろう?担保も無しに莫大な資金を貸すバカがどこにおる?」
「……」
「年利は二.八パーセントじゃ」
(くっ……ギリギリか……)
「分かりました。それでお願いします」
屈辱的な内容であった。
「早期返済は可能ですよね」
「もちろんじゃ」
(敵に頭を下げるとはこういうことなのか……)
「ではこちらの紙にサインを……」
「返済方法は空輸でいいんだな」
「その通り」
にや~と笑う女王がいた。
◆◆◆◆
「これで二国にファイナンス出来ましたな」
「うふふ、何も技術が無い、売り物が無いと嘆いていたが売る物はあったぞ。金そのものじゃ。世界を制する者は軍事力でも技術力でもない。金なのよ」
「おもしろいことになって来ましたな」
重鎮は敵国の中身がタダで見れることにうきうきの状態だ。
「敵国の財務を知れば弱点も見つかると言うもの」