第五話
吸血族の宮廷で声を荒げる者が居た。
「我が国の国防に被害を与えた者でもか? 引き渡しを要求する」
竜族の使者が猛抗議して来た。
「ならぬ」
サーミラ四天王はきっぱりと断った。
「は?」
「教えることは出来ぬ。断る!」
「そうでございますか。では……最悪の結果になっても知らぬぞ」
「お引き取り下さい」
サーミラの声を聴くと笑みを浮かべた竜族の使者はクローフィー城から去っていった。
◆◆◆◆
竜の王城で王子が使者に聞いた。
「奴らは?」
「予想通り引き渡し拒否です」
「副官、戦争の用意は出来てるな」
「はい。この大量の爆弾を空から落とせば奴らは降伏するでしょう」
「副官、ヴリトラ村に居る人間の鎧は?」
「竜の鱗で作った竜鱗の鎧、着々と完成です」
そう、竜族は人間に鎧を与えることまで出来るのだ。
「鱗はがしは痛いのだからな。竜族の鱗を癒す漢方薬はちゃんと配ってるな?」
「はい、ぬかりありません」
皇子の皮膚も副官の皮膚も傷んでいた。
◆◆◆◆
ユーリルはリハビリを続けながら王城と病院を往復する毎日だった。
王城に帰るとまだまだ視線が突き刺さる。
この国の重鎮を討ったのだからそりゃそうなのだけど……。
今日もカラと一緒に食事する。いつのまにか何気ない会話が日常となった。
やっとユーリルは翼を己の体内に格納して寝ることが出来た。
翼が邪魔になっていたのでちょっと寝るのが大変だった。
(ああ~快適な睡眠だ……)