第三話
宿のベランダに出ると半月が隠れた。世は漆黒となった。
「さて……いきます」
カラが言うと二人は翼を出した。
漆黒の夜を二人は漂う。
「やっぱりあったね」
カラが指さすとそれは巨大な武器庫であった……。
「儲けたお金を国民に還元すればいいのにねえ」
ユーリルは呆れた。
「さ、場所も特定したし急いで吸血族の領域にまで戻るよ」
その時、地上から光が照らされる!
「きゃっ! 何この光!?」
突然漆黒の夜に照らされる光……。
それは魔道物質で動かすサーチライトだった。人間の姿に近い竜族が二人の姿を捉える。
「不審者が居たぞ~」
「であえ~であえ~」
「逃げるぞ!!」
ユーリルの呼びかけと同時に猛スピードで逃げ出す。
が、炎が飛んできた!
「竜だ!!」
「小さな蠅、いや吸血族とはな。喰らっておくぞ」
「向こうのスピードの方が速い!!」
ユーリルは高速で移動したことがない。背中が痛いがそんなこと言ってる場合ではない。
「せやっ!」
ユーリルの呼び声と同時に二人は急降下した。
「早く!!」
「あいつら夜は目が利きにくいんだから、地上すれすれで飛ぶよ。林に入ればこちらのもの」
「OK!!」
指示の通り地上すれすれで飛ぶ。
牧場横の林に入った。
竜は炎を明かり替わりにして吐いている。
が、辺りは森の中……。漆黒に漆黒を塗り固めたようなところ。ここなら竜の目は利かないはず。ここなら大丈夫と思いきや……。
なんと竜は森の上で炎を吐き始めた! 森の中で逃げている二人の姿が見えてしまった!!
「見つけたぞ!!」
「まずい!! 森から出ろ!」
ユーリルは間一髪で竜の炎を躱した。
二人は森を急いで抜け再び牧場に出る。
こうして二人は人間の村であるヴリトラ村に戻ってきた。しかしここはまだ竜族の占領地。
「吸血族が村に逃げ込んだぞ~ 領土侵犯だ!」
竜が門番に知らせる。すると門番がぼきばき音を鳴らしながら青竜に化けた。
「二匹で追ってくる!!」
ユーリルは悲痛な声を上げる。
「もうちょっとで王都だよ」
カラも限界に近い。
「ところで明確に国境線なんてないんだよな!」
「ないよ!」
カラが大声で答えた。
「だったら警告のために花火でも打ち上げるか」
そう言うと勇者は魔法で空に炎を放った
「何してるの!? 敵に位置を伝えてるようなもんでしょう?」
「敵だけじゃないぜ。味方にもな」
なんと吸血族の衛兵が向かってきた。
「ちっ! ブルート国境だ。引き上げるぞ」
「大丈夫ですか! ユーリル! カラ!」
「もうだめだ。翼が……痛い……!」
そう言うと勇者ユーリルはどうにか着地して倒れた。
「勇者!!」
ユーリルは痛い、痛いと言いながら地面を転がっている。