第二話
荷物馬車内で小声で話す二人。そよ風が気持ちいい。
「いざと言うときは飛び立って逃げるからね」
「うん、カラ」
「もっとも顔知られたらこの作戦は失敗よ」
顔隠そうかなあとユーリルは思った。
「適当に王都が近くなったら馬車から降りるよ」
(しっかしベタすぎる潜入方法だよな。荷物馬車に潜入とか)
「さってと……降りるよ! 荷物も取って……と」
馬車から降りるとそこは平原だった。
「これからは漢方の納入に来ましたって誤魔化すの。しかも遅れた分の納品ですってね」
手には荷物。
「なんか手際いいね。人間の王都でも同じ方法でやった?」
「ふふっ……」
「目が笑ってないよ」
カラ、こりゃ常習犯だな。
「でも今度は気を付けてね。サングイス製薬の営業所なんて竜族の国には無いんだからね」
「うん」
「あっ、竜が空飛んでる」
「こうして見ると脅威だよなあ」
緑竜であった。強力な鍵爪、紅蓮の炎。よくこんな生き物と一緒に暮らせるものだ…。
王都に着いた。いともたやすく入れた。
薬局店に漢方薬を届ける。
「さて、夜も近いから宿に泊まろうか」
◆◆◆◆
ドアを叩く音がする。
「食事は済んだ? さ、着替えて。はい、穴の開いた服」
「ということは……」
「そう、本性現すの」
「まさか」
「そう、ここに来た本当の理由は深夜の偵察」




