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吸血の勇者ユーリル  作者: らんた
第二章 竜族との戦い
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第一話

 もう晴れ晴れとした青空の中で吸血鬼が旅する光景にも慣れた。吸血鬼なんてみんな石棺内で昼間は寝てるのかと思っていた人間は……戦う前から既に負けていたんだ。ユーリルはそう思った。そして今度行くのは建前上人間とは中立条約を結んでる竜族の国である。でもさ、人間ってよくあんな狂暴な竜と中立条約結べたよな。なんでだ? そっとカラに聞いてみよう。 


 「竜族って本性現すと巨大なドラゴンだよね?」


 「そうよ、ユーリル」


 「そんなのが襲ってきたら吸血鬼なんてイチコロじゃね?」


 「ふ……ふふっ」


 カラは思わず侮蔑の意味も含めて笑った。


 「こちらは夜でも目が利くのよ」


 「あっ、そっか」


 「夜襲が出来るって強いのよ。万が一本性現しても翼を引き裂けばいい。こちらも空飛べるんだし。目つぶしもできるわ」


「へえ」


(でも「翼を引き裂けばいい」っていうのは吸血族にとっても……だよな?)


 「ほら、ヴリトラ村が見えてきた。『ヴリトラ』っていうのは神話に出てくる竜で『障害』って意味よ。干ばつを起こす竜ね。今のこの牧草だらけの姿からは想像できないけど」


 「そうなんだ」


 カーサ村のさらに北にあるヴリトラ村にやってきた。見た目は人間と同じ村だ。もっとも竜族の占領地と言うだけで実際は人間が暮らすのだから当たり前なのだが。


 村の北側に野菜畑が見える。


 「あれが漢方用の畑ね。この村、けっこう豊かよ。ちゃんと石畳があって上下水道完備、電気も完備で魔道物質による発電所まであるわ」


 言われてみれば。


「軍隊や警察は竜族なのね」


 そう、角は竜族のそれだ。人間に擬態してるがバレバレである。


 なんと「クラス製薬本社」まであった。


 「漢方さまさまだね。漢方工場まである。もう完全に吸血族の手法まねてるね」


 法人税収入でうはうはらしい。


 「運搬手段は吸血族と同じ馬車だね」


 まあ竜が空輸する時もあるみたいだが。


 「じゃ、ユーリル。馬車にもぐりこんで竜族の国に潜入しようか。いざとなったら闇霧の術でごまかして逃げるわ」


こうして二人は竜族の王都ドラグニアを目指した。

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