第七話
「ねえ、そういえばこの王城、俺が昨日物色してたんだが」
(物色……。もう言葉からして勇者って存在は反社ね)
「物盗りされるなんてセキュリティーがばがば」
「あっ、それもそうね」
「ってことは二階の謁見室は」
サマエルは居なかった。予想通りだった。というかユーリルがボロボロだったあの時に最も攻めるチャンスだったではないか。
「居ない、居ないぞ」
様々な小部屋を探しても見つからない。三階も調べたらまるでない。二階の謁見室に魔法陣がある。だが、起動しない!! カラが魔力を送ったが反応しない。
玄関に戻って来た。
「ねえ、あの小さな部屋は何かしら?」
「庭にあるな」
ただの園芸用具が収まってる倉庫だった。
(ん、ボタン?)
ユーリルが押すとなんとしたから階段が!! 随分と長い階段だ。
なんと階段を降りると床が無い!!
宙に浮てる感じだ。
「浮いてる……ぞ」
「信じられないわ」
「ようこそ。真の謁見室へ。そしてここがお前らの墓場だ」
玉座に居たのは……サマエル! 横には魔法陣が!
「我が名はサマエル。ここまで来たことに素直に褒めよう。どうだ? 我の片腕となれ。ともに世界の覇者となろう」
「断るわ!」
カラは即答だ。いい心がけだ。
「残念だな。敗者と組む気はねえんだ」
すると呪文を唱えると地面から湧き出た闇の煙を吸いどんどん大きくなっていく!そして蝙蝠の翼を出し体が鱗に覆われていく。
「我はマーズランドの守護竜、サマエル!」
そう言うといきなり高熱のガスに炎と連続で攻撃した。
二人は瞬時に攻撃を躱した。しかしそこには巨大な尾が!
「ぐはっ!」
ユーリルは巨大な尾で壁に打ちつけられる。
「がはっ!」
ユカラは巨大な尾でユーリルとは反対側壁に打ちつけられた。
さらに二人はサマエルの得意げな呼吸とともにまともに高圧ガスを食らった。二人はエビのように飛び跳ねた。
ユーリルはくるっと飛ぶ。救急用の小瓶に入ってる血を飲んでどうにか攻撃を耐えた。大丈夫だった。今度は鎧にヒビは入らなかった。
(また高圧のガス!)
このガスや炎を出す一瞬の隙を見逃さなかった。
瞬速の速さで懐に着てわき腹を突く! 剣が折れた!!
(まただ、あの時と同じ!! 俺はやっぱ負けるのか!)
勝ち誇る竜の咆哮が響き渡る。しかし、あの時とは様相が一つ違ってた。友が居る事だった。
「カラ! 今だ!!」
そういうとカラは跳躍して竜の首を刎ねた!
なんと竜の首を刎ねるとどんどんサマエルの体が小さくなり元の妖魔族の姿に戻る。首は別のところに転がってるが。
すると床が生じた。実は床を見え無くしてるだけなのだ。
勝った。
「勝った! 勝ったぞ!!」
「ユーリル!!」
二人は思わず抱きしめた。
本当に妖魔がいないのか、ほかに敵は居ないのか確かめる。確かにいない。魔法陣の場所までやって来た。もう敵は居ない。
「もうこの星に来ることはないだろうな」
「ええ」
カラは魔法陣に向かって居場所を伝える。するとサーミラがやって来た。
「本当に二人ともよくやってくれた。まさに勇者だよ」
転移するとそこはマザーランドの塔だった。
「帰って来たな! 俺の星に!」
「私、生きてこの星に帰って来たのね」
「ユーリル、自国に帰る前にクローフィー城に来てほしい。国際会議があるんだ」
「分かった」
(俺の旅もいよいよ終わりか)
三人は安堵の笑みを浮かべていた。
<第九章 終>




