第七話
「来たよ。ユーリル」
サラが嬉しそうだ。
「何これ」
「クリルタイの招待状」
いよいよ、国際会議が開かれるのだ。議題は人間族の参加。そして妖魔族の族滅。そしてマザーランドの今後についてだ。国際国家会議はブルート王国で開かれる。
本来『クリルタイ』とは魔族の族長が集まって大魔王を決める部族会議の事だ。でも今度は違う。一つ一つの国が自主・自立・独立という原則なのだ。もっとも国際援助もするし、場合によっては連合軍も結成するのだが。
そこに「ユーリル港湾都市」の名前がある。
「俺、国の代表なんだな」
「何言ってるの。国王何だから当たり前でしょ」
(ゼーマ国王ってやっぱ頭いいよな。自分で魔王になる権力欲持ってもいいのに。でも大魔王になるってことは新たな勇者に滅ぼされるって事を理解してるんだな)
(俺みたいなへっぽこ勇者じゃ、そりゃ殺されるよな……)
「何に神妙な顔になってるの」
「俺やっぱ緊張する」
「たぶんそれはほかの国の国王も一緒よ」
「そりゃそうだけどさ」
「それと拒否権持ってるから。ブルート王国だけ」
「へえ」
「超大国だからね。だから実質はブルート王国の王が大魔王みたいなもんよ」
(ということは「大魔王」という称号は捨てたけど実質は大魔王。やっぱゼーマ王は賢いぜ!)
「そうだよね」
「でも前代のような魔王にはならない。他国を蹂躙しない。その理想を作ったのはほかでもないユーリルなのよ」
「……」
「だから国際国家会議は重要だよ」
「分かった。出るよ。それとサラ、実は何だが……」
それは指輪だった。
「ダメと言ってももちろん構わない。それで君の地位が不利になることもない。この戦争が終わったら、でいい。僕の気持ち受け止めてくれる?」
(あの赤い顔で僕は察した)
「……」
(いきなりはだめだったかなあ)
「ありがとう」
「泣くなよ」
「ほら、ユーリル、国民が……」
ユーリルの出立に国民は総出で出迎えて喜んでくれた。
◇◆◇◆
国際会議はクローフィー城の外宮で行われる。そこに吸血族ゼーマ王、竜族フールイ王、獣人族クフ王、海魔族スレジア六世、炎魔族ゴレ王、水魔族ヴァダラム王、氷魔族サヴァ王、妖精族ラゥーラ王の各王、そしてユーリルが集った。
(ここに人間の王がいずれ座る)
人間族の王は……自分を勇者として送り出した王は空席だった。
緊急招集以外、年一回となる。ブルート国の拒否権も承認された。
そして自分の国の事。鋳造能力が無いので炎魔族が技術援助するのだ。
(ありがたい)
為替レートの固定を確認し、国際会議は淡々と終わってしまった。
これからは各国で友好を深める場合もあれば早急に帰国する王もいる。
ユーリルはブルート国のゼーマ王に謁見する。
そう、押収した図書など聞きたいことが山ほどあるのだ。
跪かず対等の立場での会見なんて初めてだ。なんと王宮のテーブルに座ったのだ。
図書はマーズランドのことが結構詳細に書かれていた。
そして直々に言い渡される。妖精族のクゥーラと妖魔族の王サマエル討伐の依頼である。
勿論ユーリルは承諾する。そう、いよいよユーリルは直接マーズランドに攻め込むのだ。
ユーリルはあまりの重責に思わず教会に駆け込んだ。
ミラがそこにはいた。
ユーリルは二人で聖歌を歌い、祈りを捧げた。
ユーリルは元人間族の神父に懺悔をする。自分は闇に蠢く者に落ちた事と、そんな闇が闇である魔王を討つということの矛盾に。神父はそれを聴くと泣きながら罪は無いと言ったのだった。
ユーリルを送り出すとミラはカラから来た手紙を送り返す。
<第八章 終>
【王一覧】
人間族:ベルナルド
吸血族:ゼーマ
竜族:フールイ
獣族:クフ
炎魔族:ゴレ
海魔族:スレジア六世
水魔族:ヴァダラム
氷魔族:サヴァ
妖精族:ラゥーラ
ユーリル港湾都市:ユーリル




