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第7話 運がいいのか悪いのか

 今、当初の目的地のリリド街へ通称『神殿の騎士ギルド』が用意した馬車に乗って向かっている。この馬車のところまでリーダーに抱きかかえられ、それこそ馬車と同じぐらいの速度で谷を登り森を抜けてきた。その為、エストキラはヘロヘロだ。


 ”同じ人間だと思えない。なんなんだ”


 「大丈夫? これから大事な話をするけど」


 自分と同じ顔がエストキラの顔を覗き込む。


 「あの、なんでまだ僕のままなの?」


 悪い奴らを捕まえる為にエストキラに変装をしたのはわかったが、そのままの姿で隣に座っていた。


 「うん? うーんと、まだ変装を解けないから?」

 「………」


 ”それってスキルか道具かわからないけど、時間が経過しないと解除されないからなのか、それとも解除していいという命令が下されてないから?”


 エストキラは、もしかして自分にも正体を隠しているのではないかと思った。他の二人も変装しているのかもしれない。


 「時間がない。話をしてもいいか?」

 「あ、はい」


 エストキラの目の前に座るリーダーに問いかけられ、なぜかビシッと背筋を伸ばす。


 「君には、経緯を話す。その上でこれからの事を決めてほしい」


 ”これからの事?”


 ごくりと唾を飲み込み、エストキラは頷いた。


 「私のギルドは、通称『神殿の騎士』と言われるギルドだ。だがそれが、どのギルドかは世間は知らない。知っているのは、神殿の上層部ぐらいだろう」


 ”なんかこの人たちもやばい人なんじゃ……これこのまま話を聞いて大丈夫かな?”


 そう思ったところで、エストキラが聞かないと言う選択肢はない。


 神殿は大きな組織で色んな国に支部がある。そんな巨大組織だからこそ、腐敗した者も存在し、彼らはその者達を炙り出すのを目的に作られたギルドだった。

 今回、盗賊ギルドと比喩される害あるギルドと繋がっている者を捕まえる為に、作戦が実行されたのだ。目を付けた者に嘘の情報を流し、誘いに乗って来るのを待った。それがエストキラに持たせた秘密文書だ。

 情報が本物だと思わせる為、尾行はつけなかった。また、前日に決定した事により準備期間を与えない作戦だ。


 作戦通り馬車に乗せる為、それとなくリナにエストキラの事を伝え乗せる事に成功する。後は、動き出すのを待つだけだった。

 本来の作戦ならエストキラから文書を奪わせ、黒幕に持っていけば大成功だったのだが、彼らはモンスターを呼び出したのだ――。


  「あれ、モンスターだわ!」


 そう聞こえた後に馬車の目の前にモンスターが現れた! 御者は慌てて馬車を止める。彼が慌てて運転席から降りると、三人も降りてきた。そして、女がリュックを奪うのに成功する。


 「そのまま逃げ――」


 助けようとした御者が男に切られ、ピクリとも動かない。

 エストキラは、御者にそのまま逃げろと言われたが、リュックを奪い返し森へと逃げる。それを女が追っていき、モンスターを男が処分した。


 「まったく、図体がでかくて弱いモンスターにしておいてよかったぜ」


 男はそう呟くと、ちらっと倒れた御者を見るも二人を追って森へ入っていく。その姿が見えなくなると、むくっと御者が起き上がった。


 「まさかモンスターではなく、あいつに切られるとはな。俺じゃなかったら本当に死んでいたぜ」


 立ち上がりぶつぶつと言いながら、ぱんぱんと服の汚れを落とす。

 彼のスキル『死んだふり』が発動して助かったのだ。全魔力を消費し、死を免れる一見凄そうに見えるスキルだが、発動した瞬間に昏倒するので使いどころを間違うと本当に死んでしまうスキルだった。


 「リーダー。作戦失敗しました。少年が持って逃げちゃいました」

 『……何!?』

 「ついでにモンスター召喚したけど、自分で処分していきましたよ。俺は男に切られたんですけどね。後、宜しく」

 『本当に召喚できる者がいたようだな。わかったご苦労』


 魔導通信機で連絡終了。高価だが、ギルドには一つぐらいはある魔道具だ。


 「さて、馬車は無事だからお迎えにあがりますか」


 御者が、モンスターを残しその場を後にする。

 その後、連絡を受けた神殿の騎士ギルドの三人が、エストキラを先に発見した。


 「凄いわ。生きてる」

 「だったら俺のスキルで変身できるね。ヘンゲ」


 シィが、倒れたエストキラに触れると赤い髪と瞳は、紫色の髪と銀の瞳に変わる。彼のスキル『変化(へんげ)』だ。生きている人物に触れながらヘンゲと言えば、その者になれる。ただし、身長は変わらない。


 「ちゃーんと横になって待ってろよ」


 エストキラを抱きかかえたリーダーが言う。


 「はぁ。早く来ないと寝ちゃいそうだよ」

 「この子、魔力を枯渇させただけみたいね」

 「だったらじきに目を覚ますな。彼は中々運がいい」


 エストキラを見つめリーダーはそう呟くのだった――。

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