選挙開始
そして、選挙当日。
俺の前にその雑務に立候補したやつが演説を行った。
「みなさんこんにちは!僕の名前は秀仁康です。」
あいつはたしか俺と同じクラスの爽やかイケメン。園実はただただ目立ちたい残念人間。そしてクズ。そのクズっぷりは想像に任せるが。
そしてこうして俺を潰しておけば、あまり成績の良くなかった彼は先公たちを自分の陣営に引き込みたいと言ったところか。
ま、その「自分は皆さんのためにやっています」みたいな演説は、結果的には都合よく解釈されるか、顔で判断されてしまうだろう。俺があれと同じやり方をしても負けるだろう。
まぁ、負けて面倒が減るのはいいが、俺の数少ない友人に火の粉がかかるのも面倒なことだし、やるしかないのだが。
さあて、彼の演説も終わったことだし、俺の番だ。
すれ違いざまに勝ち誇ったような笑みをされるが、俺はそれを見下すように嘲笑する。
「それでは、令和3年度生徒会雑務立候補者、1年D組橋崎灯守くん、お願いします」
「・・・」
「え、ちょ!」
俺はそれに対し、返事をするでもうなずくでもなく壇上へと歩みをすすめる。
「あ、ごめんなさいね、マニュアルないことして」
「あ、はぁ・・・?」
とりあえず、あまりに冷たい対応になったことを司会に謝罪ししつつ、俺のいわゆる機構に対しざわつく生徒。そして慌てる教師陣。
20秒ほどだろうか落ち着くまで待ち、俺は口を開く。
「さて、生徒の皆さんに聞きましょう、生徒会の活動に興味がないという方、お手を上げてください」
「「「・・・」」」
「・・・まぁ、ここで堂々と手を挙げられる人間がいたら、それこそ生徒会に立候補しているでしょう。私はむしろ興味は今も微塵もないです」
「かんたんに言えば、・・・あぁ。先生方の配られたカンペでは一人称は私とするようにとなっていますが、俺は『俺』とします。・・・俺は立候補者ではないのです」
「本来ならば、立候補者の康が現れた時点で私の内定は途切れよう済みだったはず。それがなし崩し的にこうして私はここに立っています」
「そして先程、面白みのない綺麗事をつらつらと並べたあの演説で、いくらに人が寝ていたか。
私が見た限り、教師を含めてざっと200人。全校生徒、三年生は除かせていただきます。が400人強、約半分です。
そして、今見ている限り、全員が目を覚まして俺の演説を聞いている。
今季の会長がいかなる人柄かもなんにも知りませんが、これを容認してしまっていたということは、残念と言わざるを得ない。
正直、最初選挙となったとき、辞退しようとしましたが。「この時期に辞退は出来ない」と言われました。
が私の記憶が正しければ、去年の1年時に生徒会に所属していた副会長の方は、今年それもついさっき辞退されていた。」
「さて、そこで冷や汗かいているジジイ。俺になにか言うことがあるんじゃねぇのか」
さて、恐怖の選挙の始まりだ。