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異世界の英雄を育てた私の晩ごはん  作者: 海野三矢子
一章 英雄、少年時代
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 翌朝、私はいつもよりずっと早い時間に起きた。

 もちろん試験を頑張るルーク君に朝食を作るためだ。材料は昨夜ルーク君と別れた後に夜遅くまでやっているスーパーに買い出しに行った。

 朝はどれくらい食べるのか分からなかったので、夜ご飯と同じくらいの感覚で準備することにした。多かったら私の朝ご飯と昼ご飯にすれば良いし。


 五目炊き込みご飯と厚焼き玉子にソーセージ。小松菜と厚揚げの煮浸し。あと朝だったが唐揚げも少し揚げてみた。以前晩ごはんに手作りの唐揚げを出したのだがルーク君はスーパーの惣菜で買った唐揚げよりも手作りの唐揚げが気に入ったらしく、いつも以上にご飯の進みが早かったことを思い出し、せっかくだからと唐揚げも一品追加したのだ。

 後は大根の味噌汁とデザートにオレンジも切って準備してある。


 こんこんとノックする音が聞こえた時にはもう机の上にほとんど料理を並べ終わっており、最後に温かい味噌汁と五目炊き込みご飯を持って来て穴を開いた。


「おはようございます」

「おはよう、ルーク君。何か朝に会うの新鮮だね」

「会うのはいつも夜ですからね」


 お互い何となく恥ずかしさがある。


「あ、寒くない? 毛布だそうか?」

「もう日が昇って暖かいから大丈夫です」


 ルーク君達の世界には季節という概念がない。

 日本では一年で春夏秋冬と季節が巡るが、ルーク君の世界では一日で一季節が過ぎていくようなものらしい。夜になると時には雪が降り、凍えるくらい寒くなる。月が沈んで日が昇れば寒さが和らぎ花が咲く。日中になれば半袖で過ごせる位に暑くなるのだが、日が暮れる頃には徐々に涼しくなりまた夜がやってくる。私だったら気候の変化であっという間に体調を崩してしまいそうだが、ルーク君の世界ではそれが普通なのだ。同じようにみえてもルーク君達の身体はそういった環境に適応している身体なのかもしれない。

 

 それにしても騎士学校の制服なのかな? ルーク君が制服を着ているのを初めて見たのだが、とてもよく似合っていた。


「わー、ルーク君! 制服似合うね。かっこいい」


 濃紺の制服は日本でいう学ランに似ている。学ランというより軍服っぽいのかな。制服をきっちり着て姿勢正しく座るルーク君の前に朝食が乗ったテーブルを運んだ。


「ゆいさんもかわいい格好をしてますね」


 身だしなみを整えたルーク君とは対照的で、私はパジャマの上にエプロンをつけ寝癖を誤魔化すように髪を一つに結んでいる。

 かわいい格好なんていえないと自覚しているので、見逃してと顔を覆って小さく悲鳴をあげる。早起きはあまり得意じゃないのだ。晩ごはんに会う時は私だって人様の前に出ても大丈夫なくらいには身だしなみを整えているので、今の姿は色々手を抜き過ぎているという自覚はある。


 そんな私を見てまたかわいいと笑うルーク君。やめてくれ……笑っているルーク君の方がよっぽどかわいいのですけど。


「もういいからっ! はい、朝食です。食べて下さい」

「わぁー、美味しそうです。あ、唐揚げもあるんですか?」

「そう。前に作った時にルーク君がすごい喜んで食べてくれたでしょ? 今日の試験頑張れるように朝から気合い入れて作ってみました。ごはんもね、五目炊き込みご飯っていって味のついたご飯なんだよね」

「嬉しいです! ありがとうございます」


 ルーク君は朝から素晴らしい食欲だった。

 多いかななんて余計な心配をしていたみたい。ご飯を大盛りで三杯もおかわりし、おかずが足りなくなったのでソーセージを追加で焼いた。ルーク君はオレンジまでしっかり完食し、時間ギリギリまで食事を楽しんでから「ごちそうさまでした」と慌ただしく部屋から飛び出して騎士学校に向かって行ってしまう。

 「試験頑張ってね。いってらっしゃい」とお見送りをするとルーク君は顔を綻ばせ、いってきますと少し恥ずかしそうにしていた。手を振ってまた夜にと約束をしてから私は自分の部屋で一眠りすることにする。

 朝が早かったから眠くてしょうがない。朝食はルーク君が食べる姿を見ているだけでお腹いっぱいになってしまったから食べなくていいや。

 夜ご飯の材料は午後に買いに行こう。試験を頑張ったルーク君に美味しい食事を食べさせてあげたい。食器を洗うのもちょっと後回しにして午後に洗うことにしよう。

 台所のシンクに食器を置き、エプロンを外してベッドに横になる。


 時間を気にせず二度寝が出来るとは、何て贅沢な生活なのかしら。

 仕事を辞めてから睡眠時間が長くなった。そう思って瞳を閉じた時にスマホから着信を知らせる音楽が鳴りだした。ずっと充電器に繋ぎっぱなしにしていたスマホを取るために、寝転んだままコードを引っ張ってスマホを自分の近くに引き寄せる。


「こんな朝早い時間に誰だろう」


 スマホの画面に【至寿子】と表示されているのを見て、自然と笑みが浮かぶ。至寿子は私の数少ない友人で、小学校に上がる前からの幼馴染みの一人だ。


「しーちゃん? 久しぶり。どうしたの」

「久しぶりね、ゆい」


 至寿子の柔らかい声を聞くと学生の頃に戻った気分になる。

 タイプは全然違う私達だったが、唯一親友と呼べる相手でこうしてたまに連絡を取り合っている。至寿子のお祖父ちゃんがフランス人で、それも関係しているのか幼い頃から人目を引く綺麗な子供だった。

 仲良くなったきっかけは覚えていないが、小学生になると毎日のように一緒に遊び成長してきた。そんな至寿子も今や二児の母親だ。フランス人の素敵な旦那さんとフランスで仲睦まじく暮らしている。年に数回しか会えないが、今でも至寿子は特別な友人だ。


「今ね日本に帰ってきてるのよ。明後日までこっちに居るんだけど少しでもいいから会えないかしら? 時間だったらゆいに合わせる。仕事は相変わらず大変なんでしょ?」

「……実はね、仕事辞めたの。今働いてないからいつでも会えるよ」

「えっ、そうなの!? それじゃあ今日ランチしない? 久しぶりにゆいとゆっくり話がしたいわ」

「私もしーちゃんに会いたい」

「今移動中だからランチの時間と場所は後で連絡するわ。それじゃあ、また後で」

「分かった。連絡待ってるね」


 久しぶりに至寿子に会える。

 とても嬉しい予定が入って眠れそうにない。そもそもランチなら今から寝ている時間なんてなさそうだ。眠るのを止めて至寿子からの連絡を待つことにした。

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