表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/145

95話 足取りを追う

 足跡は確かに続いている。店先から通りに向かって。だが表通りの足跡を追うのは大変で、地面を舐め回すように見て、同じ足の大きさ、靴の形をなんとか見極めて、足取りを追う。

「お主も大変じゃのぉ…わしはもう腰が痛くなってきたわい」

「うーん。僕も下を見過ぎて頭がクラクラしてきちゃったよ…」

 二人は結構飲んでたからな…老人を夜中に連れ回すのは忍びない。

「もう休んでもいいんだぞ」

「お主も辛かろうて、わしらも同じ真似をしておるのじゃよ」

 レームはからから笑っている。

「アルヴィ殿、今日は本当に申し訳ない…」

 ボルドはとても申し訳なさそうな表情を見せる。

「赤の他人だったらやる気が出ないかもしれんが、今回ばかりはな…」

 正直、あの時、ああすればよかったんじゃないか?という考えが、今も頭をぐるぐるしている。それが無駄なことも知っている。戦場に出ていた時からずっとそうだった。後悔しても遅い。死んだ仲間は帰ってこない。なら今できることをやっておきたい。あの二人を殺した奴を見つけて、そいつに罪を償わせる。

「貴族の方はそっちでなんとかしろよ?俺は話す理由が全く無いからな」

「ええ。勅命さえ出れば、必ず。あとは賄賂を払わないことを見張るのみです」

「賄賂ね…」

「余程没落しない限り、貴族は牢獄に入らないものです。それに小汚いことをしている貴族は必ず、見逃してもらうための金を溜めていますからな」

「今は優秀な亜人やらも議会に参加しておるから。その皺寄せで無能じゃが名声だけある貴族は立場を追われておる。革命派な皇帝陛下のおかげじゃが、結局金は持っておるからのぉ。ボルド、お主も騎士の家系じゃろう?本当なら中央で働けたろうに、こんな街で衛兵をやっておるとは物好きじゃの」

「ハハッ。私も衛兵になることに大いに反対されました。騎士というのも結局は貴族と変わりませんからな。そういうレーム殿こそ、まさに英雄ではありませんか。今からでも遅くないのでは?」

「わしは英雄のおまけじゃよ。それにもう老いさらばえた。後世どもに威張りながら教えてやるのがのがちょうどいいわい」

 そんなことを言っているが、レーム目当てで学園に入ってる生徒も多い。レームの授業はいつも満員だしな。

「華々しい世界かぁー。僕にはわからない話だよ。アルヴィ君もそうだよね?」

「ああ。華々しい場所なんてこの世界に来てから初めて体験した」

「お主、その格好で言うと説得力があるのぉ」

「仕方ないだろ…」

 好きで地面に這いつくばってるわけじゃない…


「こっちに曲がった」 

 時間はかかったが、通りから外れた路地に向かったことがわかった。その先には地下に続く階段がある。

 扉は固く閉ざされている。教会のすぐそばだ。

「ここで立ち止まってる。この扉はどこに続いてる?」

「この扉は地下墓への道です。教会の近く、やはり…」

「やっぱりあの神父か」

 扉の向こうには何があるんだろうか。

「開けられるのか?」

「鍵が…な、何を?」

 レームが鍵を焼き切る。

「黙っておれば誰もわからんわい。先にゆくぞ、何か嫌な気がしておる」

 真っ暗な階段を下る。ひんやりとした外気に鳥肌が立つ。奥から。扉に向けて風が通り抜ける。その音が気味悪い。

 石の階段には、靴の裏に着いた土が残っている。犯人はここを歩いてる。

 レームが先走り、階段を早足で降る。

「おお!?」

「どうした?」

 追いかけて階段を降る。

「これは…」

 黒く塗られた骨で組み立てられた祭壇、そこには蜂の巣と人の手が供えられている。燭台の蝋燭は新しく変えられていることから、今も管理されている。まあこんなところにこれがあるということは、どういう事かも明らかだろう。

 教会下にある墓地は無縁墓地だ。わざわざ訪れる人もいない。昔から祭壇が有ってもおかしくは無いが、新しく作られたようにも見える。

「悪魔崇拝者だな」

「こんな物を作るなんて…」

「この骨は人の骨か?」

「うん、そう見えるね。ここはお墓だから、そこから取ったんじゃ無いかな?酷いことするなぁ」

「神に仕える者がこれを…」

 ボルドは動揺している。

「早いこと、詰め所に戻るぞ。神父は捕まっておるんじゃろ?これは証拠になるぞ」

「え、ええ。そうですね…」

 レームとボルドが走って階段を登っていく。

「アルヴィ君も」

「この巣箱はなんだ?」

 壁に置かれていた木箱を開ける。中には蜂の巣が入っている。でも蜂はいないようだ。蜂蜜が残っている。

 捧げ物か?

「本当だ。うーん?わからないけど、直接聞けばいいじゃ無いか!早く!」

 マルシアが腕を引く。

「わかった」

 やっぱりあの神父か…嘘をつくのが上手いな、平気な顔をしていたから、俺は違うと思ってたが、ボルドの目は確かだった。事の真相を知っているのはあいつだ。逃さなくてよかった。


「中にある蜂の巣箱、あの出所は確かめた方がいいと思う。それと、教会に繋がってるかどうかも」

 入り口で待っていた衛兵に気がかりな事を伝える。

「了解しました。ここはよく調べておきます」

「さあ、行くよ!」

 これは証拠になる。足跡の写真も撮っておいた。神父の足形と一致していれば黒だ。 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ