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93話 事件の知らせ

 久しぶりの夕食は楽しく終えることができた。双子たちは、レームとレイレイに感心されるほどの才能を秘めているようで、学園でも余裕でやっていけるとのこと。ライラーも店番をやることになったのと、店で鳥を育てるらしい。何に使うかはよく知らないが…レイレイが喜んでいたのを見るに、育てられた鳥は薬の材料になりそうな気がする…

 今レームとマルシアはまだ酒を飲んでいるが、女性陣は風呂屋に行ってしまった。ついていこうとも思ったが、二人が深酒をしないように見張っておかないと、家に帰らせるのが面倒になる。

「伯爵よ。酒を持ってきてくださらんか?」

「よっ。伯爵!」

 二人に自由伯爵の位をもらった話をしてから、ずっとこの調子で煽てられてる。これじゃあ、面目も立たない。

「わかった、わかった…」

 頼まれた酒樽を机に置くと、扉を叩く音がする。

「なんじゃ?もう帰ってきおったのか?」

「なんだ?…」

 武装した衛兵たちが扉の前に並んでいる。明らかに何かが起きたようだ。

「アルヴィ・アーセナル。あなたに聞きたいことがある。着いてきてもらえるか?」

「お主何をしたんじゃ?」

 レームは食卓から、からかうように言っていたが、衛兵達の姿を見た時に只事ではないと察したようだ。

「何が起きてるかわからない」

 身に覚えがないが、今日の件で呼ばれていたとしても、武装してこられると怖い。

「話は向こうで。武装もお願いします」

 冷たい表情の衛兵に武装を催促される。

「ん?…ああ、わかった」

 どういう意味かわからなかったが、どうやら急を要することが明らかだ。

 一応の武装を行う。いつもと勝手がちがうズボンを履いてるせいで、ホルスターが付けにくい。装備にノロノロしていたら、早くしろと衛兵が催促してくる。

「わしも行って良いかの?」

「いいえ。それには及びませんレーム様」

「大方、最近の事件の話であろう?わしだって若い者らに負けておらぬぞ」

「結構です。あなたに手間をかかせるほどの事件ではありません」

「ぬぅ…お主、氷のような男じゃのぉ」

「よし」

「できましたか?着いてきてください」


 衛兵たちに連れられる。全く…気分は犯罪者だ。でも何もしてないことは確かだ。

 夜の街を警邏する衛兵がいつもより多い。近頃の物騒な事件のせいだろう。だがそれにしては、衛兵の装備が気になる。いつもはハルバードを携えた帷子を着た兵が大半だが、馬に乗った騎兵から、盾を持った重装備な兵士までもが町中を巡回している。街に緊張が走っていることがヒリヒリと伝わってくる。

 いつもの詰所に入る。今日だけで二回もここに来ることになるとは。

「アルヴィ殿。お待ちしていました」

「何んだいったい?」

「困りごとがまた起きまして…レナルドという名の商人とはお知り合いでしたな?」

 ボルドの厳しい表情に、緊張が走る。

「ああ。どうしたんだ?」

「今日の夕暮れに彼とその妻が遺体で見つかりました」

「何?」

 あの二人が?…

「今回は隠すことなく堂々と店で見つかった。ですが…」

 ボルドは急いでいる様子だ。だがこちらもまだ飲み込めていない。

「いや待て。今日俺はあいつらと会っていた。そこから日が沈む間にってことか?」

 俺があの店を訪れていたのは、日が傾いていた頃。そこから日が沈む間に事件が起きたってことになる。

「そうです。彼らの言動を知っていますな?」

 そんなこと聞かれてもな。あの時はアーサが錯乱して、落ち着かせるためにレナルドが教会に連れていくと言った。それっきりで、その後の動向は知らない。

「ああ。教会に行くって言ってた。そこからは知らないが」

 クソ、着いていっておけばよかったのか?…道すがらで殺されたんだとしたら。だがなぜあの二人を狙う必要が?

「殺害方法は?」

「溺死に似た死に方とのこと。それと前回と同じように、手足を切断されていました」

「溺死?水を使ったのか?」

「これに関しては私も耳を疑いました。現場には洗濯に使われたであろう桶が残っていた、ですが調べた者が言うにはそこに顔をつけて溺れさせたのなら、もがいた形跡があるのではとのこと、体内に残る水については、遺体に刃物を入れるには許可が必要ですから、それ以上のことはまだです」

 現状の被害者二人とも、検死が出来ないので何も進展がない。貴族はやましいことを隠すために時間を稼いでいる可能性があるとのことを、レナルド自身から聞いた。それを誰かが聞いていて、報復に走ったという可能性もある。これはただの憶測でしかないが…

「まずは教会です」

 ボルドは席を立ち、衛兵を集める。

「皆、素早く教会に向かうぞ。アルヴィ殿も協力を頼みます」

「了解した」


 南区教会、このブレードックにある教会の全てが多宗教会で、旅人でも訪れる人が多い。こういった宗教への寛容さは、この街が交通拠点だからだろう。

 だがこの人通りの多さで、二人の足取りを追うための、明らかな痕跡など見つかるはずもなく、監視カメラも何もないこの世界で、何をしていたかを見ることは不可能だ。神父も夕刻にレナルド達が訪れていて、話を聞いた、だがその内容を口外することは信用を裏切るので話せないし、二人のその後の行方は知らないとのこと。審問官も真実と言うので、これ以上情報が集まらないので、教会側の捜査は終わった。

 所感では神父にやましさは全く感じなかったが、ボルドの判断で神父は衛兵に連れられて、詳しい取調べを受けることになった。何も発展しないことに痺れを切らす衛兵も多く出たが、ある衛兵の提案で、店を今から調べる事になる。


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