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88話 街へ帰還2

 船旅は終わり、ブレードックに繋がる港町まで戻る。春の陽気を感じる。でも人々は変わらずだ。荷車が多く通り、それを船に積み込む男達。よく見た光景が広がっている。俺がいない間も変わらず生活していたんだな。

 港での別れは思い出したくないぐらいには寂しかった。通信が発達していない世の中では、遠くの友をより遠く感じてしまう。ヴェルフやグラントが旗を振って見送っていた、その姿が小さくなっていくの見ると、今生の別れのように感じてしまった。でも忘れることはできないだろう。


「お母さん、港町って感じだね」

「なんで氷を運んでるのかな?」

 双子たちは見慣れない光景に目を輝かせている。二人はずっと家にいて、その景色しから知らないって言っていたからな。こういう景色でも新鮮なんだろう。

「よぉ!」

 見慣れた男が馬車を引いている。

「ケビン。どうしてここに?」

「あの道具屋の女が多分今日帰ってくるはずだから、暇なら迎えに行ってみたらどうだってな。しかしすげぇな。これじゃあ魔女って言われても仕方ないぜ」

「レイレイにはお見通しみたいだ」

「底が知れない人だな」

 ルルも驚いている。

「まあ乗っていきな。そのお嬢さんたちも一緒か?」

「お願いできます?」

「大丈夫だぜ。この荷車は十人は乗せられるからな」

 全員の荷物を積み込んで帰路へと進み始める。


「なぁあんたら。今こっちはかなり怖いことが起きてるんだよ」

 ケビンが珍しく神妙な顔で話している。

「なんだ?」

「金持ちの貴族が行方知れずになる事件があってな。それが最近見つかってな。ゴミ捨て場で見つかったって」

 交通の通り道のブレードックで貴族をやってるってことは、商売人がほとんどだろう。手汚い方法を使って、商売敵にされたってのはありがちだと思うが。

「恨みを買ってたんじゃないか?」

「違う。そういう殺人じゃない」

「何が違うんだ?」

「驚くなよ。尻とか腹の肉が削ぎ落とすように無くなってて、内臓も全くなかったらしい。屍鬼が街にいるんじゃないかって噂になってたが。どうやら違うらしい。ノコギリみたいな物で四肢をバラバラにされた跡があるって。そんなこと、魔物や動物ではできない」

「誰かの猟奇殺人か」

「多分な。それも食うために殺してる」

「そりゃまた。変な奴がいたもんだ」

「あんた。他人事だと思うな。もしかしたらだが、あんた向けの仕事かも知れないぜ」

「頼まれてもないのにやらないぞ」

「ボルドの旦那もあんたを連れてきてくれって言ってた。追跡は得意だろ?おっと、もう着くぜ」

「そうか。ボルドはいつものところか?まず話を聞かないと」

「アルヴィさん大忙しみたいだね」

 双子は顔を突き合わせて笑っている。

「すまない。ルル、レイレイに話を付けといてくれ」

「わかった」

 ルルたちを馬車に乗せたまま、南門で降りる。


 門のそばにある詰所。最初に俺が連れてこられた場所でもあるな。扉を開けると、兵士たちが集まって話をしている様だ。

「なあ、ここにボルドはいるか?」

「なんで衛兵長を探してるんだ?」

「あ!アルヴィさんですよ。ラインダル衛兵長が来たら連れてきてくれって言ってた。奥にいますよ」

 奥の重たい鉄扉を開ける。

「ボルド?」

「おお!アルヴィ殿、お帰りでしたか」

「その足でここにきた。面倒が起きてるって聞いた」

「休まる暇もありませんな」

「船で存分に寝させてもらった。俺は元気だ」

「ならば協力を頼みます。早急に片をつけねば、住人が不安がっていて、噂のせいで交通にも支障が出ています」

「聞かせてくれ」

「ええ、八日前から…」

 事の顛末は、多少の違いはあれど噂の話と変わらずだった。

 ここで木工製品の卸しをやっている元貴族が、体中を切り刻まれて殺されたという事件。

問題は犯人の動機が不明なのこと。どうやら貴族の家族が捜査に全く協力しようとしないらしい。そのせいで進展がないとのこと。現場検証で得られた情報も乏しく、俺には再度現場検証に付き合って欲しいとの依頼だ。

「検死は進んでるか?」

「いえ…遺族の方々が協力的ではなく、見ただけの判断でしかありません」

「死因はわかってるのか?」

「窒息死です」

 失血死と思っていた。猟奇殺人っていうのは、苦しませる死に方をさせる為の手順を取ると勝手に考えていたが…窒息死ということは殺してから痛めつけたのか?

「絞殺の上で、体を痛めつけたとしか言えません」

 よくわからない。恨みがあって絞殺したというのなら納得できるが、何故体を中途半端に解体して、わかりやすい場所に捨てる必要があったんだ?

「まあ現場に行ってみるか。案内してくれ」

「ええ行きましょう。あなたの目ならば、我らに分からなかったも分かるかも知れません」

 


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