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86話 お茶会

「この地に大砲をもたらした人と一緒に仕事をしたこともあるのよ!その人は海賊だったそう。時代といえば私たちが生きた時代よりもっと前の人。その人は船に乗って転生して、同じ船乗りに大砲を造らせたんですって」

「確かに時代に似つかわしくない大砲を見た。ライフリングがない古い形だったのは、持ち込まれた物を真似した物だったのか」

「でも結局性能が良くないので、カタパルトとかの方がよく当たるんですって。そこから大砲はもっぱら海に住む生き物を威嚇するために鳴らす銅鑼みたいな役目だそうよ。音だけは大きな音が鳴るからね。そうだ、他にも…」

 その後も、さまざまな転生者の話を聞いた。

 海賊だった男は、別の海賊に殺されて行方不明となったそうだ。他にも、犬飼いの女は、魔物に襲われて行方知れずになったと。

 転生車の元には色々と集まるようだが、妬みや、金があるという噂が広まり、命を狙われ死んでしまう者も多く、意外と世知辛いことがわかってしまった。

 盗賊や魔物に襲われて死ぬというのはありがちな末路で、見つかってもいない転生者もいそうだ。


「ねぇ。私からも質問をしてもいい?あなたも何か頼まれごとをした?」

「龍の使徒を殺してくれと頼まれた」

「龍の使徒?」

「俺を異世界に送り込んだ悪魔の部下が、生き物を不死身に変えて、最後にはドラゴンにしてしまう。それを阻止してくれって」

「とっても大変なことじゃない」

「力不足を感じてる。でも協力してくれる人も多くて助かってる」

「素敵なことね。私もそれをこっちにきてから強く感じてる。自分一人ではどうにもならなかった。ここに人が増えて、花の都なんて呼ばれるようになったのは沢山の人が手伝ってくれたからだもの」

「でも不便だ。車が恋しいよ」

「ふふっ。もしかしたら車に乗って現れる人もこれから先にいるかも!でも燃料がないか…」

 その後も、日が傾くまで多くの話を聞いた。街作りの苦労、いろんな困難、多くを乗り越えてこの街ができたという。彼女は楽園とは程遠いかもしれないが、自分の理想としていた街をこの世界でやっと作ることができたと、満足げに語った。


「最後に一つ聞かせて?」

「ああ。構わない」

「あっちに帰りたいって思う?」

 今までの和やかな雰囲気とは違う。真剣な眼差しを向けられる。

「そうだな……」

 難しい。帰りたいのか本当に?…

「分からない…でも、今のところは帰りたくはないなぁ」

「私は帰りたくなかった。でもでも私が会ったその人はなんとか帰ろうと努力していて。でも私は分からなかった、なんでそんなに必死に帰ろうとするのか」

「俺も分からない。家族でも残してきたんじゃないか?」

「うん。どうなのか分からない。とにかく焦ってたから。その後の足取りもわからないから」

 そんな焦ってるなんてのは、悪人の格好の餌食だからな。ろくでもない末路を辿ったのが、容易に想像できる。俺が荒んだ考えを持っているだけかもしれないが。

「俺はこの世界を知りたい、何があるのかをな、まあ観光気分だ。そのついでで怪物を倒すってことかな。もし気が済んだなら帰る方法を探すかもしれないけど」

 軽い気構えだ。ごちゃごちゃ考えるほどの頭も持ってないし。気にいるか気に入らないか、そんな程度で生きればいい。どうせ一度死んでるんだ。好きに生きるぐらい許してもらおう。

「それはいつになるんでしょう、ってことね。いいじゃない。あの世界と違って、行けないところなんてないんだから」

「それじゃあ、俺は夜の花の都観光でもさせてもらうかな」

「楽しんでね。案内してあげたいけど、私はもうおばあちゃんだから、眠たくって」

「そうか。達者でな」

「また暗号メッセージを送るからね。近況報告をし合いましょう」

 懐かしい言葉だ。離れた戦場にいる仲間ともこうして会話したものだ。


 ふぅ…話が合う人と出会えて、会話できたことで、悩みも色々とあった心が少し軽くなった。

「ふふ。アルヴィ殿、足取りが軽くなったな」

「ああ、今日は機嫌が良いいぞ。行こうか」

 さて、花の都のうまい飯でも食いにいくとしよう。それと双子にお土産を頼まれていたからな。それも探してやるとするか。


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