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83話 新しい家族

「うふふっ。おはよ」

「ああ。おはよう」

「よく寝てたね。大きな口が開いてたよ」

 シャーディアが窓を開け、ナディアはベッドに座っている。隣にはルルが寝ながら俺の腕を捕まえている。ルルは寝相が悪いから仕方ない。

「お腹空いてない?」

「昨日の夜は何も食べてないもんね。一緒に行こうよ」

「そうするか。ルル?」

 ゆっくり肩を揺らすと、ルルが飛び起きる。

「はっ!」

「どうした?夢でも見てたのか?」

「船に乗る夢だ。でも最後は嫌なことが起きた」

「だから腕をを掴んでたのか?」

「ああ、あなたが船から落ちていったからな。全く…変な汗をかいたよ」

「不吉の予兆かも。エルフは霊的な結びつきが特別強いから、予知夢を見たのかもしれないよ」

「なら帰りはよく晴れた日にするか。海賊に襲われても大丈夫な護衛付きの船に。急ぐ必要もないことだし、観光がてらな」

「そうしよう。多分それがいい」

「じゃあ、今日はどうするの?」

「今日は、転生者って噂の花咲か先生に会いにいってみようかと思ってる」

「へぇー。もう新しい女ってわけなんだぁ?」

 ナディアが挑発的な表情で見てくる。

「変なこと言うな」

 頭を軽く小突く。

「イテテ…これは堪える痛みですなぁ」

「全く…朝から戯れるな。私は腹が減ったぞ」

「ルルは愛情より食欲が優先なんですって」

「変なこと言うな」

 ルルもナディアの頭を小突く。すると、二人はにこにこと笑い出す。

「ふふっ。じゃあ私たちはお邪魔みたいだから、行くとしましょう。お姉ちゃん」

「ええ。ごゆっくりー」

 双子は手を振って部屋を出て行く。

「困った娘達だ」

「気を許してくれてるみたいだ」

「私たちも行こう」


 食卓は蜂蜜のいい香りに包まれていた。

「あら、おはよう。アルヴィさん、ルルさん」

 ライラーも顔色も良くなっていて、快活な様子だ。

「おはよう。もう元気そうだな」

「兎は大変だったのよ。雄兎さんったら何度も跨ってくるんだから…」

「詳しくは話さなくていい…」

「そう?動物の交尾には興味ないの?」

「あんたの話は生々しいからな」

「それがいいんじゃないの。サキュバス達にも褒められてたのよ」

 なぜか自慢げだ…

「アルヴィさんは花咲か先生って人に会いにいきたいんだって」

「ミラナっていう不毛の場所を花の街にした偉大な人よ。そんな人にどうして会いに行きたいの?」

「転生者らしいからな。何か情報交換でもできないかと思った」

「あら、いいじゃない。でもそのお話、私にも聞かせて?とっても興味あるの」

「いいぞ」

 他愛もない時間が流れていく。だが次第に、俺がどんな場所で戦ったかという話になると、それは重々しい空気感になってしまう。


「とても過酷な場所なのね。近付くだけで死ぬ場所もあるなんて…」

「魔界の門よりもひどい場所だね。だってあそこは危ないですよって、見た目から言ってるんだもん。知らぬ間に風に流れてきた毒で死んじゃうなんて、なんか怖いよ」

「ああ。気がついたら逃げ場がなくなってる時もある。そうなったら体が持つ限り、過ぎ去るのを待つしかない」

「持たなかったらどうなるの?」

「死ぬ。もし生きててもどうせ死ぬ」

「治せないの?」

「治すには莫大な金がいるな。でもそんな大金持ってる奴はそんな目に合わない」

「こんなこと聞いていいのかわからないけど、なんでアルヴィは死ぬことになったの?」

「それは…気がついたら死んでた。だからなんで死んだのか詳しくはわからない。だから運が悪かったってことで納得してる」

 現地人との接触があった。大方そこから情報が漏れたんだろう。でも今更知ることはできない。

 ライラーは、まるで母親のような、優しい瞳で見つめられて頭を撫でられる。

「私はあなたのおかげで生きてる。娘たちもあなたが救ってくれた。それは本当に運が良かったってことなのよね」

「巡り合わせってやつだな」

「あのね。あなたにも、これからのことを話しておかなきゃと思っていて、いいかしら?」

「ああ。これからどうするんだ?」

「その…昨日よく考えたの。私は命を拾ったんだから、新しい場所で生活を初めないとって思ってる。でもここに残りたい自分もいる。だけど娘たちを守らなきゃいけない。だから厚かましいお願いだけど、あなたについていっていい?どうかお願いします」

 ライラーが頭を深々と下げると、双子も一緒に頭を下げる。

「俺はいいんだが」

 隣に座るルルに視線を向ける。

「私はアルヴィ殿の意見に従う。でもレイレイは…まあ、あの人のことだから家族が増えて嬉しいわ。って言うか」

「もちろんお金のことは自分でなんとかするし、給仕としてあなたに奉仕する。でも娘たちには魔術学習院に入れてあげたいの。だから…」

「そこは大丈夫だ、魔術学院には知り合いも多い。俺からも頼んでみるよ。でも二人は魔術の素養があるんだ。きっと上手くやっていけると思う。それにライラーは動物を育てるのが得意だよな?ならレイレイが探してる人材に完璧に合致してるぞ」

「良かった…断られたらどうしようと思って。頼れる人なんて誰もいないから」

「ああ。でも会って三日の相手にここまで頼りにされるとはな」

「だって本当に頼りになる人だもの。それに人としても信用できると思う。二人もすごく気に入ってるみたいだし」

「うん。私はアルヴィさんと一緒にいたいな」

「私も!アルヴィのお仕事も手伝いたい!」

 シャーディアとナディアも嬉しそうだ。

 新しい仲間が増えた。だんだんと賑やかになっていくな。でも俺には無口な爺さんと婆さんしかいなかったからな。賑やかなのはいいことだ。

「それじゃあ、私はあなたの子供を産んでもいいのよ?」

「は!?」

「シャーディアとナディアの妹と弟を作りましょ?」

『お母さん!!』

 いや、もしかしたら、かなりめんどくさいかもしれない…


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