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77話 逃げ延びる

 玄関を飛び出して、人混みをかき分けて、逃走する。走っている、途中で、だんだん足が重たくなってくる。

「アルヴィさん、大丈夫ですか?」

「大丈夫だ。俺が泊めてもらっているところまで逃げよう」

「もう歩いて行こ。変に走ったら余計目立っちゃうよ」

「そうだな」

 元々、俺の見た目が奇怪なせいで目立つんだ。

 追っ手は来ていない、まあ衆目の前で、武器を振り回せば、衛兵に捕まる。弓を射かけて来たのも、鏃は鏑矢で、脅かすことしかしてこなかった。女だけなら腰を抜かしたかもしれないが、ライラーの謀通り、俺が居残り、結果的に逃げ延びられた。

 だが、本気で捕らえるつもりなら、数十人で直接追いかけてくればよかった。でもそれをやらなかったのは、現場の指揮官の判断だろう。というより、手を引く判断を速やかにしたのかもしれない。だとすると、もうここから離れる準備をしているかもな。

 しかし指示を出した奴は、短慮だ。取り逃がすことを想定していないような。思いつきでやったとも思える犯罪だ。それを指事しているが誰かは、わかったようなものだ。


「アルヴィ。お母さんはどうなったかな?生きてるよね?」

「わからない。でも、殺すために来ていたら武装しているはず。でも入って来ていた三人は武装していなかった。それに後始末を考えれば、あそこで殺すことはしないと思う。だが、覚悟はしておいたほうがいい」

「うん。逃げれただけよかったの。怖かった」

「嫌なことばっかり起きて…夢魔だから?お母さんは何も悪いことしてないのに」

「理不尽だ。だが、人身売買の連中と関わってることは、必ず咎められる」

「これからどうするの?」

「王様に話してみる。話のわかる人だ、必ず手を貸してくれるはずだ」

「アルヴィさんがいなかったらどうにもならなかった。あなたが私たち唯一の幸運ね」

 成り行きでこうなったが、もう乗り掛かった船だ。まずは急いで帰ろう。


 泊めてもらっている屋敷に戻ると、仲間が待っていてくれた。

「そうか、そうか。心配してみれば、女と睦んでいたとはな」

 ルルとボルドは昨日の夜中探し回っていたようで、知らせを出さなかったことをルルは怒っている。

「まあいいではありませんか。無事だったんですから。ですが、アルヴィ殿。騒動後あなたが見つからなかった時のルル殿はとても憔悴した様子でした。ですから…」

「反省している。ルル、すまなかった」

「いいさ、謝ることはない。私の知らないところで、また命を落としかけただけだろ?全く…」

「まあそんなところだ。だが吸血鬼の件は終わった」

「それですが。アルカードと名乗る青年が、謝礼と言って、これを置いていきましたぞ。お手柄でしたな!」

 書簡と金貨五枚も報酬に寄越してくれた。律儀なやつだ。

「それで?あの二人はどういう関係なんだ?」

 ルルの言葉の圧がいつもより強い気がする。

「ああ、それは…」


 筋道を大方伝えた。ルルは納得したようで、いつもの雰囲気に戻った。

「それで、わざわざ助けるのか。本当にお人好しだな」

「ここで終わりにすると、寝覚めが悪い。それだけだ」

「ふふっ。わかっているよ、あなたのやり方だな」

 ルルが立ち上がる。

「さあ行こう。この事を伝えに行くんだろ?私も手伝おう」

「その…すみませぬが、私は帰らせてください。もう一月近く帰っておりませぬ。長期休暇ということで、こちらに来ましたが、そろそろ戻らないと」

 ボルドは衛兵長という仕事もあるし、家庭もあるからな。ギルドに名前がある事は、一応周りも知っているようで、認めてくれていると言っていたんだが、長居させるのは俺も申し訳ない。

「ああ、手伝ってくれてありがとう。帰りの船は大丈夫か?」

「ええ、大丈夫です。もう交通網は戻り始めているので、困る事はないでしょう。それでは、どうかお気をつけて。絶対ですぞ!」

「そうだな。ボルドも忘れ物をするなよ?」

「フハハ!重たい忘れ物を届けさせることになりますな!」

「ハハッ。あっちでまた会おう」

「ご健闘を。そして必ず会いましょう」

 ボルドは帰り仕度を済ませていたようで、そのまま、帰路に着いた。


 そして、俺たちは目的を果たすため、グラントに王と会うための取り次ぎを頼んだ。

 その後すぐに呼ばれ、王に拝謁することができた。そして事の顛末を話す。すると王は納得した様子で、昨日の宮廷魔術師を連れてくるように言いつけた。


「それは災難だったな。まあ、私の即位以降、怪しい動きもあった。それが真実か確かめるのにいい機会だ。あのヒゲブタジジイ。帰って来たらひっ捕らえてやる」

「証拠を調べる必要があるなら俺にも手伝わせてほしい」

「いいや、あの宮廷術師が色々と喋ってね。賄賂の大元にはあのブタオヤジの名前もあるって言ってたんだ。他に何か知らないか、今連れてこさせてる。しかし、アルヴィ。済まないな。報酬も渡し終えていないのに、色々と仕事させて。それじゃあ、ここで渡せるものは渡してしまおう」

 そう言って、王は別の部屋に早足で入り、すぐに出てくる。

「これよりアルヴィに征龍自由伯爵の爵位を授ける。これはアルヴィが始めて就くことになる爵位だ。自由の名の通り、側近として仕える必要はない。名ばかりの爵位かもしれないが、その爵位は確かな身分の証明になる。これとついでに受け取ってくれ」

 勲章とともに、爵位を与えられた。名誉なことだが、どうにも緊張感に欠ける。俺に至っては、いつも通りの小汚い戦闘服のままだ。こういうのは制服で受けるもののはずなんだが。だが、これで別の世界の兵卒から征龍自由伯爵になったわけだ。こっちの方がよっぽど通りがいいだろう。しかし、俺が今までもらった勲章達よりも、この一つの勲章の方が価値があるというのは、少し残念な気がしてしまう。


俺は爵位と報奨金を受けとり。そして、問題の解決に向けて動きだす。まずやることは魔術師の尋問だ。


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