68話 正確な狙い
歓声の中、舞台に入場する。取り囲むように観客席が並んでいるが、ここに立つのはこんな気分なのか…
緊張?焦燥感?そのせいで変な汗が背中を伝うのがわかる。
中央には俺を睨む宮廷魔術士が二人。やっぱり、仕事を奪われることを危惧してるって顔だ。絶対に目を合わせてはいけない、挑発していると思われたら怖いぞ。いや、俺が仕事を奪う気はさらさらないんだが…
前には壺やら樽が並んでいる。これを破壊した数を競えってことだ。
手を抜いたら後が怖いと執事に念押しで何度も言われた。だから、王様が話がわかる人だと信じて出来る限りの事はやろう。それにこの二人が俺よりも精密に攻撃ができる可能性もある。
今、手元にはリボルバーとソードオフショットガンしかない。リボルバーは弾は6発しかないが、ウェブリーリボルバーは一気に弾を6発装填できる。ウィンチェスターM21もバレルが短い散弾で、近い距離なら大体の狙いで当たる。ライフルは、カルカノを試し撃ちしたいが、弾がないので、エンフィールドライフルを使うとしよう。
「準備はいいですか?」
審判が参加者に問いかける。いいと返事すると、兵士の一人が銅鑼の方に向かう。
「この砂が落ちきるまでに多くを壊してください」
主催者の手には砂時計がある。それが制限時間か。一度深い呼吸をして、ショットガンを握る。
ジャンと音が響く。
一射目、目前の壺に、二射目、その奥の壺に。それが火柱を上げて燃え上がる。
壺の中に油が入っている。魔術師は一歩遅れて火球を放っている。発動までの速さより、こっちの方が早いのはわかっていた。
リボルバーを抜いて、六発分狙いをつけて続けざまに射撃する。外れはなく、壺は割れて火が起こり、一発は樽にあたり、爆発を起こす。同時に観客の歓声が響く。
「危ない…!」
割れた壺や樽の破片が、爆風に乗って飛んでくる。矢避けの風を発動させて、飛来する破片を纏った風で落とす。
「大丈夫か?」
「ふん!私の心配をしている暇があるのか?」
怖っ!本気で嫌いな奴を見てるときの顔だぞ…
「そんな、敵視しないでくれ。俺はあんたらの仕事を奪う気は無い」
「口を慎め!」
魔術師が放った雷は樽にあたり、爆発を起こす。雷は連鎖するように周囲の樽も爆破する。
「見たか!」
回避で距離を取り、ライフルで遠くの壺を撃ち抜く。
ボルトを引いて、もう一つ、ボルトを引いて、もう一つ。
「くっ。やつは小さいやつばかり狙うぞ」
魔術の狙いは精密さに欠ける。樽は爆発は派手だが、的が大きいので点は少なくなっていて、より遠くの壺の方が点が高い。ならばそっちをライフルで狙っていくほうがいい。
残りの弾丸を撃つ。十発の内、最後の三発が外れた。クリップ二つで弾丸を一気に装填して、再度ボルトを引き、狙いをつける。
連続で撃ったことで銃身が温まって、狙いがブレるようになってる。試しに撃つと、少し上に逸れる。
その情報を参照して、端末が弾道を計算、補正して狙うべき場所を大まかに教えてくれる。
「この辺りか?」
あとは勘と経験だ。
「命中」
周りの魔術師も、遠くの的に手間取っている。いや、ほとんど当たっていない。
砂時計はもうすぐに落ちそうだ。
「ふぅ…」
もう一つ。最後に壺を撃ち抜く。それとほぼ同時に終了を告げる銅鑼が鳴る。




