67話 突然で魅力的な誘い
「ふぅ…みんな揃ってるな」
王が用意してくれた席は一番見晴らしがいい場所みたいだ。会場にも多く人が入り始めてる。時間は夕暮れ時、日が沈むと、戦いが始まる。
「見てくれ、いいだろ?」
ルルはニコニコと、新しい矢筒を見せてくれる。
「ワニ皮か、なかなか洒落てるな」
「かなり気に入ったぞ。しかし、それは?アル殿も新しい武器を手に入れたのか?」
「そうなんだ。ここでテントを開いてた商人がなぜか売ってたんでね」
「へぇ。別の転移者のものだろうか?」
「かもな。それか、武器だけ飛んできたって可能性もあるな」
「よかった。間に合いましたね」
ボルドも到着したようだ。しかし、なぜか正装になっていた。
「着替えてきたのか?」
「ええ、汗をかいたので着替えるといったら、これを用意されまして…」
綺麗な服だが、全身がパツパツに膨れている。きっと筋肉をいじめたばかりだから余計そう見えるんだろう。
「でも、きつくて……それでどうです。出場者は」
「ええ、東の門から出るのが黒獅子カルブ、西の門が白金のガンナームです。どちらもかなりの猛者ですぞ」
「その名前は私も聞いたことがありますよ。これは期待できますよ」
試合はもう直ぐ始まる。だが、突然前座に俺の席があるとかで、別の兵士に呼ばれる。
中には背の低い執事風の男が、腕を後ろに組んで立っていた。多少の社交辞令をかわし、気になっている本題を聞く。
「それで。俺は何をすればいいんだ?」
「ええ。突然、王様直々の言いつけで、魔法演舞をやってもらいたいとのこと。宮廷魔術士も参加しますが」
「え!?」
魔法演舞?宮廷魔術士も参加?
「壺や樽に魔法を当てるという、いわば個人演舞です。多くを破壊した方が皆が盛り上がるでしょう。かなり派手に爆発しますから」
個人演舞と強調されたが、おかしいぞ、じゃあなんで宮廷魔術士も参加するんだ?
「まさかと思うが、俺を召使えるとかそういう話ではないよな?」
「いえいえ。ただ技を見せて欲しいそうで。大方、兵士たちが盛りに盛った話を聞いてのことでしょう。軽くやるだけでいいので」
だが、目は完全に期待されてる目だ。これは本当にスカウトってこともあり得る…
「準備をどうぞ。もうじき入場ですから」
急なことで、驚きと焦りが止まらない。抜き打ちテストさせられてる気分になってる。胃が痛くなってきた…
「えっと…なにがいるんだ?」
「え?それはあなたの魔法の道具ですよ」
「ああ、そうだよな…」
「どうか、手加減だけはなさらないでくださいね。宮廷魔術師の方々はこのまま職を失いかねないので本気ですよ」
「は?」
完全にスカウトされるやつだぞ。どっちだ…本気を出した方がいいのか?手加減した方がいいのか?というか、本気ですよってどういうことだ?まさか攻撃されたりしないよな?…
「その…まあまあ酔ってるんだが…」
「いえいえ。今日は皆酔っています。問題はありません」
「あの…」
「どうか断ることはなきように」
念を押された。断れる雰囲気ではなさそうだ。
「会場にお入りを」
兵士が入場を促す。
「さあ、腕前を見せてください」
執事が、後ずさる俺の手を引く。
「もうなのか?急すぎるだろ」
言っても無駄だ。完全に囲い込むつもりだぞ…
「頑張ってください!」
道で待っていた、女が突然俺の手を掴み、口づけをされる。
眩しい笑顔で俺を見つめる、黄色い瞳が可愛らしい美女。体型が透けて見えるドレス、そのシルエットには嫌でも目がいってしまう。
その健康的で魅力的な体で俺の腕にひっついてくる。危うく腰に手を回しそうになってしまった所を押しとどめる。
ああ…この状況じゃなければ喜んで相手になりたいんだが。多分、いや完全に美女で籠絡するつもりだぞ。
「どういうことだ?」
「ええ…お分かりでしょう?…」
「夜はこれからです。美味しい料理も用意してますから」
これは…完全に……でも正直言って、このまま身を任せてもいい気がしている。いや、嬉しいことこの上ない。
「もうお離れを。アルヴィ様も、もう行きますよ」
「あんっ…」
そんな名残惜しそうに手を離す姿を見せないでくれ…
「待っていますからね。そうだ!私の名前はシャーディア。忘れないでくださいね?」
可愛らしい声でそんなことを言われると、俺の心の天秤が大きく傾く。
「ああ…覚えておくよ」
はあ…どうしようか…




