64話 ささやかな凱旋
「よくやってくれた!本当によくやってくれたよ!」
王は報告をする前から門で待っていて、出迎えて早々、喜びを隠せないと言った様子で小さくジャンプしていた。その側には、腕を組んでうんうんと頷いている、わがまま王女殿下もいた。
「ふふん。よくやったわ。まあ、できていなければ、お仕置きだったけど」
「季節外れの雨で、空飛ぶ巨体は地に落ちた。これは詩になって語り継がれるぞ」
王は随分と興奮した様子で、俺の手を引きながら、話を聞かせてくれとせがんでいる。それをグラントが制す。
「王よ、彼らは皆疲れています。今夜は彼らを休ませ、明日大きな宴を開き、勝利を祝うというのはどうです?」
「うん。そうしよう。交通も元に戻せると早馬を出しておいたし、街で祝いの品を買ってこいとも伝えておいた。明日は期待してくれよ。報告はもう良い、さあ戻って休まれろ」
感謝の念を伝え、待っていた馬車に乗ると、安心感からか、緊張が解けて疲れが襲ってくる。
「そういえば、ボルドはどうした?」
「兵士を運ぶのをまだ手伝っていたはずです」
「迎えに行こう。どこかわかるか?」
「ええ、今から向かいますね」
御者は方向転換して、兵舎のある方に向かう。
ボルドは施しの天使、いやラタトスクの囮を務めてくれたうえに、負傷した兵士の救助に活躍した、勲章ものの活躍っぷりだ。
勝利を祝うには、欠けてはならない存在だ。
街の大通りは兵の帰還を喜ぶ家族が溢れ、俺たちの乗る馬車に気づいた人たちが手を振り、勝利を街全体で祝っているようだ。
ここに来た時は、こんなに人が出歩くこともなく、歩く人も暗い顔をしていたが、今の街には喜びと安堵の空気に包まれている。とても心地いい雰囲気だ。
「いい光景だ」
「ふふっ、私の村とは大違いだな」
「ははっ。もう忘れたよ」
「私も安心した。あなたが目の前で切られた時はどうなることかと思ったんだぞ」
ヴェルフは申し訳なさそうな顔になっている。
「それが、今はこうして共に戦い、凱旋することになるとも思っていなかった。あなたには驚かされる」
「俺は大して強くないからな。頼れる相手には無理にでも頼るしかない」
「いいや。あなたの心の強さは誰に劣らない。奉仕の心はどんな騎士よりも気高く立派だ」
「褒めすぎじゃないか?」
「いいや。私はあなたについて来てよかった」
ルルは俺の手を握り、手の甲に口づけをする。
「もう一度、誓わせて。私はあなたのそばで戦うことを」
「泣かせる気か?」
「その邪魔な仮面がなければいいのに」
「やめてくれ。今は恥ずかしい」
多分耳まで赤くなってる。
「ふふっ。レイレイが可愛いという理由がわかった。そういうところだろうな」
「もう勘弁してくれ。俺は可愛いと言われる年じゃない」
「まあまあ」
ルルの冗談は、レイレイよりはまだ優しい。あいつは気分が良くなると、裸になれだとか、可愛い服を着ろとか平然と言ってくる。
会話になれてないから、魔女同士の会話みたいになるとは言っていたが、男の俺にとってはかなり厳しい。
「ふふ。目を光らせているのはなぜだ?照れ隠しか?それとも威嚇かな?」
「顔を見ないようにしてるんですよ」
「そっぽを向いた山猫みたいだ。ちっちっちっ。こっちを見て」
「もう知らん…」
これはふて寝が有効だろう。




