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53話 他愛無い喧嘩

「風が強くなって来た」

 荒れた地面の上を荷物いっぱいの荷車を押して走らせるのは大変だ。大人五人がかりでもなかなか進まない。

「頑張りなさいな」

 背中の王女は父親の話や祖父の話し飽きたのか、鼻歌を歌い始める。

「腹が立つわね。この子」

 突然ニオが王女が肩に回していた手を下敷きにしながら肩の上に現れる。かなり重たい。

「誰かしら!私の手を下敷きにて!前が…ちょっと!何で頬を叩いたの!?」

 ニオの尻尾を王女の顔に覆いかぶせたうえに、頬を尻尾で叩いたようだ。

「そんなに嫌なら降りなさい」

 尻尾に押されて王女が俺の背中から降りる。

「誰よ!」

「私が目をさましてからアルヴィを十回も困らせたんだもの、もう許してあげない」

「なんなのあなたは!」

「言わない」

「どこから現れたのよ!」

「知らない」

「名前は?」

「教えない」

「なんでトカゲの尻尾が生えてるの?」

「うるさい」

「お返しに十回困らせる気か?」

「うん。でも言っちゃダメよ。まあ、きっとこのお子様はおバカさんだから分からないでしょうけど?」

 王女に挑発的な視線を向けたんだろう。肩車をしているせいで顔が見えないが、絶対にそうだ。

「聞こえてるわよ!」

「これで七回」

「あなたおもしろい人ね、わたくしに意地悪をするなんて」

「あら、怒ったの?」

「いいえ!怒ってない。それより私ね、あなたとお友達になりたいわ!」

 同年代の人でも顔色を伺ってくるせいで、気軽に話せて、冗談なんかを言い合える友達が居ないと言っていた。そういう意味でニオは歯に衣着せぬタイプだ。彼女の求める友達像に合っていると思うな。

「なんなのこの子…頭がおかしい?」

「ええ、そうよ。城内ではたわけ者って陰口を叩かれている、でもあなたの様に面と向かって言える人はいないわ。だから、私あなたを気に入ったの」

「どうしよう…アルヴィ」

 王女はわがままで、少々変なところが多くあるが、父親を誇りに思っていることや、民を案じる心は本物だ。決して、たわけ者などという言葉で片付けていいほど見所のない人物ではない。

「仲直りから始めてみればいいんじゃないか?」

「でもアルヴィを困らせる悪い女よ?謝るなんて屈辱だわ」

「高貴な人なんだぞ…」

「知らない。私に人間の習わしは関係ない。好きな人か嫌いな人だけ」

 ダメだ、ニオは気に入らないやつはとことん嫌いで、それを隠す気も全くない。素直すぎるな…

「なら、私を好きになれるよう、お話しをしましょう!」

 王女も自分に自信たっぷりで一切譲らない。

「ふふっ。自分の能力を鼻にかけて、足元を救われないようにね」

「いいわよ。なら悪口勝負をしましょう」

 その後、信じられないほどの罵詈雑言が飛び交い、その光景に大人たちは呆れに呆れる。注意していたヴェルフすらも諦めてしまった。


「ふう…一生分の悪口を言った気がするわ」

「あなたの短い人生ではね」

「でも少し仲良くなれたと思わない?相手の悪いところを探すのは、相手をよく観察しなきゃ駄目だもの」

「まあ…アルヴィも観察は大事と言っているものね」

「ふふっ。あら、城が見えてきたわね。ねぇ、よかったらこの後お茶でもいかが?」

「待って、何か近づいてくる」

 ニオが急に真剣な口調になる。

「急にどうしたんだ?」

「近くにいる。アルヴィ、気をつけて」

「ルル、周りに違和感がないかよく見てくれ」

「わかった」

「ボルド、ヴェルフ、グラントは王女を連れて早く戻ってくれ」

「承知した。ですがアルヴィ殿、ルル殿。どうか約束してくだされ、もし見つけたとしても、決して戦わずに逃げる。これを守れぬと言うのなら、私もここに残ります」

「約束しよう」

「もちろん、偵察だけで戻ってくる」

 ルルは身軽で健脚だ、俺も姿を隠すこともできる。反面ボルドやヴェルフは装備の重さで、足が取られる。グラントは逃げるより王女の護衛に回るべきだろう。

「安心しなさい。アルヴィは私が助けるもの」

 ニオが尻尾を地面に叩きつけながら勇む。

「はっはっ!勇ましいですな。ええ、あなたがいれば大丈夫でしょう!」

「気をつけて帰りなさいな。ニオもね」

 王女たちは城に向けて荷車を押して走り出す。

 王女も荷車を引くのを手伝っている。あのわがまま王女め…


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