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49話 追走

案内役兼同行者にグラントも加わってくれるようだ。そして現在は集合しこれからの行動を決めている。

「奴が向かった方向に行く事は確定として、活動時間を決めたい。正直昼間の暑さが一番の敵だ」

「昼までには城に戻るというのでは?短いかもしれませんが、皆様の体調を第一に考えましょう。アルヴィ様に至っては大怪我からの復帰とのことですし」

「ヴェルフ?」

「悠長ではないか?一日をかけてでも探し出すべきだ」

「いけません。暑さに参ってしまって戦いにならないでしょう」

「だが、奴は砂中洞窟にいるはずだ。そこならば暑さは気にならないはず」

「彼らは冬の国から来たのですよ?この熱にまだ体が慣れていらっしゃらない。必ず良くない結果が起こります」

グラントの進言にヴェルフも目を伏せて黙ってしまう。

「そうだな活動時間は昼までにしよう。それでいいか?」

空気が重い…ええそうですとも言いづらい雰囲気だ。

「まあ探すことは得意だ、すぐに見つけられるはずだ。時間内に出来るという保証は出来ないがな?」

地形スキャナーもあるし、ドローンもある。それにあの大きさだ隠れられる場所なんて限られてる。

「賛同いたします。共に戦う者の身を心配出来ない様では仲間として失格でした」

焦る気持ちは理解できるが状況に不安が残る。二匹目が存在する可能性が浮き上がって来た、二体を相手に戦うのは厳しいからな。

「じゃあさっさと行こう」


蠍の使徒の痕跡を追いながら砂漠を歩く。吹き付ける風のせいで柔らかい砂に残った痕跡がだんだんと消されて追いづらくなっていたが、ヴェルフは砂中洞窟に居ると確信していてそれを頼りに進んだ。そして今、ひっそりと隠れるように佇む洞窟の入り口にたどり着く。雨の流れの終着点なんだろうか?湿気があって苔が生えている。ただ浅い作りで光で照らせば内部の全容が見えそうだ。

「湿り気がある。ここなら水に困ることはなさそうだ」

「ここは昔から魔物が巣食ってきた場所。奴が潜んでいるはず」

垂れる苔を払いのけて、暗闇を照らすと甲殻が輝く。

「いるな」

「間違い無いね。蠍の使徒だよ」

またどこからともなくニオが現れる。彼女の体が近くにいる立っているだけで体温を感じるほどに熱くなっている。

蠍の尾がニオを突き刺そうと高速で伸びてくる。

「危ない!!」

ニオを抱えて回避する。スキルも使い慣れてきたおかげで、疲労感も感じなくなってきた。

「ありがと」

「!」

抱きつかれた。こいつのスキンシップにはドキッとさせられるな…

「さあ戦って?まだ生命力が弱まってない」

鱗に姿を戻し、手のひらに収まる。

蠍の方に目を向けると相当イラついてる様子でハサミを鳴らして威嚇している。でもあの時のヴェルフの攻撃が相当効いたようで、体もボロボロでもう瀕死寸前といった状態だ。

「油断するな、死にかけが一番恐ろしいからな」

「承知。では参る」

ヴェルフは攻撃を躱しながら一瞬で間合いを詰め、一撃でハサミと腕を切り離す。それに合わせてルルと一緒に射撃を開始する。

銃弾は甲殻を貫通し、矢は火を帯びて刺さった箇所を燃焼させる。連続した射撃に接近していた味方へ攻撃していた蠍の動きが明らかに弱まる。

それでも蠍は接近する敵を近づかせまいと、片腕を必死に振っている。

そして隙を見つけてその腕を盾で受け止めたボルドの掛け声と同時に飛び上がったグラントが、頭部にめがけて拳を振り下ろす。その拳は大きな振動を起こして蠍の巨体を中に浮かせる。

「貰ったぞ」

宙に浮いた敵の腹部に滑り込むように姿勢を低くしたヴェルフがあの時に見せた空気の刃で切り上げる。

「キィィ!」

直撃した一撃で体内の空気が押し出されて、悲鳴のような音を鳴らす。

「よし」

鱗を握る、それに呼応するように鱗は形を変える。今回は拳銃型だ。

「ふぅ…」

一度呼吸を整えて銃を構える。あの大きさだ、外れるほうがおかしい。

冷静に狙いをつけ、引き金を引く。龍の咆哮を響かせて弾丸が標的に向けて飛ぶ。

その弾が敵の体内に侵入すると、体をばたつかせたが、その後すぐに脚や尾から力が抜けて体が消滅を始めた。

「倒したな」

ヴェルフに近づくと、まだ表情はまだ納得がいっていない様子で腕を組んで佇んでいる。

「どうした。満足できなかったか?」

「いえ、倒せたことは良かったのですが。どうにも弱い気がして」

「ん?」

「何度も襲撃してきていた奴のことは覚えている。奴は我々の攻撃から学習して身を守る強かさがあったが、こいつはただがむしゃらに抵抗しているだけだった」

ルルが怪訝な顔をして近づいてくる。

「アル殿、今回は何も戦利品を落としていないぞ」

「確かにな…能力のようなものも見せなかった」

「まだ状況がつかめないご様子。ですが無理もよくありません、一度お休みになられた方がいい。アルヴィ様はお顔が見えませんが、お三方は大変窶れていらっしゃる」

グラントが一番この砂漠に慣れている、だから彼の言葉にはちゃんと従うべきだろう。

「そうだな、俺も歩き疲れた。一度帰還しようか」

こうして不安の残る形ではあるが蠍の使徒を倒したことを報告に戻ることになった。

王様は俺らを待ちながら食事を用意してくれていた。そこで報告を行い、使徒を倒したことを王は喜んでいたが、その不安についてもこれまで通りの警戒を続けることになった。


今は疲れた体をベットに投げ出したところだ。そして気がついたらまた俺の上にニオが跨がっていた。

「だからな…」

「不満?」

「いや別に。それであの怪物を倒した感触はどうだったんだ?」

「いやだ…そんなこと普通聞いちゃダメなのよ?」

「手応えについてだ。本当にあいつで終わりなのか?」

「いつもと違うと思ったなら、その勘を信じるべきね。それにこれも言ってなかったけれど、使徒になっちゃった怪物はいずれ(ドラゴン)になるから。あんまりのんびりしてると手の施しようがなくなっちゃうからね」

「どういう意味だ?」

「だって彼らは進化の途中。今の体は繭みたいなもの、いずれ力が蓄えられて成長すれば、立派な蝶々になって空を羽ばたくの。その身に残った強い意志と共にね」

あの姿はドラゴンになる過程だったのか。

「そうだったのか…初耳だ。じゃあなんで不死身になるんだ?」

「それは仲間が欲しいから。(ドラゴン)は永遠に生きる、だから一緒生きる誰かが必要なの」

「不死身を与えてる理由はそれか」

「そうだよ、龍なんてものは世界に馴染めない。だから仲間が欲しいの、一匹の不死身の龍でも大勢の人には勝てないから」

「じゃあお前はなぜ、龍を殺す力を使うんだ?」

「仲間を作るのは勝手にすればいいけど、世界を乱すことを母は望んでない。私は祖龍(エンシェントドラゴン)の化身、その超越した存在の母の意思を私は実行している」

「人の味方ってことか?」

「いいえ。人に限らず、この星の味方なの。だから人が星を壊すならどうなるかはわからない」

神代からずっと生きていた存在だから、一概に人の味方と思うのは危険か。

「まあ、そんな真似この星に住んでる生き物ができるとは思ってないけど」

「そりゃどうかな…」

「そうだった…嫌な気分にさせた?ごめんね。よくあなたが魘されてるのも知ってたのに…」

「別にいいさ。俺にはどうしようもない事なんだ、ただ悪夢を見てただけだ」

「今は幸せ?」

「どうかな?まあ文明は欲しているけど、それ以外のことは割とな。でもトイレは気にくわないが」

「ふふっ。じゃあ今日の夜はあなたの不満を話して?」

「ハハッ、いくらでも出てくるかもな。覚悟しろよ?」

「ええ。楽しい夜になりそうね」


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