48話 襲来
「もうそろそろ夜明けだな」
ルルとボルドも合流して哨戒を続ける。何処の門に来るか予測不能だからな。
「何処から来るだろうか?」
「来るのなら跳ね橋のある南門以外、その予測すら外れるかもしれませんが。奴は戦い方を覚えてる、我々の予想の裏をかく可能性ももちろんあるはずです」
「砂を潜れるなら直接街中に現れるなんてこともあるかもしれませんね」
「地盤を砕いて現れる。そうなれば最悪の事態だ」
「考えたく無いな」
ルルは表情を曇らせる。村のことを思い出させるんだろう。
「南西門付近に出現!!」
カンカンと鐘が鳴り響き、襲来を伝える。
「近い。急ぐぞ」
今いる場所は西門付近だ。歩廊を走り、門まで急ごう。
カメラアイのズームで見てみると、尻尾が歩廊で応戦する兵士を薙ぐようにのたうっている。
「持ち場を離れるな!!」
火筒を下に向けて放つ兵を嫌っているのか執拗にその位置を攻撃している。
「狙えるな」
ちょうど壁に張り付く体の側面を狙える位置を見つける。
「分かりました。アルヴィ殿、ルル殿はここから攻撃を。私達は攻撃を防ぎに行きます」
「ご武運を」
ボルドとヴェルフが武器を構えて走り出す。
銃を固定して狙いをつける。守りを固めている爪ではなく、壁に張り付く脚を狙おう。壁にめり込んだ脚の先端は固定されていて動く様子がなく、大きさもあって狙いやすい。距離も80mほどしか離れていないから弾道予想装置も直線を指している。
引き金を引く。
脚の甲殻が砕けるように穴が開き、体制が崩れるが、尻尾と爪をうまく操り壁にまだ張り付く。ルルが放った火の矢は体に付着している油に引火して燃え上がる。
「矢は弾かれるか」
「ああ、聞いた通りだ。火で攻撃してやれ、奴は身動きが取れない」
二度目の射撃を行う。同じ関節を狙ってやると脚がへし折れ、危機を感じたのか壁から離れ地面に降りて体を震わせて砂に潜り、尻尾だけを出した状態になっている。
「逃げるのか?」
その疑問を感じた瞬間に危険を感じ取る。
視界が砂嵐の中のようになるほどの粉塵を巻き上げて姿が見えなくなる。
「どこにいった!?」
暗視装置は効果がないのか?いや違う!
兵が集まる真上、そこに奴は飛び上がっていた。ただ誰もそれに気づいていない。
急いで銃を持ち上げ、上に向けてその巨体の腹に向けて銃弾を撃つ。ただその程度の攻撃で撃ち落とせるはずもなく、その巨体は兵たちの真上まで落下する。
刹那、その体は砂の刃に切り払われ、門の外側にはじき飛ばされる。ひっくり返った蠍は砂に潜り逃げて行った。
「逃げたか」
「アルヴィ殿、さすがによく気がつきましたね」
「離れていたお陰で見えたよ。しかしあんな跳躍力があるとは想像もつかなかった」
「他の人が心配だ、一度合流しましょう」
兵士達が怪我人を搬送していて、門下には治療士や民衆が集まっている。ルルは砂が目に入ったので顔を洗って来ると、ボルドは鎧が砂まみれになっていても問題はないと言っていたが、落としてくるように言い聞かせた。砂まみれで歩くと肌と砂が擦れて大変だからな。
「アルヴィ殿、いい援護でした」
やはり、あの砂の刃の主はヴェルフか。
「どうやって気がついたんだ?」
「飛び立つ矢の持つ風の流れを感じたんです。その風は私の真上に向かって行った、それで理解出来ました」
こいつ本気で言ってるのか?いや、その顔は本気なんだろうな。だとしたら人間離れしてるって言葉が正しいだろう。
「素晴らしい技術、さすがだ」
「光栄です。ですがあなたの援護無くしては気がつけなかったでしょう」
彼は見込んだ通りの実力者だった。というより彼を前線に立たせなかったここの連中は馬鹿だな。
「ですがあの怪物、今まであんな跳躍を見せたことはなかった」
確かに報告の内容には書かれていなかった。ただ成長しているという内容の報告はあった、門を飛び越えるなんてことを考えたのかもしれないな。いやだとしたらなぜ兵士達の上に飛んだんだ?
「力の使い方を学んでるんじゃないか?」
「だとしても、前に見たものとは違う気がします」
時間稼ぎ、その言葉がよぎる。
「まさか別の個体か?」
「まだわかりません。ですがその前に逃げた奴を追いましょう。もう弱っているはずだ」
「ああ、そうだな」
二兎を追うものは何とやらだ。確実に倒せる奴から仕留めていくべきだ。




