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47話 夜明け前の語らい

夜明け前、今は城壁の歩廊を歩きながら哨戒中だ。物見櫓には兵士が立っているが、どうせ来るならここにいる方がいいと思った。ルルとボルドには休んでもらっている。二人共色々あって疲れている様子だったからな。

しかし、さすがに怪物の猛攻を耐え抜いた城壁なだけあって、防衛に使われる武器が多くある。

カタパルトや据え置きの大型の弩が多数配備されてる。大砲も数門あるが、金属や火薬を供給できないせいで砲弾を用意できない様で使えないらしい。

そして兵士たちが整備している筒、これは液状の可燃物を放って燃焼させる火筒だ。ギリシャ火薬という物があったって聞いた事があるがそれに近い物かもな。

そして彼ら兵士が箱に詰めて持ち運んでいる特徴的な武器は油を詰めた陶器製の壺でこれに火を点けて投げる様だ。

バリスタや投石器の攻撃では硬い甲殻に加え、どうやら別の防御手段も持っていて効果が薄いと兵士達は言っている。だが油を活用した兵器は大蠍にも効果的らしい。これらの兵器には期待しよう。

ここで倒せるのが理想だが、下手に攻撃して城壁を突破されでもしたら街が攻撃されて危険だ、だから巣穴を見つけてそこでとどめを刺すのが俺の作戦だ。だから少数で動く事になるであろうこの作戦にはヴェルフの腕が有るか無いかで難易度が大きく変わるはずだ。

俺の使う武器も考えよう。軽機関銃という手もあるがブローニングは固定しないと撃てないし、もし立ち位置を敵に奪われたら離脱せざるを得ない。

対物ライフル、ゲパードGM6 Lynx、これを使おう。50口径の大口径ライフルだが立った姿勢で撃てるし、威力の高い弾は甲殻で防ぎきれないはずだ。それでも貫徹力が足りなかったら徹甲弾の用意もある。

取り出して、肩から掛ける為にスリングに取り付ける。

「よいしょっと…」

軽いと言ってもいつものライフルと比べれると重い。予備弾薬も重いし、これを持って動き回るのは疲れるな。

「それがあなたの武器か?魔法使いの杖って感じだな」

兵士の一人が武器に興味を持っている。銃という物はこっちの世界では杖みたいと言われる事が多いが、あながち間違っていないのかもしれない。杖は魔術を使う時により素早く狙いを定め、攻撃の威力を上げる為の道具だ。

「そんな所だ」

「鉄の杖を使うのは僧侶って話だが、あなたはそうには見えないな」

神に祝福されるは木じゃなくて金属で、それを使った錫杖は神が起こした奇跡を再現する。その錫杖には音のなる物がつけられていて、その音色で奇跡が起こるそうだ。

「これも金属だし、でかい音がなるが、出来るのは弾を飛ばすことだ」

「大砲とかと似てる?」

「ああ、火薬で鉄の玉を飛ばす。まあ似たような物だ」

「その大きさでそんなことが可能とは」

「工業力と火薬だな」

「何処でそれを手に入れたんです?そんな技術の進んだ国に興味があるな。ああ、私は軍備の整備を指揮しているジヤードと言います」

「俺はアルヴィだ。ただこれを手に入れるのは厳しいかもな。転移者って、聞いたことあるか?俺はそれなんだ」

「なんと!?転移者?驚いた。私の知り合いにも転移者に会ったことのある人がいるんです。その転移者はすぐに亡くなってしまいましたが。その彼は空を飛ぶ船に乗ってやってきたそうで、その船の残骸は王様の宝物庫にしまわれているそうですよ」

「空飛ぶ船?」

「ええ。鳥のように翼があって、鉄と木で出来た船ですよ。それで飛んでやってきた彼は地面にぶつかって、その船は燃えてしまったそうですが、それに乗っていた男を助けたのが私の叔父なんです」

まさか飛行機のことか?木で出来てるってことは複葉機かもしれないな。というか転移者ってのは神様に選ばれると聞いたが、飛行機に乗って現れて事故で亡くなってしまうなんて事も起こるんだな。

「飛行機かもな。俺がいた場所でもあったぞ」

「そうですか!もしかして乗ったことも?」

「あるぞ」

「そうでしたか。どういう作りをしているかはご存知で?」

「いや知らないな。複雑な作りの機械だからな」

「進んだ技術を持った場所。もし行けるのなら行って見たい場所だ」

そう思いを馳せているようだが、実態は戦争が絶えず、放射能で行けない場所だらけなんて思いもしていないんだろうな…

「会話中のところ失礼」

ヴェルフが険しい表情で立って居る。

「兵長?」

「外してもらえますか?」

「ええ。それでは、お気をつけてアルヴィさん」

「ああ、そっちもな」


ヴェルフに連れられた場所はよく街が見えるという場所。広がる街は静かで、ブレードックのように夜も変わらず明かりに照らされている訳ではない。

「それで心は決まったか?」

「ええ、戦います。ですが、これが治り次第兵長の座を降り、私を処断していただく事を王に直訴いたしました」

「でもあんたが悪いわけじゃ…」

「私が殺してしまった兵の中には子供が居る者もいた。その者の家族を前に私は無実だなどと宣う真似は絶対に出来ない」

「責任を取る為か。分かった、もう余計なことは言わない。」

「理解していただいて助かる。もう心は決まった、この剣をこの地を守る為に振るうと」

「よろしく頼んだ」

差し出した右手を強く握り返される。強い意志を感じる目だ。


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