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38話 出航

同行者達と共に、案内された船室の椅子に座る。

「それで。現れた使徒はどんな見た目なんだ?」

「それは、蠍です。大きな鋏に硬い鎧。そして猛毒を持ち、そして普通ではありえない大きさでした」

砂漠には巨大蠍のギルタブルルという怪物がいる。人と同じ位の大きさでラクダなどの家畜を襲い、人すらも殺すと本で見た。しかも殺した人間の体を尻尾に突き刺して、蜃気楼に紛れて人を騙すという生態があるらしい。

「もしかしてギルタブルルか?」

「いいえ、巨人種といい勝負の大きさでした。しかもあの毒は水分を奪うギルタブルルのものと違い、純粋に獲物を死に至らしめる毒でしたね」

それもそうか…砂漠においてのヒエラルキーでかなりの上位にいるギルタブルルは獲物を弱らせる毒などなくても生きていける。だとすると、前回の蝙蝠みたいに下級吸血鬼が進化したと見たほうがいいかもしれない。

「被害はどうなっているんだ?私の村は簡単に壊滅したが、焦りが見えないのは無事な部分が多いからなのか?」

「街としての被害は出ていますが、補修までの時間があるお陰でかろうじで防衛が続いています。ですが毎日来られて皆が疲弊してしまっていて、国全体の士気が沈み始めているという状況です」

「そうか。兵の死人も多いのか?」

「毎日数十人亡くなっているのが現実です」

ルルが暗い顔になる。確かにあの村もたくさんの犠牲があり、その結果あの洞窟に押し込められる事になったんだったな。

「倒しても蘇る敵ってのは本当に厄介だな…」

「だからこそ、アルヴィ様。あなたの助けが必要なのです」

「ああ…善処する」

「心配なさらないで。私達の国の勇士達はあなたと共に、必ず戦うでしょう」

「そうだな。一度倒してるんだろ?なら次も勝てるよな」

「ええ!あなたは一人で戦うわけではありません。共に戦い勝利しましょう」

ドンと勢い良くドアが開き、エマが部屋に入ってくる。

「もう出航っす!それで、(ドラゴン)を倒すって本当なんすか!?」

「ああ、そうだ」

エマに龍殺しの印を見せる。

「おわっ!これが龍の鱗っすか?初めて見たっすよ。へー結構小さいんすね」

「これがくっ付いたドラゴンってのはまだ見たことないがな」

「あれ?ないんすか?」

「ああ。蜘蛛に蝙蝠、使徒って呼ばれてる奴らを倒しただけだ」

「そうなんすね。あの…あたしの家族はみんな龍に殺されたんすよ。まだ赤ん坊で何も覚えてないっすけど」

「そうだったのか…」

「だから、もしかしたらって思ってたんすけど…まだ見たことないんすね」

「まあ、暴れまわる龍がいたら倒すのが俺のこっちでの目的だしな」

「こっちでの?」

「アルヴィ殿は転生者なんですよ」

「転生者!?だから変な格好なんすね!あ!!ごめんなさいっす…」

どうやらドールグに怒られて反省してるみたいだ。

「でも俺から見れば騎士なんて初めて見た。まあお互い様ってことだ」

「そうっすね!あ、そうだ!ボルドの兄貴は鎧とか来て海に来て大丈夫っすか?溺れても助けれないっすよ?」

確かにフルプレートの鎧じゃ溺れそうだ。

「浮上のスクロールも持って来ていますが少々不安ですね、胸当て以外は外しておきましょう」

「それがいいっすよ」

「お。動き出したな」

船が動き出した、さて離れていく港でも見にいくか。

「甲板にいくっすか?あたしも行くっす!」


船は沖に出た頃合いだ。船員のそれぞれが甲板や船室ではしゃいでいる声が聞こえる。そして俺たちは海を眺めていたら時間が過ぎていたところだ。

「アルヴィ殿は船に乗り慣れていますか?私はあまり乗り慣れてないので、少々脂汗が出ていますね…」

ボルドはあまり船が得意じゃないみたいだ。だがルルは目を輝かせて海と空を眺めている。

「私は初めて海を見たぞ!すごい、まるで無限に続いてるみたいだ!」

「俺は子供の頃、じいさんと一緒に釣りをしたな。何も釣れなくて落ち込んだのを覚えてる」

「はは!いい…思い出ですね…」

デッキの手すりにもたれかかる。ボルドは完全に船酔いしてるな…

「馬には乗り慣れてるのに、船はダメなのか?」

「勝手が…違いますよ。これはまるで地面と一緒に揺れているみたいだ…」

「あんた、ほらこっちに座りな!ちっとは気が紛れるぜ」

船員が甲板に並べた椅子にボルドを座らせる。どうやらカードで遊んでるみたいだ。

「あんたらもどうだ?」

「よしやろうか。ルルは?」

「海を見ているよ」

「ならわたくしもご一緒よろしいですか?」

「ゲッ…あんたにはコテンパンにやられたからな…」

グラントは確かに勝負強そうだ。

「金の賭けもあるのか?」

「いや、船長に止められててな。今は食い物の賭けだけだ」

冷静そうな男が隣の席に座る。

「そうか。俺は持ってないな。薬ってのは賭けに入るか?」

ここに来る時に用意してた傷薬がちょうど良さそうだ

「お!いいな!それなら船長に怒られなさそうだ。じゃあよろしくな。えーとアルビだったか?」

「アルヴィだ。そっちは?」

「俺はキーラン。こっちはフレデリック。そんでこのガキンチョは… てっ…お前は賭けに入るなって言われてんだろうが!!」

「いいじゃないっすか!!不平等っすよ!」

「怒られんのは俺らなんだぜ?」

「知らねえっす!アルヴィ兄貴、いいっすよね?…」

上目遣いで顔を見られる。

「俺に言われてもな…」

「なら、エマ様は賭けには入らないということで手を打つというのは?」

「むーっ。仕方ないっすね。でも大勝ちしたらすげー損っすけどね」

「大丈夫、お前は勝てねぇ…」

「そんなわけないっす!!じゃあやるっすよ!」




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