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37話 港町へ

ギルドを出て、ここから南にある港町ゼノーに向かう。

あそこは雪の影響も少なく活気ある場所だ。一度護衛ついでに行ったこともある。あの時は水を運んでるって言ってたな、雪解け水を凍らせて持って行ったのを覚えている。

俺は浄水フィルターが付いた水筒を持ってるから、泥水だとしても飲み水の変えれるんだが、ここでは綺麗な水はなかなか手に入らないものだ、だからこそ酒がよく飲まれてるんだろう。

でも便利なもので、補給するっていう悪魔にもらった能力のおかげで、水筒に水までも補給されるんだよな…しかも飲みかけの少し減った量で。

なんならレーションも補給されるから食うに困ることもない。わざわざ食うほど美味しくもないんだが…

「そうだ…やっとくか」

手のひらほどの大きさのすり鉢に乾燥した薬草を入れて蒸留酒と混ぜる。よく薬草集めを手伝ってるせいか簡単な傷薬なら自分で用意できるぐらいになってしまった。治療薬は能力で補充できるが、小さい傷に使うのは勿体無い。だから、暇つぶしに自分で用意しておくのもなかなかいいってわけだ。

「薬をお作りになられているのですか?」

「そうだ。擦り傷とかに使えて便利なんだ」

「私も歳のせいか体の節々が弱ってきてましてね、貼り薬をよく作るんですよ」

「ミランジの葉だったよな?爺さんのために取ってきたことがあるんだ」

俺がこっちの世界に来た時に助けたリックバーグの爺さんのためだな。

一度湯に通さないと毒気が残り、食べたらダメと言われた。かなり効果の強い薬草だな。

「ほぉ!詳しいですね。あれはすごく効くんですよ」

「貼った翌日には若返るってな」

「はははっ!なら毎日貼ったほうがよいかもしれませんな」

「ですがグラント殿、あなたは名のある拳闘士だったとお聞きしております。それにその…とても若々しく見えます」

「へぇ、拳闘士だったのか?」

「ははっ、今はただの執事ですよ。それに若い頃のように鍛錬に戦いと無茶もできませんから」

「貼り薬は筋肉痛に使ってるのか?」

「少し鍛錬しているだけですよ」

そう照れるグラント、だがよく見れば無駄のない筋肉を持った頑丈でしなやかな体をしている。あの綺麗な立ち姿も納得だ。

「ああ!思い出した。俺も知ってるぜ!臓腑抜きのグラントだよな?拳の一撃で内臓が飛び出るって聞いたことあるぜ」

ケビンが納得した様子で、手綱を握る手を離してグラントと握手を交わす。

「そんなことができるのか!?」

「ええ、コツを掴めば」

そう言った瞬間の顔は真剣で、決して誇張された話ではないようだ。

「極めて危険な技です。軽々しく使う技ではないのですが」

「そりゃそうだな…」

実際やったらどうなるんだ?見て見たいが見たくない…


彼の武術の話を聞いていると港町に到着し、波止場まで歩く。

「でも旅客船は今日来ないよな?どうやって行くんだ?」

「大丈夫。いえ大丈夫じゃないかもしれませんが大丈夫です。あちらです。あの船に乗せてもらう約束を取り付けておきました」

指差している船は輸送に使われる帆船で、黒い色に塗られた船体と帆は夜の闇に溶けるためだろうか?大砲が何門もつまれてるのを見るに危険な海を越えるための船なんだろう。

「あれはヴァイキング達の交易船、ここよりもっと北から来た船です。私達はあの船に乗ってここまで来たんです」

「そう言えば、エイブラハムはどうした?」

「卿は休暇をとるとのことで。大方、面倒から遠ざかるためでしょう」

「いい身分だな。自分の国の問題なのに」

「ははっ!まあそうおっしゃらずに。きっと気苦労もあるんでしょう」


波止場に泊まる船の前に立つ船員にグラントが話しかける。

船員たちはまさにヴァイキングといった風体で、鉄の鼻当てが付いた兜に鱗のような革の鎧、武器も手斧や片刃の大きなナイフなどを携えている。

「失礼いたします。先日この船に同乗させていただいた、エイブラハム卿とその召使いでございます」

「ああ!あんたか。それで連れはそいつらか?」

「待ってな。船長を呼んで来てやる」

もう一人の男が荷物を置いて船に走って行く。

そのあと直ぐに、角が二本生えた鉄兜の赤ひげの大男が現れる。

「よお!あのうるさいおっさんの召使いだな!そんで、そっちのが龍狩りか!」

すごい大声だ。しかも強い力でトンと肩を叩かれる。

「アルヴィだ、よろしく頼む」

「おぉ!!俺はドールグってんだ。よろしくな!」

また強い力で肩を叩かれる。

「嬢ちゃんに、鎧のあんたもよろしくな!」

「ルルだ。よろしく」

「私はボルドと申します。どうぞよろしくお願いします」

ルルとボルドも同じく肩を叩かれている。ボルドがよろめくなんてやはり相当な力だ。

「よし!アルヴィにルルにボルド、覚えたぜ!」

カカカと大きく笑い、俺たちを船に招いてくれる。すると、年若い少女が駆け寄って来る。

緑色のベストに腰には綺麗な装飾のサーベルを下げて、頭にトリコーンを冠っている。彼女はヴァイキングというよりか海賊みたいだ。

「あんたが、龍を狩るって男か!?」

「ん?」

「こいつは俺の娘っ子、エマヌエラだ。ほら、挨拶しときな」

「エマって呼んでほしいっす!よろしくです!」

エマヌエラと言う名の少女は深々と頭を下げる。

「と言うか、変な格好っすね!」

俺の格好を見てそう思ったようだ。でも悪意があるわけではなく、ただ好奇の目で見ているみたいだ。

「おい!失礼なこと言うんじゃァねぇよ」

ドールグにゲンコツを落とされ、エマは涙目になっている。

「すいませんっす…」

「いや、いつも言われる。気にするな」

「カッカッ!こいつが失礼なこと言ったら遠慮なく怒ってやってくだせぇ!」

「それはイヤっすよ〜」

「なら、さっさと持ち場に戻るんだな!」

「わかったっすよ!」

投げ捨てていたブラシを掴んで掃除に戻る。

「そんじゃあ。積み込みがもうすぐ終わるんで、終わったら出向でさぁ!」

よし、初めての土地に向かうとしよう。

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