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36話 依頼2

遺跡での件から数日が経った。どうやらあの事件は大ごとになったらしく、国が調査隊を組んで調べてるらしい。そして、俺にとって身近に感じた事件はあの忙しなかったアンドレアスが行方不明になったということだ。あの時一人でいかせてしまったせいかと思っていたが、ちゃんと報告に戻っていたようであの後行方が分からなくなったらしい。ボルドの話では人さらいにあったんじゃないかということだ。でもそれが本当ならそんなタイミングよく、なおかつ大人をたやすくさらえるんだろうか?…

「アル殿?」

「ルルか、どうした?」

「朝食が出来てる、あと客もきてるぞ」

「客?今行く」

下の階に降りると食卓にマルシアが座っていて、俺を見て立ち上がる。

「やあ!おはよう!」

「マルシアか、おはよう」

「いや〜昨日の夜にやっと完成してね。早速渡しに来たんだよ」

「蝙蝠のやつか」

「そう。これを見て!」

あのハエの目玉みたいな宝石を真ん中にはめ込まれたペンダントだ。

「ペンダント?」

「そう!そしてこの金属はその宝石の力を抑えてる。吸収の力を抑えて、放出の力が働かないようにしてある、だからそこに魔力を貯めておける。もし魔力が足りなくてもそこから取り出して使えるんだ!便利な道具だね!それに君以外の人にも魔力を分けてあげれるんだよ!」

「魔力電池ってことか、便利そうだ…それで容量は?」

「底なし。そこは同じだ!だから魔力を使わなかった日はそこに貯めておくといいね」

魔力量というのは生まれた時から決まっているらしく、鍛えたとしてもその限界までしか引き出せない。でもこのペンダントならそれが無限に貯めれるってことだ、俺が持ってるにはもったいない物だが、しかもその魔力を人にも渡せるときた、これは蜘蛛の牙につぐ凄い宝になったな。

「うまく使おう」

「うん、それがいい。じゃあ僕はお暇するよ、またね!」

マルシアが出て行って、椅子に座ろうとするとリンリンと玄関の呼び鈴が鳴る。

「誰か来たわね」

「俺が出る」

玄関を開けると、全身鎧を着たボルドが立っている。

「おお。今日は早いな」

中に入ると兜を外して顔を見せる。

「皆様おはようございます。失礼、朝食中でしたか。急ぎの用がありまして直接参ったのです」

「どんな用事だ?」

「使徒の件でアルヴィ殿宛てに依頼人がいらしているんです」

「それは急用だな。ちょっと待っててくれ」

「ええ…そんな焦らなくても大丈夫ですよ」


「素早い準備。さすが従軍経験者ですね」

「悪いなルル。急かしてしまって」

「私はあなたの従者になったんだ、だから気にしなくていい」

「いつも助かってる」

「そ、そうか…」

ルルが顔を赤くして照れている。

「ハハッ、朝から仲がよろしいようで」

「やめるんだ。私は別に…」

「仲はいいだろ?」

「確かにそうだが…」

ルルの褐色の肌がより一層赤く染まる。

「そろそろお嬢さんをいじめるのはやめましょうか」

「そうだな。それでどんな依頼人なんだ?」

「王族関係の方で」

「王族!?」

「そうです。ここから南の方にある砂の国クシュールから」

「海を越えてわざわざか」

「きっとあなたの噂を聞きつけてのことでしょう」

「アル殿の日頃の頑張りの成果だな」

確かにギルドの職員の態度が柔らかくなったし、春の審査が楽しみだと何回も言われていた。

「もう付きます。あとはご本人から」


ギルドの扉を開けるとカウンターに座っていた女性の職員が手を振る。

「あ!アルヴィさん!ボルドさ…えーと、聖騎士(パラディン)さんが呼んでくれたんですね!それじゃあついて来てくださいね」

上の階にある部屋、ルルと初めて会った場所だ。

「失礼しまーす」

職員が扉を開ける。

部屋のソファーには髭を油で尖らせた男が偉そうに座っていて、もう一人執事服を着た白い髪の中老の男はこちらに気付いて、美しい立ち姿で礼をする。

「アルヴィ様、ルル様、ご足労いただき感謝いたします」

「私はエイブラハム卿、ハーディ国王の遣いだ。それで、貴様が使徒を倒せると?」

「アルヴィだ、よろしく頼む」

エイブラハムが席に座ると、自分が話を切り出す。

「早速だが依頼を聞きたい」

「まず証拠を見せてもらえるかね?私は眉唾ものと思っているんでねぇ」

髭を撫でながら訝しまれる。

「アル殿は確かに倒していたぞ!」

ルルが強い口調で発言するが、目もくれない。

「さあ」

「証拠か…これでいいか?」

龍殺しの印、蜘蛛の牙のタリスマン、蝙蝠宝石のペンダントを机に置く

「触るなよ、色々危ないからな」

「グラント、これは本物か?」

グラントと呼ばれた中老の男は注意深く物を見つめる。

「強い呪力を感じます。エイブラハム様、これなら十分信用に足るかと」

「そうか、ふむ… 失礼した。海を越えた地の噂話、信じて良いものかと思いましてな?」

「仕方ない」

「ええ…それでは本題を。我らが国クシュールは今、怪物に悩まされているのは分かっているよな?奴は一度討伐を果たしてからというもの、夜明け前に毎日現れて、兵士を殺し、城壁を壊して太陽が昇ると消え去るのだ」

「倒しても死ななかった?」

「そうだ。とどめを刺したなどと皆が慢心して宴などをしておったら、奴はその時忽然と姿を消した」

生き返るタイミングを自分で決めてるってことか?…

「とどめを刺したあとは動かなかったか?」

「兵どもの証言では、動くことなく完全に死んでいるように見えたと言っておった。あの腰抜けども……」

小声で腰抜けと言う声が聞こえた。はあ…またこういう奴か… 貴族ってのは人を見下したやつしかいないんだろうか?

「あの、職員として言わせてもらいますが、依頼料はちゃんと支払ってくださいね?」

ルルがギクリとした顔になっている。

「王直々の依頼だ、支払いは約束されている」

まあ…自分の目的とはあってるし、支払いも期待できそうだ。

「よし、成立だ」

握手しようと手を出すがエイブラハムは無視して立ち上がる。

「おい!後は任せたぞ」

そう言って部屋を出て行く。

「申し遅れました、私の名はグラント・ベン・マンスールと申します。どうやらエイブラハム卿はこの役に満足いただけていないようですので、少々ご立腹なご様子で…」

「まあいい。移動しよう」

偉そうな奴らやら、面倒な奴が依頼してくることもあるが、情報が自ら俺の元に来てくれるようになったのは、助けた行商人や、依頼で出会った人達が話を広めてくれてるおかげだ、感謝しとこう。

「ええ、そうですね。船の手配は済んでいます、参りましょうか」

「まあいいのか…」

「鈍感なのか、寛大なのか… それではいきましょうか、ルル殿」


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