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32話 遺跡散策

遺跡の内部に入る前に『hello』に地形情報を常時送るように指示を出してドローンを飛ばす。

深い階層までは見れないが、ここの遺跡は浅く広い造りらしい。

「どこまで見えるかな?…」

最上層の階層は全ての部屋に繫がった道が出来ていた、これはもう探索済みか。


遺跡の内部に入る、中は外の寒さを感じないぐらいの暖かさを保っていた。

「ここは墓なんだよな?」

「そうじゃ。ほれ、あっちを見てみろ」

道のあちらこちらに部屋があり、その中に同じ作りの木棺が積まれている。

「どうにも雑だな」

「深い階層に行くほど豪華になって行くんじゃ。浅い階層は身分の低い者が埋葬されていると考えられている」

その小部屋を覗いてみると石版に魔術書に記されていたような文字が書かれている。

「なんて書いてあるんだ?」

「家族の名前とどういう人だったかが書いてあるんじゃ」

「状態が悪いな…」

朽ちた木棺からは小さな頭蓋骨がのぞいている。きっと子供のものだろう。

「まだ守られとるだけマシじゃぞ」

「そうだ。死霊術に利用されて蘇ると二度と死後の世界に行けなくなるらしいからな」

ルルはあまり棺のある部屋には近づきたくないようだ

「ああ…あの悪魔がやったことか…」

「まあ、死霊術は古くからある魔術じゃ。すべからく敬遠されるものでもあるんじゃが」

まあ死体を弄ぶのはよくないことだろうな。でも死霊術から蘇生の魔術は生まれたそうだしな。間違った使い方もあれば、利益のある使い方も出来る。

「力はそういうものだよな…」

そう呟いてそこを後にする。


奥に行く道中、白い光の球体のようなものが通路を通り抜けたのが見える。

「おい!いま何か通らなかったか?」

「おお、今のがウィスプ。まあ、襲ってもこないようじゃ、気にするでない」

その白く光る球体はユラユラと揺れながら道の突き当たりの壁を通り抜けて消えていった。

「しかしお主。すごい驚き様じゃったのぉ?」

レームが髭を撫でながらこちらを見る。

「いや、ただ警戒しただけだ。二人こそ鈍感なんじゃないか?」

「ほぉ〜」

「アル殿は幽霊が怖いのか?」

「ただ動いたものに警戒しただけだと」

「そうか、そうか」

「それにしてはえらく後ずさりしたように見えたが?」

二人は少しほほえみながら、足早に先に進んでいく。

「おい!あまり先に行くな」

そう言うと二人は振り返って、笑っている。笑ってやがる。

「何が面白い!?」

「大声を出すと幽霊が寄ってくるかもしれんぞ?」

「おい!」

その言葉に驚いて駆け寄ってしまう。

「アル殿の弱点を見つけたな」

「そのようじゃのぉ」

「クソっ…お前らの弱点も見つけてやるからな…」


「なあ、この階層だ。ここから右に2つ曲がった先の行き止まり、その先があるぞ」

現在地は地上から3階層降りた場所、あと1階層でこの遺跡は終わりだ。

地上に近い階層は木の棺だったが、階層を追うごとに石棺、装飾がある石棺とだんだんと豪華になっている。

それに現在の階層からは、遺品として貴金属や宝石が大量に見つかるそうだ。

「黄金の淵に磨かれた暮石…」

金持ちの趣味と言った所か。

「ん?この階層は王族の親族や高明な武人が埋葬されておるそうじゃぞ」

「地下に行くほど豪華になるのは意味があるのか?」

「この地下には霊脈がある。まあ地中の魔力の流れがあると言うことじゃ。それに乗れば魂は浄化されると考えられている。今はその流れは途絶えかけているがの」

「浄化…私たちダークエルフの正しい葬いは自然に帰ることだ。こんな欲にまみれた墓に埋まることで魂が浄化されるとはな…」

「自然に帰る?」

「ああ。死に場所を探して、そこに身を置く。そして自然はそれを地に返してくれる」

「魔物に食われてもか?」

「それも自然に帰るということなんだ。長生きする私たちは多くの自然を壊す。だからこそ死は自然に力を与えなければならない」

「自然と共に生きるダークエルフらしい、な」

「ああ。これを人間に強要はできないが、私はこの葬いを良い文化だと思っている」

「栄華の味を知るとこうなるんじゃろうな。かく言うわしも他人事ではないんじゃが。お主の地での葬いはどうなんじゃ?」

「棺に入れて地面に埋めて、天国に行けるように神に祈る。それだけだ。でもその墓地も今あるかは怪しいが」

「世界を壊す戦のせいか?」

「ああ。文化も生活も関係なく破壊された。近くに軍の施設があると言う理由でな」

「どうやら勇者のやつとも違う所から来たようじゃのぉ」

「確かに。いろんな世界が繋がってるのか?よくわからないな…」

「でも、誰かに聞こうにもそれができるやつがおらぬからのぉ」

この世界には過去にも流れ着いた人物が何人かいるそうだ。蒸気機関や時計台などもそういうやつらが持ち込んだらしい。それに錬金術で作られていた金属の生産はまだ多くはないが鉄工所で作らた物もあるそうだ。

これはこの世界よりも進んだ世界から来た、じゃないと思いつかないというか、持ち込めないだろう。

俺も持っている物を残してみようか?いや…やめておこう。銃が戦争で使われれば気分はよくなさそうだ…


「それで。お主のドローン?とやらの調子はどうなんじゃ?」

そう聞かれて、端末の画面を見る。

「少し怪しい所があるな」

レームとルルが画面を覗き込み、その白く映る空洞部を指差す。

「これか?」

「ああ。でも、構造物には見えない。ただの穴だな」

「腸虫かのぉ」

「冬場は地中にいて、夏場に大きい蛾になるっていう虫だったな」

「そうじゃ。よく覚えとるのぉ」

口が六つに裂けた芋虫で、体が牛の腸みたいだから腸虫って名前だそうだ。しかも地中でどんどん大きく成長するとも書かれていた。できれば出会いたくないものだ。

「でも、それにしては大きい空洞なんだよな」

「そうか、なら確認して見るのもいいかもしれないぞ?」

ルルは新しい発見に期待した目になっていた。行く前は何もないと念を押されたが、やっぱり楽しみにしてるみたいだ。

それに壁からかなり近い位置にあるようだし、掘り返してみてもいいだろう。

「だな、魔物もさっぱり出てこないし、これじゃあ収穫なしで帰ることになりそうだ。行ってみよう」

「そうじゃな。でもこれは悪い予感がするぞ?気をつけて行かねばの」

「人を呼んだ方がいいか?」

「そうしようか。じゃあ一度戻ろう」


キャンプに戻り、ゲオルグにレームが話しをつけてくれる。

「そうか」

「それで、人を貸してくれんかの?」

「いいぞ。おい、人を集めてやれ」

「はい!」

そばにいた眼鏡をかけた青年が走って出ていく。

「あいつ。大事な物があるから走るなと言ってるだろ…」

ゲオルグは顔を抑えて呟く。

「あの若いのは新入りかの?」

「骨董品屋の子だ。ずいぶん熱心で感心してるが、人の話しを聞かないせいでいつも何かしでかす。ちゃんと見てやってくれ」

気難しい強面の人に見えたが、責任感あるしっかりした人物みたいだ。


「連れてきました!さあ!行きましょう!」

五人の男を連れてきて、また走り出してしまう。

「おい!運び込みがあるぞ!」

だが、男の一人にそう言われて、走って戻ってくる。

「あ!すみません!!」

「元気だな」

「あいつ興奮してるみたいで。それじゃあ、お三方。先に行きましょうか」

「ああ。行こう」

こうして、謎の洞穴の確認に向かう。まあでかい虫が飛び出してきたりしなければいいな。


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