02話 転生成功?
「クソ、あの悪魔、人の話を最後まで聞けよ!」
光に包まれた後、体の感覚は消えていた、そして今目を覚ましたら目の前は真っ暗、とても閉塞感があり、まるでどこかに閉じ込められているみたいだ。
フルフェイスコンバットヘルメットには、暗視装置が内蔵されていて、端末が思考を読み取って勝手に起動してくれる。
「なんだ?…石か?」
というか、これは棺に入れられてる?
あの強面やけに調子いい奴と思ったが、もしかしてはめられたのか?
とんでもないことに巻き込まれたってことに今更気付き始める。
よく考えれば何故あんなに早く今の状況に対応できた?あいつに何かされたのかもしれない。
いや今はそんな事を考えてる場合じゃない。閉じ込められてそのまま死ぬなんてシャレにならない。
隙間を手で探り、腰に差してあるナイフを隙間に差し込んで少しでも隙間を空けるために動かしてみる。
少しだけ動いた、土の中に埋めてあるわけじゃ無いらしい。
ならばと腕を突っ張って強引に動かす。
「鍛えていたのがこんなところで発揮できるとは、なっ!……」
少し動いているのがわかる、その重い石の蓋をこじ開け、なんとか外に出る。
「今は夜みたいだ…」
疲れで空を見つめると、空は星が輝いている。
「こんなに星が見えるなんてな…」
俺がいた所は常に光化学スモックとやらで常に空気が汚れていたから、夜、綺麗に星が見えるなんてありえないことだった。もしかしてこのガスマスクも付けなくてもいいのかもしれない。
大気の綺麗さに感動していると、何かが近づいてくる音がして身構える。
「見ろ!あいつ、棺から出て来やがった!」
「だからこんな無縁墓所を荒らすなんて嫌だって言ったんだ!」
松明を持っている方はボロボロの鎖帷子にフードを着ている、怯えてるもう一人はしなびた革のコートに腰に剣を刺していた。見るからに怪しいが、話を聞いてみるしかない。
「すまないが、ここはどこなんだ?色々と話を聞きたいんだが」
「ヒッ、喋るアンデットだ!さっさとずらかるぞ!急げ!」
そう叫んで、二人は走って逃げて行ってしまった。
「アンデット…?この世界は本当に俺の知ってる世界じゃないんだな…」
困った。この世界を知ろうにも頼る相手もいない。
「よし…まずはあいつらを追ってみるか」
棺から腰を上げ、痕跡追跡装置を起動する。ヘルメットに内蔵されたカメラアイには足跡や、血痕をスキャンして追跡する事が出来る。あんな焦って逃げていったんだ、追うのは簡単だろう。
「走っていったおかげで足跡もくっきり残っている、追跡できるな…」
少し墓場の様子が気になって振り返ってみる。
「しかしこの墓場…雰囲気が悪いな…本当に何か出てきそうだ…」
子供の頃、爺さんに聞いた、難破船がある近くの海辺に現れては人を海に引きずりこむゴーストの事を思い出して怖くなって、小走りで痕跡を追うことにした。
「墓場から出て少し経ったかな…」
森に囲まれた雰囲気の悪い道を道なりにきたようだ、二人分の足跡しか見つけられないのをみるにあの墓場はもう使われていない場所らしい。自分も道なりに進んでいると、痕跡が森に向けて進んでいる。
「どうして森の中に足跡がのびているんだ…そっちに…何かあるんだな?」
暗い森を進む、そうすると木こり小屋のようなものが見え、そこから明かりが漏れていた。そこに近づいてみる。
「なにが!喋るアンデットだ!収穫がないから言い訳してるんだろ、このノロマ共が!!」
「違うんだアニキ!本当にいたんだ!!目が緑に光ってて見たこともない格好してて、そいつは話しかけてきやがったんだよ!」
「てめえら、俺の事をバカにしてるのか!どいつもこいつも!!ふざけてんじゃねえぞ!!!」
中に多分、あの二人とアニキって呼ばれてるやつがいるようだ、どうしたものか…今出ていったりしたら本当に切りつけられそうだな…いや…
『ガシャン!』
しまった、完全に目があった、ドアの近くで話を聞いていたせいで完全に見られた。
「な!なんだテメェは!!」
「どうした!アニキ!ひっ!」
「こ、こいつだ!!喋るアンデット!」
ドアを蹴り開けて飛び出してきた奴らはさっきの奴らだ、三人とも警戒した態度で完全に戦闘体制に入っている。
「待て、俺はアンデットじゃない!話を聞け」
皮鎧に金属のチェストプレートを付けた大柄の男は腰に下げていたスパイククラブを手に持ち、残りの二人も剣とナイフを抜く。
まずいと思い、こっちも右腰のホルスターに手を掛ける。
「おい!武器を下ろせ!」
「ふざけんなよ!このバケモノが、俺はイラついてんだ!ぶっ殺してやる!!!」
クラブを振りかざして走ってくる。
「クソ、いきなり面倒なことになった…」