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28話 人狼

『ファイアァァァボールゥウウウ!!』

人狼が手に握った杖から火球を放つ、だがガスの影響で目がやられて狙いが定まらないのか、苛立った様子を見せて手に持った杖をへし折る。

『ジャマダァアアアア!!!

苛立ちのせいで段々と人間らしい二足歩行から四つ足で歩くようになり、舌を出して荒い鼻息でこちらを見据える。

『コロスゥゥゥゥ…』

殺意のこもった言葉を吐き出してこちらに向けて突進して来る。

「来るぞ!」

『ライトニングエンチャント』

ルルが放った雷の矢が体に刺さるがもろともせずに煙を切り裂き、鋭い爪で攻撃を繰り出して来る。

ショットガンを撃ち大きくよろめかせるが、もう一度こちらに向き直して何度も爪を振り下ろす。

『アアアアア!!ドウシタァア!!!!』

目で相手を探すのをやめて、鼻や耳で相手を見つけている。的確な攻撃のおかげで避けるのに精一杯だ。

散弾は当たっているがイマイチ効いてるかわからない、ルルの矢も動きを止めるだけでまた暴れ出すだけだ。

『アアアア!!!!コロスゥウウウ、ウォオオオオ!!』

爪に炎を纏わせ切り裂こうと迫って来る、だが焚き火に足が触れた瞬間大きく怯み雄叫びをあげる。

「火だ!!」

「ああ、見ていたぞ!」

『フレイムエンチャント!』 

炎の矢を放ち、命中すると狼男の体が燃え上がり、地面にへたりこむ。

『ウガァアアア!!ジャクシャガァァァ!!!』

燃えた体のまま立ち上がり、ルルを標的に変えて突進する。

「こっちも火は撃てる」

ドラゴンブレス弾を装填して背中に放つ。

『アアアア!アツィイイイイ!!ヤケルゥウウウ…ウウウウ!!』

「こんなお遊びの弾が使えるとはな」

火を消そうと体をよじるが、もう一度撃ち、消えた炎をもう一度燃え上がらせる。

『コロス、コロス、コロスウウウウウ!!!』

引き金に指をかけるが、もがき苦しむ姿を見て必要ないと判断する。

『コロス、コロス…ジャクシャ…コロス……』

リボルバーを抜いて、地面に伏した頭に弾丸を撃とうとしたその時。

『コロスゥウウウウウウウァアアアアアアア!!!!』

けたたましい雄叫びをあげて立ち上がり、剛腕を振るう。その一撃は俺の胴体のプレートを切り裂く。

回避を使って大きく後退しながら、ショットガンから火を吹く弾を撃つ。回避が一瞬でも遅れたら胴体は輪切りにされてただろう。

『ヨワイ!!ヨワイホノオダァアア!!』

体を燃やしたまま突進を繰り返す。

ルルの放った矢で体に着いた火は勢いを増すがそれでも止まることがない。

「クソッ!」

フラッシュバンを足元に転がして、閃光と炸裂音で怯ませる。

回避しながら地面に転がる酒瓶を手に取り顔に投げつける、ルルがそれに合わせて火の矢を放つ。

『ガアアアア!ジャクシャガ!!!!』

顔に火が移り、少しの間燃える。その隙にレミントンMSRを手元に出し、ベルトポーチに入っていた弾丸を薬室に装填して、顔の火を消そうと左右に振るその頭に狙いをつける。

『ウガァアアアア!!』

弾丸は頭蓋骨を貫通して脳漿を炸裂させる。

「死んだな…」

「アル殿!怪我はないか?」

「大丈夫、プレートが裂かれたぐらいだ」

「そうか、よかった。人狼(ウルフへジン)相手に怪我もなく勝てるなんて、戦士の方が向いてるかもな?」

「遠慮しとく、あいつとの接近戦は危険だ…」

「確かにな。恐ろしい相手だった…」

「ひどい死に様だが…」

「アル殿、同じ類の相手と思って容赦しちゃダメだ」

「そうだな。その通りだ…」

容赦してリボルバーを抜いてしまったせいで反撃された。

「反省するよ。危うく命をなくすところだった」

「でも相手の狙いを押し付けてしまったな、すまない」

「回避が使える俺が適任だと思っただけだ。さあ、小屋の中も見てみよう、何かあるかもしれない」


雑な造りの小屋に入る。中は家と言うよりも倉庫に近い様子で、盗品であろうものが所狭しと置かれていた。その中にはルルが持っていた荷物入れもあった。

「ルル、お前のもここにあるぞ」

「ああ!戻ってきてよかった」

二人で部屋の中を探索していると、奥に書斎を見つける。そこは黒い墨を塗りつけられた頭蓋骨が並べられ、そこの机の上に怪しげな黒い包帯で巻かれた本を見つける。

「これは?…」

「ん?おい!その本は読まない方がいい!」

「何故だ?」

「それは多分呪術書だ。その本の内容を読むと魔に魅入られるらしい」

「と言うことは、これを読んで狼男になったってことか?」

「分からない、それを読めるのは魔女や呪術師だ。でも、その本の内容次第ではあり得る話だな」

「魔女ねぇ…」

「心当たりがあるのか?」

「有るも何も、今の住んでる所は魔女の家だからな」

「へ?」

「そういえば言ってなかったな。この本はその人に見せてみよう」

「ああ…」

「さて、ここはどうすればいいんだか」

「残す価値のない場所だ、街に戻って伝えれば取り壊されるだろうな」

「そのことだよ」

「ああ、面倒だ…」

「そこに並べられた骨でも一応は待ってる奴がいるだろうし、送り届けないといけないからな…」

「てことはやっぱり俺がいねえと困るってことだよな?」

開けられた扉に見覚えのある男が笑いながら立っていた。

「ケビン!もう動いていいのか?」

「ああ、あんたの薬が効いてあの後すぐに動けるようになった。そんで追いかけてきたってわけよ。やっぱ俺は仕事熱心だねぇ。そんでだ、あんたらお待ちかねの馬車は通りかかった奴を引き止めて話をつけたぜ。いや〜優秀でしょ?」

「アル殿、そのやっぱりあれだな…」

「まあ、優秀なのは認めるよ…」

「おい、あんたら、やっぱり倒してくれたんだな。へっ、ざまあみろってんだ。そうだ、いいものがある所を知ってるぜ」

捕まえた盗賊が縛られながら歩いてこっちに来る。

「お前!勝手に歩き回んじゃねえ!」

「何もしやしねえよ。あんたらに礼って奴だ、ほらその床の下に入ってるぜ。その床板を押してみろ」

「お前なぁ…」

「ここだな?」

「ああ、浮いた方を引いて見ろ」

その板を剥がすと中に木箱を見つける。その箱を開けると中には金貨が詰まっていた。

「盗品の金ってことだな?」

「冒険者ってのはそれをポケットにしまう仕事だろ?」

「いい仕事だろ?」

そう言いながらカバンにしまう。

「俺も危険がなきゃいつでもやるんだが」

「まあ無抵抗な奴から奪う方が楽だよな?」

「そう言うことだ」

「アル殿も同調する必要ないだろ…」

「でもお前は捕まっちまったわけだ」

「もう腹はくくってる」


荷物をまとめて、積み込みを終えて街まで戻る馬車が進み始める。

「ルル、あのジジイ達の骨はどうするんだ?」

「困った、置いてくればよかったかも」

「まあ、教会に頼めばなんとかしてくれるだろ」

「そうだな。とことん迷惑な奴だ」

「死に様は残念だったがな」

「あいつらも焼かれて殺されたのか?」

「そうだ。お前のお仲間も焼かれたけどな」

「イカれてるな。そこにいなくてよかったぜ」

「あいつ、何者なんだ?」

「魔術師のくせに呪術に傾倒して追い出されたらしいってこと以外知らねえよ。あいつの顔のやけどをいじった奴は人間とは思えねぇ死に様だったから、だれも過去を聞いたりしなかったんだよ」

「人肉食もいつもやってたか?」

「ああ。負けた奴、命乞いした奴は弱者として肉にされてた。あんたみたいな亜人種は問答無用だ」

「罰当たりな奴だ、理性ある種族とは思えない!」

ルルが苛立った声で話す。まあ、その通りだ。人狼になると理性が崩壊しだすとは言ってもあいつはそれを抑え込んでいたということは理性はしっかり持ってる。あいつの思想がイカれていた、そしてその思想を実践したってことだ。この骨の量でどれだけやったかが分かる、それが間違った事だということも。

「はあ…やっぱりこっちも嫌いだ」



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