27話 炎と煙
前回の襲撃場所に向かい、物が盗られている事を確認し、ニコクリス平原にあると言う根城に向かう道中…
「お人よしだな、アル殿」
ルルがしたり顔でそんな事を言って来る。でも腹立たしい奴をわざわざ助けに行くほど聖人でもヒーローでもない。確かに結果的に助けに行くことになってるが、これからも同じ事を繰り返させる前に早い事終わらせるべきだと思っただけだ。
「違う、また襲させない為だ」
「そうか、そうだよな。あいつらを助ける為でもケビンの仇を討つ為でもないか」
「はあ… 確かにケビンは気の毒だが、あのジジイを助けてやるのは不本意だ」
「助けるんだな?」
「まあな」
「置いていけばいいのに。そうじゃないか?」
「人間はお前らより寛容だって所を見せてやる」
「フッ、素直じゃないな!」
完全に遊ばれてる。何も言えないのが残念だが…
「まあ、ついて来るお前も大概だろ?」
「あなたの私兵になったんだ、敵地に向かう主人を置いていくのは出来ないぞ」
「そうか、それは助かる。ありがとう」
「素直じゃないか…」
「こういう事は言うようにしてる。いつ死なれるかわからんしな」
「不吉な事を言うな」
「死ぬのはいつも突然だ、死んでから言いたかったことがあるのは残念だ。墓の前で言っても意味ないからな」
俺自身死んでみてわかる、言いたい事がある奴が思ったよりいるって事に気づいた、今更な話だが。
「誰か失ったのか?」
前線にいた頃はくだらない話をして笑いあってた奴が気付いたら死んでた、なんて事はよくあった。その後に後悔するのがいつもだ。
「まあな。もう忘れろ」
「また聞かせて貰うからな?私も気持ちはわかるから」
「ああ…そうだったな…」
そうか、両親に兄弟を亡くしてるんだったか…
「そうだぞ。よし、もう無駄話はやめよう。この辺りだ、歩いていこう」
「了解」
「ああ、あれか…騒がしいな」
霜が降りた平原に火を焚いているのか煙が立ち上り、丸太の囲いの塀にログハウスが一つ。見張り台も一つしかないとても簡素な砦、今の俺でも全部壊すのは簡単と思えるぐらいの雑な建物だ。
「これは誰の物でもないんだよな?」
「そうだ、昔の戦争で使われたわけでもない。破壊工作の罪にも当たらないはずだ」
「はあ…全部壊して終わりなら楽だが」
「中に捕まった奴がいると壊せない、か」
「そう言う事だ」
さて、一度空から見てみよう。
「何を飛ばした!?」
「空から奴らを見てみるんだよ。斥候の仕事だ」
「……アル殿は謎が多いな…そんな道具見た事ない、それに武器も…」
ドローンを飛ばして、拠点の上から偵察する。
盗賊達が火を取り囲んで…人を火に放り込んで…
「おいおい…」
「どうしたんだ?」
「急いだ方が良さそうだ、バーベキューパーティーがもう始まってる」
「どういう意味?ここからだと見えないんだ」
「言った通りだ、ジジイとその御一行が焼かれて食われてる」
「そんな…人肉食なんて禁忌も禁忌だぞ!?」
「本当にイかれてる、切羽詰まってるなら理解はできるが…あいつらはそれを楽しんでる」
火に人を焚べて、それを笑いながら見て酒を飲むなんて…
盗賊の中の大男が抵抗するダークエルフの髪の毛を掴んで持ち上げ、火に投げ入れる。同じ様に何人も繰り返す。
「ああ…」
何度も何度も夢に出てくるあの光景… 核が落ちた場所で焼けた死体の山にかろうじて生き残った人達が俺のスーツとヘルメット、水筒を剥ぎ取ろうと何人も迫ってきたあの光景。それをどうしても思い出してしまう…
「アル殿…」
ルルが俺の肩に手を置いて声をかける。
「辛そうだな…」
「悪い…」
「謝らなくていい。一度戻るか?全員は助けられないんだ」
「いや…攻撃の隙は今だ」
「出来るのか?」
「少し心が乱れたが問題ない。さあ!パーティの邪魔をしてやろう」
「ああ…」
無理に元気を出してるな…
「それで、どうするんだ?」
「単純だ、こいつを撃つ」
M320と催涙弾、これで制圧しよう。
「これなら戦意喪失させられる。よしこれをつけて」
ガスマスクを手渡す。
「これをつければいいのか?」
「ああ。服の隙間をなくして素肌を晒すな」
「わかった」
「まあ屋外だ、すぐに霧散するが念のためだ。よし、距離も測定できた。いつでも撃てる」
グレネードランチャーの銃口を上に向けて斜めに構える。ルルがいいぞと言い、引き金を引く。
少し遅れて炸裂した音が聞こえる。上空のドローンから送られる映像を確認すると、ガスが広がり始めている。空の薬莢を落とし、次弾を装填する。少しずれていたのを確認したので補正して引き金を引く。
「二人、門から飛び出てくるぞ」
「狙う」
ルルが弓を構えて2本矢を放つ、並んで出てきた男女の盗賊を同時に射抜く。
「命中。いいぞ」
「任せてくれ。中の様子はどうだ?」
砦の内側はガスが広がり、そこにいた者達が取り合うように水の入ったバケツに集っていた。
「中の奴らは水を取り合ってる。もう一発撃ってやろう」
人が集まるところにグレネードランチャーを向けてもう一度放つ。
その場に居た全員がガスを食らって顔を押さえながらうずくまっている。閉まっていた門は内側から逃げ出した二人によって開けられた。
「よし、中を制圧しよう」
「分かった」
M870を装備して砦に向けて歩き出す。
砦に近づくにつれて中から苦しみの声が聞こえる、だがその声はまた違ったものに聞こえた。
「なあ、アル殿。変じゃないか?」
「ああ。これは…」
上空からの映像を見ると、苦しんでいた盗賊の体が燃え上がり苦しみの余りのたうち回っていた。
「ここのボスは本当に頭がおかしいな。仲間を燃やして自分だけ助かろうと思ってるらしい」
「仲間を焼き殺しているのか?」
「みたいだ。まあ、数が減って都合がいい」
門から砦の中に入る。中は煙と焼けた死体が転がる最悪な状態だ。声を上げこちらに話しかけたのは、あり合わせの金属を溶接し威厳だけを出したような鎧に身を包み、似合わない立派な杖を持った火傷で顔が爛れた男、こいつがジェイムズか。
「お前か、これをやったのは!」
「手を上げろ」
「いや、お前は客人だ」
「冗談だろ?それとも状況がわかってないのか?」
「何を言ってるんだ?強者よ」
俺とルルは武器を向けて警戒の態度を取り続けているが、その男はあまりにも無警戒にこちらに手を広げ、こちらをもてなそうと言った態度だった。
「この弱者の肉を喰うか?それともその隣の亜人を調理するか?」
「お前、話が通じてないな」
「何を言っている強者よ。お前はもう私の同胞。試験はもういいだろう、ここに倒れた弱者共を蹂躙した、それでお前がどれだけ強き者かは分かった。さあ同胞よ、その隣の弱者を殺し、その肉を喰らえ!そして私に仕えろ!」
「イカれてる」
向けたリボルバーの引き金を引く。その弾丸は腕を広げた胸に命中する。
「お前、イカれたふりをしてるのか?それとも本当にイカれてるのか?」
「ああ…強者よ。この私も手に掛けるか…それでこそ強者と言うものだ…だが……」
杖を握り再度立ち上がる。立ち上がらせないために銃を撃ち、ルルも番えていた矢を放つがそれは全て炎に焼かれ消える。
「私が…私こそが強者だ…」
その男は体を燃やしながら頭を抱える。するとだんだんと体が大きくなり強靭な筋肉に恐ろしい形相の狼頭の怪物に変化する。だが体の表面は体毛の類は一切なく、黒く炭化した肌をしていた。
『私こそがぁあアアア!強者ァアアアア!!!』
そう吠えて、こちらを鋭い爪で切り裂こうと腕を振るうが間一髪で『軽戦士の回避』を使い距離を取る。
「ウルフへジンか」
『アア!タタカエ!!!』
これがこの男の本性ということか…イカれていた理由が分かったな。
ショットガンを構えて戦闘態勢に入る。狼男と戦うことになるとは思ってなかった




