26話 野盗
「……本当によく喋る御者だな…」
「……仕方ない…」
最近は銃の整備をしながら音楽を聴いているのでロクに話しを聞いてないが、相変わらす御者のケビンは薄い内容の話を大げさに話している。いいところと言えば会話じゃなくて語りな所だろうか…
「そして俺は最速の馬に跨り…」
「おい、5匹、こっちに向かって来てるぞ」
鳥竜に乗った集団が側面からかなりの速度でこちらに向かって来ている。こんな所で野盗か?…
「へへっ、おい!止まりな!!」
「オラオラ!」
投石機を振り回しこちらに投げ飛ばして来る。『矢避けの風』はこういう時に便利だ。
「や、野盗だ。旦那!」
「わかってる。頭を守れ」
御者台に登り、リボルバーを抜いて鳥竜の頭を撃ち抜く。
「クソ!攻撃して来やがった!」
「ぶっ殺してやれ!!」
「オラ!喰らいな!!」
野盗が放った火のついた油壺で馬車の帆に火をつけられる。それに気付いた馬が火を恐れて暴れ出す。
「な、なにしやがる!!俺の馬車に!」
「おい、馬を落ち着かせろ!このままじゃ振り落とされる!」
「残念だなぁ!」
野盗が投げつけた手斧が馬に当たり、嗎を上げて横転する。
横転し投げ出されたが、なんとか受け身を取り、燃え広がる荷車から振り落とされたケビンを引っ張って離れる。
「ルル!大丈夫か!」
「クッ、問題ない!!」
ルルは燃える荷車から抜け出し、弓を構えていた。
野盗達が武器を手に持ちニヤニヤと笑って取り囲んで来る。
「頑丈だな!まだ生きてやがるぜ」
「お前だな?あの化け物を倒したのは。てことはたんまり金を持ってんだろ?全部よこせば楽にしてやるぜ?」
「へへっ、見ろよそいつ。美人じゃねえか、俺が代わりに飼ってやるよ」
「野盗風情が!」
『ライトニングエンチャント!』
雷の矢が盗賊の男を貫き感電させて倒れさせる。
「魔術を使えるのか、このクソアマが!!」
声を荒げる男が剣を振りかぶるがもう一度雷の矢を放ち、的確に命中させる。
「おい、どこ見てんだ?」
迫る盗賊に気付き、『軽戦士の回避』のスキルを使い距離を取って反撃でリボルバーを撃つ。
「くそッ、役立たずどもが!」
倒れるケビンを人質に取ろうと接近するが、体当たりで引き離してソードオフショットガンで頭を吹き飛ばす。
「クソ野郎!!」
「させない!」
斧を持ってこちらに襲いかかって来たが、ルルに背中を射抜かれて姿勢を崩し、とどめに散弾を胴体に撃つ。
「これで全部だな…」
「アル殿!無事か?」
「俺は大丈夫だがケビンが怪我をしてる。あっちに鳥竜から振り落とされた奴がまだ生きてる、奴を逃すな」
「わかった!」
「ケビン、聞こえてるか?」
「ああ、痛ぇ…」
「これでマシになる」
腕に応急薬を注射してポーションを飲ませ、火から離れる。
「助かるぜ…」
「休んでてくれ」
ルルが鳥竜から落ちた若い盗賊を引きずって戻って来る。
「こいつだ。怪我してる」
「よし、尋問しよう」
「おい、痛がるな。彼の質問に答えろ」
そう言って腰を蹴り上げる。
「俺達を狙ってたみたいなことを言ったな?」
「知らねえ」
「そうか、その痛そうな傷をナイフで抉ってやろうか?」
口調を強めるとルルが反応して背中を蹴り、こちらが本気だと分からせる。すると焦りの表情を見せ始めて口を開く。
「わ、わかった、わかった。言ってやる。あの…カモフ村から追い出されたって言うジジイ達がしゃべったんだよ、お前があの化け物蝙蝠を倒して、帰る時に大金を持ってるはずだってな。でもあいつは情報料をよこせとか言いやがったからボスにボコボコにされてたが」
「ああ…そういう事か… ルル、どうする?」
「ここからなら一度村に引き返そう、けが人も居るし。私が鳥竜を引っ張って来る」
「そうしようか」
「なあ、俺をどうするんだ?」
「尋問が終わってないから連れては行くが、その後は知らん」
ケビンと野盗を乗せて、村まで引き返ことになってしまった。どうやらあのジジイが余計なことをしたみたいだ…本当に迷惑な奴だ…
「アル殿。あの老公…いや、あいつらを助けるつもりか?」
「さあ、でも俺が恐れているのはこいつの仲間が助けに来る事だ」
「おい、それなんだが…頼む、俺を捕まえるなら最後まで面倒を見てくれ!ボスに見つかったら確実に拷問されて殺される」
「そんな乱暴な奴なのか?」
「ああ、ボスは弱い奴を徹底的に痛めつける。俺は別の盗賊団だったがあいつに壊滅させられて、きつい試験を受けさせられて仲間に入った。その時同じ試験を受けてた盗賊団の仲間は弱いって理由で嬲り殺された!だから俺も…」
「なら置いていけばよかったな?」
「冗談だよな? ああ…あんたはボスに気に入られそうだ」
「ルル、荷物は置いて来て良かったのか?」
「大丈夫、どうせ着替えぐらいしか入れてないからな。それに大事な物は身につけてる」
「気の毒なのはケビンか…」
「そうだな、あのうるさい奴がくたばってるのが証拠だ」
ケビンはルルの鳥竜に乗せ、縛り上げた盗賊を俺の鳥竜に乗せた。俺の操縦は酷いものだからな、盗賊の状態が余計に悪化しそうだ。
しかしこっちのポーションはすごい。俺の所の応急薬は代謝を急激にあげて傷の治癒速度をあげる物だが、これは一瞬で傷を直す。最上級の物は死んだすぐなら生き返らせてしまうそうだ、残念なのは鎮痛作用がない事か…
実際ケビンの傷はもう治ってる、でも頭打った時に意識が遠のいたみたいで気を失ってるが、まあいつかは気がつくだろう。
問題はこの盗賊をどうするか、それとこいつの親分とその仲間達か…
村に戻り、ケルに野盗に会った事を報告する。
「そうでしたかアルヴィ殿…」
「あのご老公はまた余計な事をしたわけだ」
「アルヴィ殿、これは先にギルドに報告した方がいいのでは?」
「でも待ち伏せされたらまた襲われる。おい、お前らはギルドに目をつけられてるのか?」
「そうだ。何度か冒険者が来て返り討ちにした」
「そうか、なら手配されてそうだな。よし、どこが根城だ?」
「お前本気で盗賊団を潰す気か?まあ俺は構わんが」
「余計なことは言わなくていい。どこにどんな奴がいるか、それを言え」
「わかったよ。あそこのボス、ジェイムズは魔術師だ、炎の魔術を使う。顔が焼け爛れてて、お山の大将気取りの腹が立つ奴だ」
「部下はどのくらいいる?」
「生き残りは14人、全員それなりに特技のある強い奴だな…全員イカた野郎ばっかりだ」
「お前、自分がまともとでも思ってるのか?」
「ハハッ、んな訳ねえだろ。こうやって縛り上げられて剣を向けられてるのが証拠だぜ全く…」
「そうか、ならまだまともだな。自分の事は分かってる、なら何をすればいいか分かるよな?」
「あんたらの欲しい情報なら全部くれてやるよ。どうせ俺は国に捕まってお終いなんだから、それにあのボスは嫌いだしな」
そう言った若い盗賊は場所、相手の能力、どんな事をしているか、それを全て語った。
奴らの根城は野ざらしの急造砦、攻撃はしやすそうだ。
部下は近接戦闘が得意な奴が多いらしい。剣士や、弓使いは先に撃てれば死ぬから問題はない。でも魔術師は面倒だ、あの威力の攻撃は警戒しておかないと…




