24話 雨
「よし集まったな、じゃあ始めよう」
武装したダークエルフ達を集め、暗い洞穴で作戦会議を始める。
「とりあえず、今回の目標を『バット』と呼ぶことにする。作戦のコードネームは…いらないか… じゃあ『バット』、奴にどう対処するかだ」
「夕方からあいつ、いやバットは飛んで来て村を壊しに来る。でも飛んでる奴をどうするんだ?」
「本当は止まってる間に羽を壊して飛べなくするつもりだったが、残念だが飛んでるのを撃ち落とすことになりそうだな」
「なら朝まで待つ?」
「いや悠長に待ってたら、けが人達が死んでしまう。あんたなら撃ち落とせるんだよな?なら今からでもやるべきだ」
けが人の状態は悪い、治療が十分に行き届いてないし、治療ができる奴らは精気を奪われて廃人同然だ。
「そうだな、このまま待つのは良くないな。まあヘリでも攻撃機でも撃ち落とせる代物だ、あの大きい蝙蝠ぐらい簡単に地面に落とせるだろう」
「ヘリ?攻撃機?わからんが、俺達は何をすればいい?」
「『バット』、奴が地に落ちたらそこに矢を撃ちまくってくれ、出来る限りな。あとは臨機応変に当たれって奴だ」
「簡単で助かるぜ」
「よし、お前ら!矢を有る限り集めてこい、ありったけだ!」
「待て、投石機が一台残ってる。あれも持って行こう」
「そりゃ使えるな。じゃあ次は攻撃地点を決めよう。見晴らしが良くて、一方的に攻撃できる場所がいい」
「私がいい場所を知ってる。アル殿、案内しよう」
「仮だがそこに決めよう。あとは奴が来るのを待つ、みんな準備出来次第そこに集まってくれ。あまりブリーフィングに時間をかけれない、もう夕方になる。さあ動き出そう!」
「やってやるぜ!」
「いい士気だ、その調子で勇敢に戦ってくれ」
故郷を取り返す戦いだ、気合が入って当然だろう。俺のやることはここに来る不死身の化け物にとどめを刺すおいしい仕事だ。
「アル殿、ここだ。よく見えるし攻撃もされにくいはずだ」
ルルに案内された場所は、前回偵察に向かった場所よりも村に近い岩場。ここなら視界も良く、狙いやすいし矢も届くはずだ。
「ここはいいな。村に来る奴を真横から見える場所だ」
「アル殿、その…」
「なんだ?」
「ここまでしてきたのにどうして助けてくれるんだ?」
「さあ、怖い魔王に操られてるのかもな」
「どういう意味?」
「俺がこんな風になってるのは、怖い顔の悪魔にやれって言われたからだ。それに、なぜか使命感に駆られてる」
「そうか、そうなのか」
「まあ、お前らの村の現状を見て多少は心が動いたのは事実だ。腹立たしいジジイは居たがな?」
「ハハハハッ あれらは今頃泣きながら逃げ回ってるだろうさ。あなたに聞きたい事が色々とあるんだが、まずは奴を片付けよう。私もできる限りの力を振るうぞ」
M2ブロ−ニングを銃架に取り付けながら気になったことを質問してみる。
「やはり故郷は大事なのか?」
「ん?まあ、多少はな。でも閉鎖的な村だからな…住む者は好きではないが、故郷自体は好きだ」
ダークエルフってのはみんな閉鎖的だってレームに聞いた、それにエルフから迫害されたというのも…閉鎖的になって仕方ないのかもな…
「そうか。くだらない質問だった、気にするな」
俺にはわからない、故郷がもう地図に無い場所になったって聞いた時には何も思わなかったからな…
「どうしたんだ?…」
「気にするな、故郷の事は俺にも思うところがあるってだけだ」
昼間から天気が優れなかったが、夕方に入るとに大雨が降り始める。
もう、村の勇士達は攻撃地点に集まっている、皆が弓と矢筒を持ち、戦う為の装備を着て準備はできていた。
自分もSAMが撃てる携帯式ミサイルを準備し、レーダー照準機をルルに任せることにしていた。
レーダー照準にしたのは低体温の対象を赤外線誘導で命中させるのは不安があるからだった。でもこの天気の悪化でレーダー誘導が難しくなった。
「本当に運が悪いな」
「アル殿、どうした?」
「この天気じゃ、その装置を使ってのミサイル誘導が難しくなった。クソ…赤外線誘導は熱を持つ奴を追尾するんだ、でもあの低い体温の生き物をちゃんと狙ってくれるかわからない」
鱗が振動し熱を持ち始める。『バット』が近くに来ている。どうすればいい?…
「そうか、なら私が炎の矢を射ってやる、それならいけるか?」
「まさか、この雨だぞ?」
「いける。私はこう見えてエンチャントの魔術は得意だ。燃える矢を水の中に射って、魚を焼いたこともある。私を信じてくれ」
そう言うルルの顔は真剣なものだった。この状況で冗談は言ってないんだろう、まだ不安が多いが任せてみよう。
「おい!奴が見えた!!」
斥候が声をあげ、休んでいた勇士達が立ち上がり始める。
「来たな。よし全員、戦闘準備!ルル、任せたぞ」
奴は昨日と同じように大きな羽を動かし空を飛んで村に近づいて来る。
『フレイムエンチャント!』
ルルがそう言葉を発し、その手に矢を形どった炎が弓に番えられる。
「射つぞ!」
「了解した!」
携帯式ミサイルを肩に担ぎ、炎の矢をファインダーでロックオンし放たれた矢に追尾させる。
「着弾!」
ドンと大きな音で『バット』にSAMが命中し、体が煙で包まれる。集まった者、全てがどうなったのかと注視している。
「どうだ?…」
「キィイイイイ!!!」
羽が大きく損壊し、不快な高音を叫びながら空中で姿勢を崩して地面に落ちていく。
「射手!撃て!!!」
そう声をあげた瞬間、周りのダークエルフの勇士達が一斉に矢を放つ。
山なりに放たれた矢が雨のように地面に伏せた『バット』の体に刺さる。
自分も設置していた機関銃について弾丸を連射する。
「効いてる!もっと撃ちまくれ!!」
『バット』は残った羽を頭にかぶせて身を守るが、投石機から放たれた岩石がそこに着弾し、絶叫をあげさせ悶え苦しませる。
絶え間なく降る矢と弾丸、投石機から放たれる岩石に抵抗する力もなくし弱り始める、前回の蜘蛛の時と同じように鱗を握る。するとその鱗は口を開いた竜の様な姿の無反動砲に変形する。
「形は固定じゃないんだな…トリガーはこれか?…」
「グオォオオオオ!!!!」
「しまった、引き金が軽すぎるな…」
やはり咆哮のような音を鳴らし、黒炎を撃ち出す。
狙いをつけずに撃ってしまった火球は螺旋を描いて直上まで飛び、そして真下に落ちる。
「なんでもできるんだな、こいつは…」
「見ろ!なんだあの炎は!」
「すげぇ…」
「アル殿!やったぞ!!」
勇士達は興奮し、喜ぶルルに背中を叩かれる。皆が勝利を喜んでいた。
『バット』は絶命の声も上げずに雨の中、黒い炎に包まれて静かに燃え上がる。
「終わりだ。よかったな村を取り戻せて」
「ありがとう。アル殿」
「よし、俺は回収するものがある。 ほら、お前ら。待ってる奴らに終わったって伝えに行けよ」
さあ、呪われた部位を見つけに行こう…
「うーん、簡単に倒されたか…残念だ」




