20話 群れ
「かかってこい!!ゴブリン共!!!」
ボルドが大声をあげ、誘引のスキルの影響で赤い光を発する。その隙に光学迷彩を起動し屋根に上り銃を構える。
囲いの外から投石をしている連中を見下ろし、そこに機銃掃射を行う。そこの連中は為す術もなく銃弾に倒れ、武器を構え門から雪崩れ込んで来た連中に狙いを変え掃射する。しかしその銃弾が飛ぶ中を狼に乗ったゴブリンが突き進み、ボルドに向かって走っていく。
「門から狼に乗った奴が入ってくるぞ!」
「ゴブリンライダーもいるとは…」
『ファランクス!』
そう唱えると腰を落として盾の守りを固める術を使い、攻撃を受け止めながらハルバードで反撃し、上に乗っていたゴブリンごと切り倒していく。
旋回して再度攻めようとする方に向けて撃つが、素早く動く相手になかなか弾が当たらない。
「外れた、悪いが頼むぞ!」
「任された!」
再度、盾を構えカウンターの姿勢に入る。
走り回りながら槍を突くライダーの攻撃を受け止め、反撃する。それを繰り返しどんどん数を減らしている。
ゴブリンのもう一隊が到着し、その中にはホブゴブリンも含まれていた。
「ホブゴブリンが来た、こっちで釘付けにしておく!」
群の小物は弾丸で倒れていき、ホブゴブリンも動きを止める。ボルドも全てを仕留めきり、門から迫る連中に狙いを変える。
「アルヴィ殿!もう一度爆発を!!」
「わかった、少し待てよ!」
『hello』からM320を取り出し、グレネード弾を装填し狙いをつけて撃つ。ポンという音の後に着弾の炸裂音が響く。
ボルドが隙を見て、飛びかかる連中を払いのけながら、姿勢を崩したホブゴブリンに盾と槍を構え突撃している。
ボルドの背中を追う者を射撃で仕留め、レミントンMSRを取り出してホブゴブリンの頭部を狙撃する。
「効いてるな…」
頭を抑えてへたれこむ。突撃したボルドがそこを狙い槍の一撃でとどめを決める。
「いい援護ですぞ!」
あのデカブツには5.56mm程度の弾では威力不足みたいだ、M2ブローニングを出すべきだったかな…
合流して、互いで状況を確認しあう。
「私は頑丈さだけが売りですので。アルヴィ殿も無事ですな?」
「ああ、怪我はない。そっちはよくあのライダー共を返り討ちにしたな」
「ハハッ、人馬一体の騎兵には程遠い。子供の真似事のようなものですよ、それにアルヴィ殿の足止めがあってこそですぞ」
「なら良かった。でもデカイのには効いてなかったな…こいつの威力じゃないとダメみたいだ」
「奴ら二匹とも飛び道具に耐性を持っているのでしょう。強い個体ですが知恵らしいものは感じなかった。ただこちらに突撃させるだけでアルヴィ殿を探そうともしなかった、指揮官は別の巣にいるでしょうな」
「そうか、なら近くの巣ってのを見つけて潰しに行こう」
「そうですな」
「こっちから来てるな…」
「この先に昔の戦の時に使われていた洞窟がありますな…そこから来ているやもしれません」
「よし、またこの煙であぶり出すか?」
「いえ、空洞の部分も多い、煙も充満せぬでしょう。一つずつ倒していくのが良いかと」
「よし、わかった」
取り回しのいいMP7A1とM870を取り出す。この散弾銃ならスラグ弾も装填できる、これなら強敵にも効果はあるだろう。サブマシンガンの方には消音器を取り付けておこう。
洞窟の入り口にいた見張りを仕留め、悪趣味なポールが飾られた入り口に差し掛かる。
「この中に知恵を持つ上位種がいるでしょうな、気をつけて進みましょう」
「よし、偵察してみよう」
飛行ドローンで内部の状況を確認する。
「中に30はいるな。大きい反応は無い、たぶん全部ゴブリンじゃ無いか?」
「わかるのですか?」
「ああ、これで内側の地形もわかった。中にいる生き物はハイライトしたから、見過ごすことはない」
「おぉ!とても良い偵察技術ですな、導いてくだされ、私が前を行きますぞ」
「よし、行こうか」
洞窟内の横穴は村から盗まれたであろう鶏や豚の死骸が転がり中には人間の死体も混ざっており、ひどい臭気を放っていた。
横穴に潜むゴブリンを一つずつ仕留めて奥に進んで行く。
軍にいた頃のバリスティックシールドを構えたポイントマンとの連携を思い出す。ボルドはどんな攻撃にも怯むことなく、後ろにいる俺を守ってくれる。俺のやることはその負担を減らすためにできるだけ早く敵を仕留めていくことだ。
「かなり倒しましたな。この奥が最後ですかな?」
「ああ、この奥に6匹いる。それで最後だ」
「フラッシュを投げて、炸裂音が聞こえたら突入しよう。それなら反撃を許さないはずだ」
残弾を確認し、足りない弾薬を装填する。
「よし、ピンを抜いて投げてくれ。タイミングは任せる」
「承知した、ここですかな?」
「ああ、合ってる。それを抜いて握って投げ込め」
「よし、行きますぞ!」
「了解」
フラッシュバンを投げ込み、ワンテンポ遅れて炸裂音が響く。
「進め!」
中に偉そうな骨の王冠をかぶったゴブリンが居てそれを優先的に狙う。
他の5匹は閃光に目が眩んであらぬ方向に逃げだすがその背中に散弾を浴びせる。
「クリア」
「仕留めましたな」
「ああ、大したことなかったな」
「あれはシャーマンかウィザード、魔術を使われていては私も危なかった。いい采配でしたぞアルヴィ殿」
「これで全部だな」
「ええ、きっとそうでしょう、しかし…ここに居た分を合わせても80は居ましたな、こんな大群だったとは…」
「逃げ出したくなるのもわかるな。ん?この箱は何だ…」
王冠を付けた奴が座っていた椅子にあったその箱を開けてみると、価値のありそうな宝石や硬貨が詰め込まれていた。
「こういうのは持ち主に返すべきなのか?」
「持ち主がわかる物があるなら、ですが…」
「死んでる奴に返すのは無理ってことか…」
「そういうことが起こるので戦利品は我々の物にしてしまいましょう、危険に身を投じた物への褒美と思えば良いのです」
「そうだな」
「ケビン、村の方はこの倍ぐらいあるぞ」
「そうか、んじゃもっとデカイ荷馬車を引いてくるぜ。待ってろよ、お二人さん」
洞窟の死体を積み込み、村に戻る。
「酷いな…」
屋根から吊り下げられた子供の死体を下ろす、その表情は苦しみに歪んだものだった
「ここで殺された者、故郷を追われた者。こうして突然日常が突然奪われ悲しみを生んでしまう。もしここを守る衛兵が逃げ出すことなく戦えたのなら、もし私がここの衛兵だったならと思うと…」
「全く…あの壁の内側にいるとそんな脅威を一切感じないが…」
ここは危険が多い、だがこうやって外にいなければできない必要な仕事がある。それを守る者が情けないときたものだ…
「もう取り戻せない、この子の命もここで死んだ人達も…」
「やるせないな、でも仇は討った、それが慰めになるといいんだが」
「ええ…」
勇敢な戦士の背中がとても小さく見える、衛兵長という立場だからこその悩みなんだろう。俺自身もその立場ならきっと…いや、そんな事は考えないように逃げてしまうな…
「悪意を持った群に蹂躙された村に人々はこれからも悲しみを背負うんだろう、でもこれから先少しでも改善すれば良いと俺は願うしかない。でもあんたは違うだろ?」
「すまない、こんな偉そうなことを言えた立場じゃないことはわかってる」
「アルヴィ殿、あなたは良き御仁ですな。情けない私の背を押してくださるとは…」
「そうですな、私はそれを改善することができる立場にいる。少しでも良くなるように教訓を生かしていかねばなりませんな」
衛兵長という立場は俺には想像できない、だがその立場なりにできることがあるはずだ。ボルドは情けない衛兵達とは違う、これが小さな希望に繋がればいいとそう俺は思っておこう…




