19話 略奪種族
「ウフッ、おはよ」
「ああ、おはよう」
「腕は?」
「もう、完璧だ」
包帯を取って見せる、もう傷跡しか残ってない、もう痛みも感じない。
「それじゃあ、今日はギルドに行くの?」
「まあ、やることもないしな」
「それじゃあ、これを持って行きなさいな」
「これは?」
「これは魔物が嫌う香を詰めた煙玉、火をつけて炊けば涙を流して許しを請うはずよ」
「使えそうだ」
「活用してね?さあ、朝ご飯にしましょ」
「今日はクロエは居ないか…」
「む。アルヴィ殿…」
顔まで鎧で身を包み、大きな盾にハルバードを持った男、見覚えのある佇まいだな
「ん?もしかして衛兵長か?」
「え、ええ… ですがどうか、この事はあまり公にしないでいただきたい」
「なんでだ?」
「身分を隠してここにいるので、こういう事をしているとあまり知られたくないのです」
「ああ、わかった。それで、どうしてここに?」
「ええ、ここの外れにある小さな村がゴブリンに占領されたそうで、ですがまだ解決してないようですので私が解決に当たろうと」
「はあ、大変だな。俺も同行していいか?」
「む。手伝ってくださると?それは、ありがたい」
「ああ、破壊工作は得意だ」
「いえ、破壊はやめていただきたい」
「冗談だ」
「すみません、どうにも冗談が分からぬ性分でして」
「まあ、うまくやるよ。行こうか」
「アルヴィ殿はレンジャーにスカウトと偵察に向いた職なのですな。私は重装騎士と聖騎士の職を修めております。この盾で守る事は得意なので、頼っていただきたい」
「そうか、注意を引くのも得意か?」
「ええ、誘引のスキルを持っていますので必要ならいつでも使えますぞ」
「そうか、うん…」
いい案を思いついた、この香は早速使わせてもらおう…
「その村に人はもういないか?」
「ええ、無事に逃げた人は今壁の内にいます。まあ、真っ先に駐在していた衛兵が逃げて来ましたが… それで情報が届いたのです」
「情けないな…」
「全く…村の人々の方がたくましいとは…」
どうやら、衛兵は早々に逃げ出して残された人たちはなんとか逃げて来たらしい。この地の衛兵は頼りにならなさそうだな…
「何の用があって、占拠されたんだ?」
「あそこは牧場に芋畑がある土地、それ目当てだと思いますが。相手がゴブリンとなると深く考えての行動とも思えませんな」
「悪戯好きの悪魔か…」
「そんな生易しいものではないですぞ。奴らは子供のような単純さに、残酷さも持ち合わせている」
「確かエルフが悪魔に変化させられた姿なんだよな?」
「そう言い伝えられていますな…ですがもう神性は魔に染まっております。奴らは冷酷な略奪種族、倒すべき相手ですぞ」
「そうだな」
馬車で離れた村の近くに到着する。ここから木の囲いが見えている、数台の見張り台にゴブリンが見える。
「見えますかな?あそこです、あの中に略奪者共が…」
「よし、注意を引いてきてくれ、こいつでまとめて掃射する」
「承知いたした」
M249を取り出し、光学迷彩を起動する。
「いいぞ」
先に進み、大盾にハルバードを叩きつけ注意を引く。気付いた見張りが角笛を鳴らすと小屋の中から子供のような体型の緑色の魔物が大量に現れ、ボルドに向かって走りだす。
そこに向かって機銃掃射を行う。ゴブリンの大群は銃弾の雨に倒れ、弾丸に恐れて出てきた小屋に逃げ込み始める。その小屋ごと弾丸を浴びせる。いくらか貫通した弾に当たっただろう。
「いいですぞ!!」
ボルドがまとわりついた者をなぎ払いながら、逃げる者を追いかける。
「追うな!!!今からそっちに行く!」
「ぬ、承知した!」
村の囲いの内側は血だまりに、人間の体を杭にさした悪趣味なポールが飾られ、逃げ込んで行った小屋には殺された女子供の死体が屋根から吊られている。本当に悪趣味な種族みたいだ…
「あの小屋の中はゴブリンだらけだな」
「ええ」
「それじゃあ、あの煙突からこれを投げ込んでくれ」
「おお、煙で炙り出すのですな。承知した」
窓を自分達で塞いでいる、煙の逃げ道を自分で塞いでるんだ出てくるのは表の玄関だけ。そこが見える場所に陣取ろう。
見張り台に上り軽機関銃を構え、手を振りゴーサインを出す。
屋根に登ったボルドが、煙突に煙玉を投げ込み盾で蓋をする。
「来たぞ!」
扉を開け、中にいた連中が顔を押さえながら飛び出してくる。
機銃掃射で逃げ出す連中を薙ぎ払って行く
門の方に逃げた奴は仕掛けておいたレーザーマインに引っかかって爆発に巻き込まれている。
「あれはなんだ!?」
中から一際大きなゴブリンが出てくる
「ホブゴブリンですぞ!」
銃弾を食らってももろともせずに、転がる仲間の死体をこちらに放り投げてくる。
「効いてないな…」
グレネードのピンを抜き、暴れるホブゴブリンの下に投げる。
下に転がる死体と一緒に炸裂して膝を着いて倒れている、そこにボルドが上から盾で叩きつける。
「ウガァアアア!」
顔を押さえて頭にかかった衝撃の苦しみで地面にへたり込むその首に、ハルバードを突き刺しとどめを刺さそうとするが、腕で払いのけられる。
「銃が効かないなら、これを使うか…」
見張り台から飛び降り、蜘蛛の牙を取り出し接近する。
「こっちだ!!かかってこい!!」
盾を鳴らして注意を引いてくれた。よし、いけるぞ…
倒れた膝に牙を突き立てる、すると体を痙攣させて地面に転がる。その腹にハルバードを突き立ててとどめの一撃を入れる。
「これで全部か?」
「お怪我はないですか?腕の方は?」
「大丈夫だ。まだいるかもしれない警戒したほうがいい」
正門が開きそこから、増援のゴブリンがなだれ込んでくる。
「飛び道具だ!」
列を組んで投石機を振り、こちらに石を飛ばしてくる。
「こちらに!」
『矢避けの風』のスキルを使い飛び道具を退け、盾の裏に隠れる。
「このまま影まで動きますぞ!」
「クッ、まだいたみたいだな」
「聞いていた数よりも少なかった。もしかすると近くに別の巣があるのかもしれませんな」
「そりゃ面倒だな…」
うまくやれたと思ったが、向こうもまだ数がいたみたいだな。どう切り抜ければいいんだ…
「私が注意を引くというのは?」
「投石を掻い潜って注意を引くのは危険だぞ?」
「私の盾があれば、あの石つぶて程度防げますぞ。あなたは透明化のスキルでいい場所に向かってくだされ、そこからその武器で仕留めてくだされ」
「よし、気をつけろよ」
この作戦は危険な陽動を任せる事になるが、成功すれば逆転できるな…よし動こう…




