01話 魔王に導かれて
「おい、起きろ… おい、起きろ!」
呼ばれた声に従い目を覚ます。
その目の前には仰々しい椅子に座った、黒い6枚の羽に角が生え、恐ろしい形相の悪魔と呼ぶにふさわしい者がいた。
「これは…まさかここが地獄って奴か?」
「ハッハッハッハ! 私は確かに悪魔だが、ここは地獄でも天国でもない、死んだ者が行き着く待合室のような場所だ」
反響して跳ね返るほどの、大声だ。
「と言っても、君の魂を無理やり引きずりこんだ事に、間違いないがな、ハッハッハハハ!」
こいつ、怖い顔だがやけにフレンドリーだ…
「確かに怖い顔だが、それは私が魔王をやっていた悪魔だからだよ、ハッハ!」
あれ?声に出てたか?
「フフ! 我ほどになると、人の心を読むくらい容易いものよ」
「しかし悪魔の魔王?に魂を引きずりこまれて、この場所に居るって言う意味がわからないな。理由があるのか?」
「ハッハ!話が早くて助かるよ、君をここに引きずりこんだ理由だがな、私の元部下の不始末の尻拭いをしてほしいのだよ」
「尻拭い?何をやらかしたんだ?」
「ハッハッ!昔、ウロボロスという部下がいてね、奴は元々ただの大蛇だったんだが龍に憧れ ていてね、私に近づいて祖龍の骨を奪って飲み込んだ、その結果、不死身の龍の仲間入りをしたわけだよ。そこまでは我は許したのだがな。奴には悪い趣味があってね、奴は矮小な種族共にも同じように龍の力を与え、暴れまわらせて楽しむなんて事を始めおってな。あまりに酷く暴れさせるものだから奴を封印してやったんだ。そこまでは良かったんだが、今向こうの世界でまた同じような事が起きているようなんだ。ハハッ!!」
「いまいち話についていけないが、ドラゴンの力ってののせいで、色々起こしてるって事だな。で?尻拭いってのは俺がするのか?俺は死んだはずだ、それじゃどうしようもない」
「ハッハッ!その事だが、どうやら神様連中、いろんな世界を繋いで転生させているらしくてね。我もその転生した奴に殺されてしまったわけだがな。ハッハッハッ!! まあそれはいいんだが。なら我も同じように魂を引っ張って来て、そいつに任せてみようと思ったわけだよ。それでだ、君に龍の力を持つ者共を倒してほしい、どうだろうか?」
「俺がドラゴンを倒すなんて事が出来ると思っているのか?」
「そこは安心したまえ 君に不死身の龍にとどめを刺せる力をやろう。それに、君が持っている武器は… まあ、見た事がないが、それなら攻撃を与えることもできよう。欲しい力があるなら神様連中ほどではないが、我にできる範囲なら用意できるぞ。だがまあ、そんなに期待するなよ?我はただのこの場所に幽閉されている悪魔だからな…その…我を殺しにきた勇者共ほどの力はやれんが、ほら向こう側でうまくやれる程度の力ならくれてやるぞ。どうだ、やってくれるかな?」
「はぁ…やらないって言っても、どうせ無理やり行かされそうだしな。よし、その向こう側でうまくやれるためにの力ってのを聞こうか」
「ハッハ!これはいい、そうだな…よし!向こう側で会話に読み書きができる能力なんかは欲しかろう、うむ欲しかろう。持ち物も向こうに持っていきたいだろ。えーっと…他には…」
「なら消耗品を補充する能力をくれ、それなら向こうでも今まで通り戦えるだろ?」
「ハッハッ!よし、よいだろう。その能力を与えよう。」
そう言って笑いながら近づき俺の頭に手をおいた、そして少し熱のようなものを感じると体に何かが目覚めたような感覚がある。
これがこいつの言ってる能力なのか?…
「ハッハッハ!よし、この鱗を持て。これを持てば君の望む形の武器となろう、そして龍共を倒せ!それではまた夢路にでも現れて、助言でもしてやろう。」
そう言いながら、足元に魔法陣のようなものを描き始める。
「おい、何やってるんだ?もう話は終わりなのか?」
俺の体はその魔法陣からあふれる光に飲まれ始める。
「おい!話を聞けよ!」
「ハッハッハッハッハッハ!!向こうでもうまくやるのだ!死んだらまたその日の目覚めからやり直させてやろう。よしそれではな!我の勇者よ!!」