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18話 療養

「おはよう」

「あら起きたのね、おはよう。で、傷は痛む?」

「いや、もう治りかけだ」

「本当に?見せなさいな」

包帯を取り、傷を見せる。昨日の深い傷はもう治りかけている、こっちの薬の効き目も相当なものらしい。

「あら、もう塞がってるのね。体調は大丈夫?」

「ああ、『hello』で自己診断をかけたが病気にはなってなかった」

「本当に?まあタリスマンの加護よね!フフッ、でも今日はダメよ?」

「何かやることをくれないか?」

「フフフッ、仕事熱心ね?でも、先に朝ご飯を食べましょ?」


「このジャム、甘くて美味しい」

「でしょ?私が作ってるのよ?もっと食べなさいな、スープもお代わりがあるわよ?」

「ああ、もらうよ」

妙に見つめられるな…

「なんだ?顔に何かついてるか?」

「あら、ごめんなさいね。いつもマスクをつけてるからちゃんと素顔を見ておこうと思って、なかなか男前よ?」

「ああ、ありがとう」

「ねえ、何でいつもマスクをつけてるの?」

「俺が居たところは空気が汚れてたからな。それに便利だし、こう見えて快適だしな」

「そう、火山の麓とかかしら?」

「まあ、そんなもんだ」

朝飯を食べ、特にやることもない。なにか無いか聞いてみるか

「ねえ、薪を持って来てくれる?庭に置いてあるから」

「ああ、わかった」


「あの。アル… アルヴィは居ますか?」

「あら、クロエちゃん。アルくんなら今お使いを頼んだところなのよ、すぐに戻って来るわ」

頼まれた薪を置いて、店先に向かう。

「置いて来たぞ。お、クロエか」

「怪我したって聞いた。ごめんなさい。ついて行くべきだった。もう大丈夫なの?」

「ああ、気にするな、俺がしくじって貰った傷だ。もう治りかけだしな」

「そうよ。もう仕事の話をするんだから」

「そう。よかった。」

「でね、二人とも私と一緒に採取のお手伝いをしてみない?」

「うん。私はいいよ。」

「ああ、俺も行く」

「ウフフフッ、なら決まりね!」


安全だという雪山まで歩いて向かい、カゴを背負わされ、完全に山菜採りの格好で山を登る

「で?何を取りに行くんだ?」

「樹液と雪に埋もれてる薬草を取りに行くのよ。見えなくなった川もあるから気をつけてね?」

「クロエ、大丈夫か?」

「うん。心配ない。」


「これか?」

「ええ、そうよ。これで冷気耐性の薬が作れるのよ」

ナイフで木に傷をつけ、瓶を取り付ける。

「さあ、薬草を探しましょ?」

雪に埋もれた草を探りだし、それを根元から引き抜きカゴに入れる、それを繰り返す。

「さあ、だいぶ集まったわね。もう寒いし帰りましょ?」

「ねえ、今日は引っ越し祝いをするつもりなの。クロエちゃんもどう?」

「私はライラの事があるから。」

「ウフフッ。そう、友達思いね?」

「う、うん。」

目当ての薬草と樹液を手に入れた、十分な成果だな。だが、豪華な食事にしたいな。

「先に帰っててくれ。俺はウサギでも撃ってから帰る」

「あら、無理しないでね?あ!それと、内臓も持って帰って来てね」

「ああ」

カゴを渡して、クレートから22口径のウィンチェスターライフルを取り出す。

さっき足跡を見た場所に向かい、追跡を始める。

足跡を追った先に見えた白いウサギに狙いをつける。右腕の痛みで腕が震えるが膝を立てて、そこに銃を置き固定する。

引き金を引き、首に命中させる、狙っていたウサギは倒れる。

「この調子じゃダメだな…」

まだ生きてるウサギの足を持って関節を外し、腹を割いて雪に押し付ける。すると血が雪に染み込み真っ赤になっていく。

内臓を取り出し、袋に入れて帰る準備をする。

「殺してばっかりだな…」

『hello』に入れていた音楽を流しながら、陽が沈み始めてる道を歩いて街まで向かう。

俺自身はそんな熱心に神を信じてるわけじゃないが、何となく地獄に落ちると思ってた、でもこんな所に来てまたこうやって命を奪い続けてる。そうか…ウサギの見た目の龍の使徒が出た時にひどい殺され方をするかもな…


「帰ったぞ」

「あら、綺麗に仕留めたのね。で、あなたにお客さんよ?」

「ん?」

「ああ、レームとマルシアとイザベラ」

「おお、お主、引っ越し祝いってやつじゃよ! わしはうまい酒が呑みたいからのぉ」

「ほれ、イザベラよ。お主こやつに気があるんじゃろ?うまい飯でも作ってやれば、こやつも振り向くかもしれんぞ!」

「そんなんじゃありません!それにもう、意中の方がいるみたいですし」

「本当なのかな?」

「いや、違うぞ」

「本当に?」

「ああ」

「まあ良いではないか。勇者のやつは何人も嫁にとったんじゃぞ?」

「そんなこと知りません」

「まあなんだ。料理をするなら手伝ってくれるか?」

「ええ、任せて。それと、さっきのことはあまり気にしないでね」

「で、俺のどこに惚れたんだ?」

「違う!」

「あらあら、ウフフフッ。彼、この辺りじゃ見ない顔つきだものね?戦いの腕もいいし、それに特別な使命を持ってるし、英雄の素養を持ってると思うわ」

「褒められてるな」

イザベラと料理の準備をする、その間レームとマルシア、レイレイは酒を飲みながら笑っている

「料理もできるのね」

「このぐらいならな」

「そう… あ、腕は大丈夫?」

「ああ、下手なことしないように見ててくれ」


「おお!こりゃうまそうじゃ!」

「フフッ、上手ねお二人さん?」

「イザベラがほとんどやってくれた、上手だったぞ」

「もう…」

「うんうん、アルヴィ君は正直者だね」

「もう、出来上がってるな。よし、俺も今日は飲むぞ」

「そうじゃ、ほれ!座らんか、始めるぞ!」


「え、私より年下なのね…」

「そうか、俺より年上なんだな…」

「ねえ、今まで恋人とかいたの?」

「まあな…」

「どんな人じゃ?」

「徴兵の時に一緒になった奴とな、乗り物の運転が好きだった。俺が別の部隊に入ってから別れたけどな」

「もっと言う事があるじゃろ?」

「どんな女かか、これだな」

『hello』に残ってた写真を見せる。

「ほぉー 黒髪の美人とな…」

「うっ…」

「あら、惜しいわね?」

「まあな、だが部隊の奴の恋人が報復で酷い殺され方をしてな、怖くなって別れた」

「そうなのね… あなたなかなか酷な人生を送ってたのね…」

「まあ、両親戦争で亡くしたって奴はたくさん居たし、それに俺はできた爺さんと婆さんに育てられたお陰でまともなまま生きれたんだ」

「俺の話なんか、暗くなる話ばかりだ。ほら、あの勇者との冒険の話の方が聞きたいぞ」

「うむ、よいぞ!」

いろんな話をしながら、夜が更けていく。今日は心地よく寝れそうだ…



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