15話 仲間
「ほれ、お主。今日は学院に向かうと言ったじゃろ」
「ああ」
そうだ、昨日疲れて戻った後そんな約束をしたんだった…
「で、何の話だ?」
「それはじゃな、マルシアに聞くとよいぞ」
「なんだ…」
学院のマルシアの部屋に入る。
「アルヴィだ、呼ばれてきたぞ」
「ああ!待ってたよ!」
ドタドタと奥から出てきて、椅子を持って座らせてくる。
「それで、何がわかったんだ?」
「うん、それがね面白いんだよ。麻痺の呪いだけかと思っていたらね、魔力を流すと麻痺、いや毒全般を無効にする力を発揮するんだよね、だからこの魔力石を繋いで簡単なお守りにしてみたんだ!これは君の物だからね、はいどうぞ」
「さあ君の魔力を石に込めて!」
「ああ、やってみる」
牙に青い石が飾られ、それに魔力を流してみる、すると牙を触っても痺れないようになる。
「おお。痺れない」
「うん、それでいいね。でも別の人にそれで切りつけたりしたらちゃんと麻痺の力を使えるからね。 それでだ、僕の仮説を聞いて欲しくてね。いいかな?」
「ああ、話してくれ」
「うん。多分だけどね、龍の使徒はこういう呪いの力を持ってるんだと思うんだよね。そして、その力は元々の持つ能力に加えて強くなる力を与えてるんだと思うんだ。まあ確信はないけどね」
「生まれ持った能力に上乗せして便利にするってことか…」
「そしてその部位が、こうして形を残すんだと思うんだ」
「じゃあ、これから出会う奴もこういうのを落とすと?」
「うん、たぶだけどんね。君が持って来てくれれば僕が調べるよ、いや、調べさせてほしいんだ」
別にいいことだろう。発展に貢献ってやつだ。
「ああ、見つけたら持ってくる、また加工してくれ」
「うん。取引成立だね」
部屋を後にし、ギルドに向かうとするか、そう思っていた時、近くの部屋で大きな音が聞こえる。
「あれは、何の音だ?」
「何だろうね。すぐ近くだし、行ってみよう」
ドアを開けて中を見る、すると岩の巨人が部屋に座り、女性が腰を抜かして倒れていた。
「何があったんだい?」
「ゴーレム召喚に手を加えたら、こんなことになって!」
この人前の食堂で会った女だ…
「あ、あら。恥ずかしいところを見せたわね」
「気にするな。しかし、どう片付けるんだ?」
「ええ、困ったわ……コアを破壊したいけど、あそこは狙えないし」
「どこだ?」
「え?胸のところ。体の中央にあるあの魔石を壊せば、ゴーレムは崩れさるわ」
「よし、やってみよう」
腰に差したリボルバーを抜いて、狙いをつける。
「出来るの?」
「多分な」
引き金を引きその石に命中させる、するとその岩の巨人は崩壊していく。
「余計に汚れた気もするが…」
「いいのよ、これは有効活用するから。ありがとうね」
「そうだ、あなたの名前を教えて?私はイザベラ・レイニーよ」
「アルヴィ・アーセナルだ」
「ウフッ、そう。アルヴィね」
「それじゃあ、一件落着だね。僕は授業があるからね、それじゃあね」
「ああ、俺ももう行くよ」
「ええ、またね」
ギルドに着くとクロエに話しかけられる。
「アルヴィ。遅かったね。」
「ん?待ってたのか?」
「私をアルヴィの仲間にしてほしい、から。」
「ライラは?」
「休ませてほしいって。それともう戦ったりはしたくないって。」
「そうか」
「うん。だから私は一人になった、でもアルヴィとなら一緒に戦っていい。そう思った。」
「まあ、いいけど。それと俺はアルでいい、仲間はそう呼んでたからな」
「わかった。アル……アル。」
「何かいい依頼は見つけたか?」
「湖の釣り小屋を巣にしたギルマンの討伐依頼。これなら出来ると思う。」
「よし、それにしよう」
ギルマンの情報を確認してみる。水場に生息する半魚人で冬の時期は水が凍るのを避けて地上に穴を掘って巣を作るらしいが。丁度いい小屋を見つけて巣にしたみたいだ。
今回はM110A1とMASADAを装備しておく。距離的にもちょうどいいだろう。
「ここから見えるの?」
「ああ。昼間は外に出てくるんだろ?なら見えるはずだ」
ヘルメットに内蔵されてるカメラをズームさせて、対岸から索敵する。
「外に4匹いるな、ここからなら撃てるな」
「うん。任せる。」
銃を二脚で固定して、狙撃観測カメラを設置して『hello』に接続する。
まあ、400m以下の距離、外す心配もないだろう。
ヒットのカウント音が鳴り、向こう側の半魚人が倒れていく。
異変に気づいて中から出てきた奴を狙って、引き金を引く。
「もう、終わりじゃないか?」
「確かめに行こう。」
外の6匹が死んだのを確認し、小屋の扉を前にする。
「何もしてないのに終わった。」
「いや、中にまだいるかもしれない」
扉を開けると、汚染を感知して、警告が鳴る。
「うっ、臭い。」
中は、魚や動物の死体が山積みにされ、ひどい臭いを発しているようだ。
「こりゃ、掃除する奴は大変だな」
クロエは顔を覆って外に出て行く。
「中を確認したが、特に問題はなさそうだ」
「うん。このゴミは問題だけど。」
「まあ、持ち主は残念だな」
半魚人の死体を積んでギルドに戻る。
換金してもらおうと裏に回ると、紫のローブに三角の帽子をかぶったいかにも魔女のような見た目の女に話しかけられる。
「ねえ?これ買い取らせて?」
「ああ、いいぞ」
「それじゃあ、脳と内臓を買わせてもらうわ。金貨3枚ね、どう?」
「いいけど、何に使うんだ?」
「錬金に使うのよ。水中呼吸のポーションなんかを作れるの」
「あ、ああ。そういう使い道があるのか…」
「ねえ?こんなに綺麗に倒せるなら、また私に売ってくれないかしら?高く買うわよ?」
「そうだな、頼むよ」
「いいわねぇ、よろしくね。アルヴィ君?」
金貨を渡しながらそう言われる
「ありがとう。ん?俺の名前言ったか?」
「フフッ、私はレイレイ、未来視の魔女よ。あなたの事を見たの、それで知ったの」
「まさか。悪運を見るっていう…」
「あら?知ってたのね。罰当たりな人、フフフッ」
「まさ「まさか、こんな所で会うと思わなかった。て言うのがわかるわ。フフッ」
「なに?本当に未来が見えるんだな…」
「ええ、よろしくね? ねえ、これから少しお話しない?時間はいいかしら?」
「ああ、まあ用事はないが」
「フフッ、それじゃあクロエちゃんの所に行ってきなさいな。私はこれを袋に詰めるからね」
ふぅ…なぜか追い詰められたような気がする……