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14話 暴力

最奥の扉の前に立っていた盗賊を射殺し、扉にかかった閂を消防斧を取り出して破壊する。

扉の横から強襲してきた盗賊の頭に斧を力一杯振り下ろし、もう一人をクロエが仕留める。

二人とも透明で動いてるおかげで向こうの反応が勘に頼ったもので助かる。


二つある扉の奥から女の悲鳴と男が笑う声が聞こえる。

「よし、行こう」

「うん。」

扉の鍵をショットガンで破壊し、中を確認する。

そこはライラの首を絞めながら体を蹂躙しようとしている男と、床に倒れているユリウス、全身アザだらけの女が影に隠れていた。

「クソ、透明野郎!そこにいるんだろ!!一歩でも近づいて見ろ、この嬢ちゃんの首をねじ切ってやるぞ」

そう言いながら、首を絞める力を強める。ライラが苦しみの表情でもがくが、男のその腕はそれを一切許さない。

「おい!姿を見せろ、このまま殺してやってもいいんだぜ!」

その細い首をへし折らんと一層力を込める。

「そうか、そうか」

リボルバーで狙いながら、姿を表す。

「てめえか、俺の城でやかましく暴れやがって」

「ハッ、ネズミの巣の間違いじゃないか?」

「粋がるなよ不気味な野郎が、てめえのお仲間はもう壊しちまったぜ」

そう言ってユリウスを蹴る。

「この嬢ちゃんで興奮をおさめようとしてたら、邪魔しやがって」

「そりゃ悪かったな」

銃を向けているが、男が力を入れるたびにライラが暴れるせいで狙いがつけられない。

「てめえ、今から帰るってなら見逃してやるぜ。まだ、戦うってんならこの嬢ちゃんの首を折って、てめえの首も折る」

「じゃあ、そいつの首を折れよ。そしたら邪魔な壁もなくなる」

「なんだてめえ。仲間じゃねえのか?」

「いつそんなことを言った?俺の案じゃ、今頃お前は死んでた。でもそこの馬鹿のおかげで全部破綻したからな、地獄で詫びてこいって思ってたところだ…」

「ハッハッハ、お前冷たいなぁ!気に入ったぜ、うちの仲間とは大違いだ、冷酷で残忍だ。お前、盗賊の方が向いてるぞ!」

「そりゃどうも、でもな正義の側でお前らみたいなのを殺してる方が楽しいんだよ、それにお前の仲間は背中を向けて逃げて行ったぜ?笑えるよなぁ!」

「フッ、あの無能供にそこまで期待はしてない。だが裏切られたのはムカつくなぁ」

時間を稼ぐ、後は任せるしかない。


「うぐっ…な、何が…」

男の背中から血が流れる、作戦通りだ。

「うっ…クソッまだ…いやがったのか…」

「残念だったな」

「クソが!ほざけ!!!!」

男が起き上がり俺に襲いかかる。そのまま胴体に銃弾を撃つ。だがそれでも止まらず、俺の首を掴んで壁に押し付ける。

「クッ…」

ソードオフショットガンを引き抜き下顎に押し付け、引き金を引く。

炸裂音と共に下顎が砕け散り、血を撒き散らしながら倒れる。

「はあ…クソッなんて力だ…」

「大丈夫?」

クロエに起こしてもらう。

「何も言わなかったのによくわかったな」

「うん。わかった。時間を稼いでること。」


「ライラ。しっかりして。」

「うっ…ごめんなさい…」

そう言ってクロエに抱きついて泣いている。

「なあ、あんたここで何が起きたんだ?」

親玉の死体から見つけた鍵で手錠を開けながら、アザだらけの女に質問する。

「その男の子が連れてこられて、挑発したから、遊ばれながらそいつに首を折られたの… いつものことよ、男は殺されて女は私みたいになるの。その子も同じ…」

「そうか。じゃあもうこの騎士様は死んでるな…」

「蘇生の魔法は使えねえのか?」

「いっ…あっ…使えないです…」

「そうか、まあ妥当な結末か」


中にいた人たちを馬車に乗せ、盗賊の持ち物を漁った後自分たちも帰ることにする。

「あの。なんで手伝ったの?言ってたことは本当?」

「本当だよ、正直に言っただけだ。お前もあいつらが死ぬって思ってただろ?」

「うん…。でも私は助けられると思っていた。」

「俺も最初は少しはできる奴らだと思った、でもあの調子じゃあな…」

「私が仲間になった時から変わらない。いつもライラが仕留めて、勝手なことするなって言って殴るの。止めても意味がない。」

「何か問題があるんだろうな」

「ライラが言ってたこと。騎士の家系だけど、ユリウスは力もなく、素行も悪くて家の中で邪魔者扱いを受けてた。でもライラは魔術に奇跡も使える。それが疎ましかったから暴力で言うことを聞かせてた。」

「そうか…」

「それで家の名前を使って騎士にはなれないから、家に伝わる剣を奪って騎士を名乗りだした。でも本当に登録されてる職業はファイター。」

「私はライラを助けたかった。」

「まあ生きてるだけましだろ、あの騎士様は死んじまったんだから」

「うん。でも…」

「面倒くさいことは考えるな、結局決めるのはあいつだ」

「わざと冷たくしてる?」

「そう見えるか?」

「うん。それか考えないようにしてるのか。」

見透かされたな…でも、これで正解のはずだ、最善手は最初から破綻した。その原因は誰も制してやらなかったことだ、それは俺にも原因がある。

「もう考えないよ俺は。このことは終わりだ、一度きりの仲間だった」

「わかった。でも私はライラを助ける。」

「好きにしろ」

「うん。」


あの後何も話すこともなく、街に戻りギルドに報告し報酬を受け取って終わりになるが、クロエに呼び止められ、ライラの方の面倒を見るからと言って、俺に剣とプレートを渡して家の住所を教えられる。

「はあ…面倒だな…」


教えられた住所に行くと、そこは大きな屋敷があり護衛の門番までいる始末だ。

「あの、話があるんだが?」

「何の用ですか?いや、まてよその剣は…」

「それをどこで?」

「その話をしたくてな」

「わかりました、伝えて来ます」


「こちらへ」

中はいかにも豪邸といった内装で、そこに派手な服を着た男が立っていた。

部屋に通され、席に座り、挨拶をすませる

「それで、その剣を届けに来てくださったのかな?」

「ああ。ここの持ち物なんだろ?」

「ええ。それは王に授けられた剣です、この家の宝なのです。おい、この方に茶でもださんか。私たちは貴族だぞ」

御付きの執事に話しかける。こりゃ、あいつがあんな感じになるのもわかる気がするな…

「それで、どこで手に入れられたのですか?」

「この名前に見覚えがあるだろ?」

プレートを手渡すと顔が濁る。

「ああ、これはこれは。で?どうなったんですか?」

「ユリウスは死んだ。死体はまだギルドにある、後はそっちに任せる」

「そんなことはどうでもいいのです。ライラは?ライラはどうなったんです?」

「生きてるよ。後は自分の目で確認しろ。俺はもう行く」

「お待ちください。ライラはどうなったんです?」

「しくじって盗賊にやられた」

「な!なぜ!貴様、なぜ助けてやらなかった!臆病者が!!」

こいつ…

「それはユリウスが馬鹿をやったのが原因だ。俺は命を助けた」

「あの糞ガキが… 貴族の名を汚しおって…」

「もういいか?あんたと居ると病気がうつりそうだ」

「なにっ!冒険者風情が!! 貴族である私を僻んでいるんだな?」

「だったら、この剣は渡さねえよ。高く売れそうだしな」

「捕らえろ!!この失礼な男を!」

「お前が原因だぞ!あのガキが壊れて、あの妹も壊されたのは。それに気づいてもない父親が俺に当たるなんてお門違いだ」

「なに、あの子は優秀な神官にしてやろうと思っておった。それをあのガキが勝手な真似をしたからだ、そのせいで私の貴族の名が傷ついたんだぞ!!貴様に代価を払ってもらおうか?」

「話にならんな、お前、虚栄に取り憑かれてるな。あのガキもお前によく似てたぞ!」

「黙れ!!早く捕まえろ!」

門番の連中に腕を掴まれ、剣を奪い取られる。


「お辞めください!!」

「ラ、ライラ!ああライラ!」

「お父様、あなたはどうして変わらないのですか?」

「何を言っているんだ、ライラよく戻ったね、さあ父さんの元に!」

「嫌です、あなたは良い父親ではありません!それにその方はたくさん失礼な真似をしたのに助けてくださったのですよ?」

「何を言う。貴族の娘がこの汚しい不気味な格好の男に失礼など!この男の存在自体が失礼なのだ!」

「そうですか。なら私はあなたのことを父親ともう思いません!」

「クッ、あの糞ガキに影響されたか?」

「その原因はお兄様のことを人間扱いしなかったからです!」

「黙れ!あのガキはなこの家の恥さらしなのだよ」

「そうですか。なら私はこの家を出ていきます!」

ライラが門番の腕を叩き、俺を解放させる。

「元気そうだな?」

「いえ… こうなる気がしていましたので…その…失礼に失礼を重ねてしまい本当にごめんなさい」

「ああ、気にするな」

「二人とも。もう行こう。」


結局、剣は持って行かれたが、3人とも止められることもなくあの家を後にできた。

「やっぱり。お人好しだった。」

「ムカついただけだ」

「あの…本当に…ありがうございました」

「もう俺は帰るよ、首を絞められて腕も絞められて、もう疲れた」

「はい…その、名前を聞いていませんでした、教えてくださいますか?」

「アルヴィだ」

「アルヴィ。覚えた。」

「アルヴィさんですね…はい…」

はあ…疲れた…もう帰ろう…

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