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144話 救いの雨?


「雨の匂いだ」

「本当に曇ってきたのぉ。なんとも。呪術とは奇跡の術と背中合わせというが。不思議なことも起こるもんじゃ」

 サラマンダーを見据えれる、大門の前で雨を待っていた。あれからそんなに時間は立っていない。嘘みたいに天気が悪くなって、黒い雲がやってきた。

 手の傷はヘイルリが綺麗に直してくれた。なんなら、骨折して曲がっていた指もまっすぐに直してくれた。

 サラマンダーはどうやら体温の調整がうまくいってないのか、動きがとろく、一歩進んでは伏せて休憩している。だがその一歩で、囲いの外の林に火がついて燃え上がってる。ついでに寄ってたかる下級吸血鬼も。ドラクルは何をやっているのかここからは見えない。だが群れは何かを中心に竜巻のように旋回している。その中央にいるのかもな。


「ならさっさと戦うぞ。まず、雨なんかに頼らなくても俺の槍があればな…」

「ああ!俺もじれちまったよ」

 カールは口を開けば、その槍でどんな敵をどのように倒したかという話ばかりする。それを聞いた戦士たちは、槍持ち吟遊詩人と罵る。武勇伝を語るのは口ではないらしいが。

「お前!俺の話を遮るな!それで。俺はこの槍を投げまくればいいんだな?」

「そうじゃ。何回でもな。わしも最大魔力で魔術を放つ。接近戦をする者らは足元に近づいて、動きを止めるんじゃ。あやつは全身に溶岩をまとっておる。しかし雨で固まったら…」

「おいおい、俺をなんだと思ってる?岩だろうが鱗だろうが関係ない」

「同感ですね」

 戦士たちの士気は高い。というより、都にいる戦士は実力に裏付けされた自信があるようだ。ブレードックのギルドにいる死んだ目をした戦士とは違う。

 これは俺のいた戦場でも同じだったかな。いや、少し違うか。彼らは確かに戦いの経験を自らで積んでいる。自信に満ちた若い将校とは違うか。

「お手並みを拝見させてもらおう。作戦通りにな」

「ああ、わかってるよ!足元を攻撃するんだろ?でも巻き込んでもしらねぇからな」

「違う!足元は戦士どもの仕事じゃ!わしらは空に上がって、背中の弱点にぶち当てるんじゃ。わしが空に上げてやるから、背中を狙え」

 どうやら話を聞いてなかったみたいだ…

「じゃあ、寄ってくるクソ吸血鬼はどうするんだ?」

「それも言ったじゃろうて…」

「私も同じく空にあげてもらいます。ご安心を一匹たりとも近づけさせませんから」

 烏呟、その他に数人いた呪術師が魔除けの結界を張り、すり抜けるのはアルカードが撃ち伏せる。

 俺はもちろん空に上がる組だ。そして、弱ったところを見極めてトドメをさす。

 オズはやはりドラクルを探すと言って聞かない。もはやドラクルの手を借りるまでもない気がするが、オズは毛が逆立つと言って、何か不吉な予感を感じ取っているらしい。

「猟犬、やはりドラクルを味方に入れるべきだと思うぞ」

「わざわざ協力しなくても、勝手に戦い始めるんじゃないか?俺らが戦うってことは、向こうにとってもいい機会のはずだ」

「まずなぜ戦うと思うのか。下級吸血鬼は火によって行く蝿と変わらん」

「じゃあなんでいまだに下級吸血鬼が居座ってる。どこかにあいつがいるんだ。アルカードも近くにいると言っている」

 吸血衝動に駆られてなければ、まともな思考を持ってるはずだ。だが居座っている理由はよくわからない。自分を蘇らせた奴を探すのが目的なら、下級吸血鬼を広範囲に放って探るはずだが。それとも下級吸血鬼が制御不能なのか。

「雨による鎮火で硬質化した体を叩き壊す戦士。上空から投射する破壊力に疑問はない。しかし何かが足りない」

「はっ。猫野郎、俺を舐めてるのか?吸血鬼もまとめて殺してやるよ」

「ほざくな。あのサラマンダーを倒してから言え」

「其方の案じておることは理解できる。奴は分厚い鎧を全身にまとっておる。内側に攻撃を届けるには絶えず攻撃を続けるしかない。しかし我々は十分な戦力があるとは言えない」

 小銃の連射は跳弾の危険があるので使えない。結果的に対物ライフルによる攻撃になった。だが実際どうなるかはわからない。威力が見込めない場合に備えて、対戦車用無反動砲も背中に背負っている。 

 体表が熱を帯びている状態よりも、固まった状態の方が威力は見込めそうだが。内部に到達するかは不明。

 過去の話ではあのサラマンダーは、人類種では太刀打ちできず、北の大地の巨人が倒したという。結果として生贄を千年間捧げることになったという。

 経緯に関しては、伝承でしかないが、巨人が倒せたということは質量のある武器はしっかり効果があるということだ。それをどうにか再現する。でもどうすればいいんだ?

『ふぁぁ〜どうなってるの?』

『すごいです。恐ろしい気配がしてます!』

 ニオとペイルが目覚めたようだ。

「お前らでなんとかできそうか?」

『当たり前でしょう。死の川に運ぶためにいるんだもの』

『どうなんでしょう。毒って効くのかなぁ?でも龍を殺せたんだし…』

『ふん。中途半端なのね』

「喧嘩する前に、ペイル、お前は手してくれるんだな?」

『はい!当然です!何なりと!!』

 よし…サブプランは用意しておないとな…


「ぼさっとするでない。お主ら、配置に着くんじゃ。空に上がる者らも集まらんか!」

「ああ。わかった」

 どうなったとしても、あれを街に近づけてはいけない。


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