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143話 勇士集結


「おった。集まっておるようじゃの」

 広場には武装した戦士たちが集まっている。

「レーム様!こっちはいつでも行ける。それとあんたか!こっちにやってきた龍狩りってのは」

「アルヴィだ。よろしく頼む」

「俺はキルベス。こいつはヘイルリ。そんでこいつが烏呟(うげん)。俺らは義兄弟でな」

 キルベスは人が振えるか疑問なほどの大きな斧を、軽々片手で持ち上げている。その腕は俺の太ももと同じぐらい太い。そして全身に刻まれた秘文字の刺青。いわゆるベルセルクというやつだろう。特殊なキノコを使うことで、人間の肉体の限界を意図的に外す。まあ明らかに体に悪そうだ。

ヘイルリは竿に鎖がついた槌、フレイルを持っている。その服装から見るにどうやら聖職者だ。白い服は上級の聖職者、しかしその槌は明らかに血を流させるための棘が付いている。破戒僧ってやつだろうか。それか吸血鬼狩りか?

 烏呟という人物はシャーマンというやつだろうか。異常な巨体、身長は二メートルはゆうにあり、肉体の筋肉はキルベス以上に発達している。全身をさまざまな動物の皮や鱗で纏っていて、武器は棍棒という出立ち。

 そして今何かをブツブツとつぶやきながら、骨と翼をこすり合わせている。明らかに怪しい雰囲気だ。

 というより、集まってるやつのほとんどが強そうだが、一癖ありそうなのが多い。優れた一芸ある連中なんだろうか。こっちでは見かけない奴らばかりで、異様な雰囲気に包まれている。


「魔法使いはいないのか」

 見た感じ、魔法使いらしい人物はいない。これでは有利に戦いを進めにくそうだ。

「悪いね。魔法使いは出っ張ってる。ほらそっちの学院で色々あったんだろ?嫌疑がどうのって、残ってた魔術師は引っ張られてった」

「烏呟が雨を降らせる準備をしております。雨が降りさえすれば、火の勢いは弱まります。ですが、他の者は遅いですね」

「まだいるのか?」

「そのはずじゃ。まさか慄いて逃げてしもうたかのぉ。そんな臆病なわけないはずじゃが」

「当たり前だろ爺さん。適当言ってやがんな!!こっちは急いで鎧を着てきたんだ、そこの半裸とハゲ共とは違うんだよ」

 登場早々、生意気なやつだ。しかし、映画俳優みたいな見た目の男前が、立派な鎧と大層な剣を背負ってやがる。そいつは俺をじろじろ見つめる。

「あんたか。転生者ってのは。変な格好してる奴が多いっていうが、あんたは特別不気味だな。なんでそんな仮面つけてやがる。まあいいや。俺はカール。カール・ラインメタル。こいつは自慢の槍杖だ。投げつければ大爆発を起こす。まあお前が想像する以上だ。いや、想像なんてできないだろうな」

 こっちは核爆弾を目の当たりにしてきた世代だが、まあごちゃごちゃいうのはやめておこう。

「よろしく頼む。期待してる」

「あんたら、気をつけろ?こいつの仲間はこいつが起こした爆発に巻き込まれて死んだ奴もいるんだぜ」

「お前みたいな全裸のやつは特に危ないだろうな。せいぜい飛んでくる石には気をつけろよおっさん」

「相変わらずの礼儀知らず」

「はっ。お坊ちゃんだねぇ。殺した仲間もお前の父上様が解決してくれたか?」

「おっさんたち、今に見てろよ?お前らより活躍するのは確実だからな」

 そう大声で言うと、周りにいた戦士たちも集まり、誰が功を挙げれるかと言い合いになってしまう。


 その雑踏の中から、突然背中を掴み上げられる。

「手伝え。風の精霊がお前を欲しがっている」

 大男は俺の体を軽々と持ち上げ、即席の祭壇のような物に立たせる。

「何を…おい!何しやがる」

 骨のナイフで手首を切られる。その後烏呟は自分の手首を切る。

「何をしてる!乱暴者!」

 ルルが刀剣を突きつける。

「お前が純粋なエルフであればな。残念ながら風の精霊はお前を欲しがっていない」

 ルルから向けられた剣を体で押し返し、そのまま手を引っ張られ、血を祭壇の器に流し込む。その後、烏呟は自分の血を流し込み、器の中身を混ぜ、それを目の前に差し出す。

「飲め」

「は?」

「精霊はお前の祈りを欲しがっている。お前がここにきてから精霊はお前にしか興味を示さない」

「嫌だな」

「なら雨は降らない。お前はわかるはずだ。勝つために足りないことが多いことを」

「クソ。変なもの入れてないだろうな…」

 なんて色してやがる。鼠色の液体を勢いに任せて飲み込む。

「うげっ…舌がビリビリする…」

「正しい感覚だ。さあ、祭壇で首を垂れて、跪け」

「クソ、なんでそこまでさせられる…」

 仕方ない、祭壇に跪くか。

「そのまま願え。雨が降ることを」

「雨を降らせてくれ。じゃないと焼け死んじまう」

「ふっ…風の精霊に気に入られるわけだ。もういい、祈りは聞き届けられた」

「これでいいのか?本当に降るんだろうな」

「もう少し待っていればわかる」

 戦士たちの喧騒の中、雨雲がくるのを待つとしよう。


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