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138話 敵の敵は味方?


「さて…」

 朝食を終え、昨日からの心配ごとについて口を開く。それを制止するようにオズが口を挟む。

「猟犬よ。昨晩考えたのだが、あの上級吸血鬼とは協力できると思わないか?」

「なぜ?」

「彼奴は感情的ではあったが理性が働いてもいた。ああいう輩は自らの目的のためにはあらゆる手段を使う」

「うーん。協力するとは思えないが」

「彼奴は自らという存在への誇りを穢す者は絶対に許さない。しかし、貴様は言ったな?龍になる前の蛹は龍ではないと。ならば彼奴が殺すべき対象が龍であれば、奴は羽化する時までは終わらない戦いをしなければならない」

「正直言えば、そうやってくれた方がいいがな」

 時間をかければかけるだけ、学長の行動は制限されていくし、あいつに味方する奴らも減っていくはず。

「だろうな。しかし、その戦いは地下深くのだれも立ち寄らない洞窟が戦場になるとは限らない。奴が逃げ込んだ場所次第では、多くのものを巻き込んで繰り広げられるだろう。それを貴様は許せるか?」

「分かってる。でもな……ん?来客だな…」


「お?マルシアか」

「やあ!昨日のこと、学長のこと今日知ったよ。上がっていいかな?」

 馴染みの小柄な男。いつも通りの快活だ。でも表情は少し疲れてるように見える。

「ああ。何か用事か?」

「うん。蟷螂神父の件の一応の報告をね。体の一部を預かっていたよね。それが、どうにもなにか能力のようなものが秘められているわけではないみたいなんだ」

「でもあいつは寄生虫を操ったり、あの鎌は空間を切り裂くような威力だったぞ」

「寄生虫は魔力を流して操っていただけ。鎌の一撃は、ただの身体能力。そう解釈するしかないね。あの鎌には筋肉がぎっしり詰まっていた。ただそれだけだったんだよ」

「そうか…狼男みたいなもんってことか?」

「うん。そうだね。狼男にとても近しいかもしれない。彼ら人狼も強い生命力を持っているし、その学長君は参考にしたかもしれないね」

「なあ、あいつ。キマイラの研究者とか言ってたよな。それもやっぱり…」

「あの後衛兵たちが乗り込んできて、彼の部屋を物色したんだけどね。あそこにいたキマイラと、研究に関する文書とか全部なくなっていたんだ。それで今は学園内でも関係している人を探しで大忙しだ。僕も真夜中に取り調べを受けてね。もうクタクタだよ」

「お疲れ。お茶がちょうど入ったぞ」

「喜んでいたただくよ!」

 双子たちは少し緊張したようすで、椅子を運んできた。きっと学園の先生が来て緊張してるんだろう。

 その姿を見ていたマルシアが緊張を解きほぐすように冗談を言って和ませる。


 そして学園で何があったかの概要を話してくれた。まあ学園内も驚いていると言う人と知らぬ間に姿を消していた人とで別れているようだ。

「して、貴様は学長とはどんな関係だったのだ?」

「うーん。別に何か関係があるかって言われるとなぁ。僕が学園にきた理由は彼の前の学長だからね。でも彼は君が持ち込んでくれた道具には興味を示していてね。僕はまだ確信してないから見せるものはないよって断っていたけど。知らない間に何かされていてもおかしくないよね…」


 学長には学園内外でも協力者がいるだろう。それを洗いだすのには時間がかかる。その間に奴が何をしでかすかわからない。何か手を打たないととは思っているが、まずは首都の方に逃げたからな。いくべき場所はそこだろう。


「何かしようとしてるのはわかるよ。でも君たちだけでどうにかできる話じゃない。やっぱり、国王に嘆願するのがいいと思うな。取り合ってもらえないってことはないと思うな。でも国王は目先の事態に集中するだろうね」

「復活した吸血鬼の王か?」

「うん。王様はあのドラクルを相当憎んでいる。学長の件は後回しになるだろうなぁ」

「それは良くない。ドラクルには是非あの魔術師を追ってもらいたい。猟犬、なんとか説得するのだ。使える手が多い方がいいのは貴様もわかっているはずだ」

「あのなぁ…」

 でもオズの言ってることにも一理あるとは思う。俺たちが追っているという事実だけでは、あいつは動きを止めないだろう。国に追われ、恨みを持つ吸血鬼にも追われる。多方面から追われる立場になればなるほど、大々的な行動は取りずらいようになるというのはわかるんだが。


「どうやって止めればいいんだ…」

「王に会おうではないか。この後に及んで、貴様を拒否はすまいて」

「いきなり行って会えるのか?門前払いされないか?」

 ルルの疑問は当然だ。市民の悩みは王に言うのではなく、ギルドに行くのが常だ。

「交渉の機会を作るだけでいい。戦いの最中であろうと構わない。猟犬、現状貴様だけが龍を殺せるのだ。それは十分な交渉材料になる。あとは王がどれほど寛大かどうかだ。恐ろしく短気であればどうしようもないが、話ができるのであれば、貴様を前に出して戦わせる必要性を理解させられるはずだ」

「まず俺は吸血鬼を味方につけるって案が疑問なんだが」

「それは私を信じろとしか言えない。だが私も同じ魔族だ。ああ言う輩の性質は理解している」

「わかった。まずは吸血鬼の件に対処しよう。交渉するのはやってみるだけだ。無理だって思ったら、わかってるよな」

 仕方ない。だが交渉がうまくいかないと思ったらすぐに攻撃に移る。危険が多いな…イラつかせたりしたら、誰か死ぬぞ…


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