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125話 仲間を探して

「ついてきているか?」

 ヒョウ面がこちらを振り向く。暗闇に目玉が輝いて見える。猫神の子供は闇夜でも目が利くから、吸血鬼狩りをすると村の者が話しているのを聞いたことがあるんだが、この闇で輝く目は吸血鬼にとって悪夢かもしれないな。実際振り向くたびに輝く目は不気味だ。

「大丈夫だ、追っているぞ」

 暗い。ここがどこなのかもわからない。ただ薬の嫌な匂いが染み付いた建物の中を下に下に移動している。

 ビンの中には動物の内臓のような物が水の中を浮かんでいる。なんの生き物の内臓なのかはわからないが、ここで多くの生き物が連れてこられて解体されてきたんだろう。通り抜けた部屋の机には刃物が並んでいたし、血に濡れていた。あれを見てしまうと嫌なことばかり考えてしまう。もしアル殿が切り刻まれていたとしたら、やった奴は必ず見つけてやる。

「ふっ。切り刻まれたところで、猟犬は死なないさ」

「貴様、心を読むな!」

「大声で怒るな。奴は切り刻まれてはいない。あの血は奴の流したものではない。獣の匂いが強い」

「信用できない。お前は犬じゃない」

「犬はあの男か?どうやら猫はお嫌いのようだ」

「ああ。猫は戦いの役には立たない。せいぜい船の守り神だ」

「そう言ってくれるな。撫でれば良い心地。私も毛並みはいい」

 こんな時に奴の毛並みのことなんてどうでもいい。それになぜ奴は楽しそうなんだ?やはり信用できないんじゃないのか?

「ふざけている場合じゃない。わざとここに誘い入れたんじゃないだろうな?裏切ったら容赦しないぞ」

「苛ついているようだがもうすぐだ。冠は近い。それに悪魔は契約がある限り裏切らない」

 だとしてもやはり悪魔は悪魔だ。平然と嘘をつき、嗜虐的、人格破綻者。悪魔を利用しているようで悪魔に利用されているものだ。根本が我々のような種族と相容れない。契約はそれをうまく使い軍師のように操る方法だ。でもアル殿は契約していない。だからいつでも裏切られる。

「契約していないだろう」

「昔の主人との契約はいまだに続いている。なぜなら私は存在し続けているからな。ならば主人の目的を叶えなければならないだろう?」

「忠義面するな」

 どこか鼻につく。私個人の感想だが。


「さて。冠が落ちているな。魔力切れ…いや、霧散させられて殺されたか」

 翼を広げて裏返って横たわる蝙蝠。大きな目玉が一つついていて、宝石の象られた指輪のような大きさの冠を被っている。冠を被った姿は少し可愛げがあるが、血走った目玉が異形の生物であることを物語っている。

 オズが拾い上げると、黒い布切れに姿が変わる。

「これでは目として使っていたこともバレたか?しかし壊されたということはリッチの仕業かな」

「なぜそう言える?」

「魔術師はこういう生き物は簡単に使役者を上書きできる。騎兵を乗せた馬を殺さないのと同じだよ。殺す意味がない。奪えば利益となるが、殺せばそこで終わりだからな。この冠は情報を集めていた。殺されてしまっては情報は完全に失われたわけだ」

「じゃあアル殿がどこに連れられたかわからないと言うことか?」

「そうなる。残念ながら猟犬と違い、跡を追うことも、からくりで位置を割り出すこともできない。しかし猟犬がどこかに行ってしまってはどうしようもないが」

 確かに追跡で彼を超える存在はそういない。でも狩人の端くれ。足跡を追うぐらいはやってみせるさ。


「ほう。どうやら覚えがあるようだな」

 さっぱりわからない。アル殿は地面どころか、後の残っていない石畳の上だろうと、床だろうと足跡を見つけていた。床の上の足跡を見つける時には地面を深く注視していたんだが……真似してみても、暗がりの部屋で微かな足跡を見つけるなんて無理だ、何も見えてこない。

「しかし、わからないようでもある」

「う、うるさい。明かりを早く探せ」

「探したところで何か変わるとは思えないが」

「おい。こっちへ来い」

 オズが明かりを探しに別の部屋へ入っていった。そこで何かを見つけたみたいだ。何を見つけたか確認するために部屋に入る。

「何だこれは?」

 その部屋の床と天井のど真ん中に大穴が空いていた。

「罠なのか?にしては大きな動物が体を捩ったような穴だ」

「そんな大きな怪物がここに?」

「この通り穴。音を立てない大きな生き物。覚えはないか?」

「まさか。蛇?」

 確かに。丸い穴の空き具合からしてもそんな気がするが、穴の大きさは馬がすっぽり落ちてしまうぐらいの大穴だぞ。ありえない大きさだ。

「下がどうなってるか確認しなければ。火をつけてくれ」

「分かった」

 蝋燭に火をつけて、空いた穴を照らす。床が痛んでいる。落ちないように気をつけないと。


「水面のようだな」

 足元にあった道具が落ちるとポシャンと水に落ちる音が聞こえた。

「ふむ。何かいるのか?」

「なにも見えないな……ん?何か水中で光ったぞ」

「炎の輝きのようであった。水中で戦闘を行なっているのか?」

 アル殿、まさかまたあの龍の姿になったのか…?水中にいては溺れてしまうんじゃないか?

「おい。何をしている!」

「アル殿が水中に!このままでは!助けに行かないと」

「魚人でもないのに飛び込んでどうする。まずは水を抜く方法を探そう。それにどうやら龍の姿をとっている。溺死の心配はない」

「本当だな?」

「本当だとも。森で暮らすエルフには水は恐ろしいものかな?龍は海であろうと、天であろうと、火口であろうと、地中であろうとあらゆる場所で生きられるものだ」

「だが…」

「さあ。水を抜いてやるとしよう。北から水を引き入れたはずだ、反対側に水を抜く場所があるだろう」

「アル殿、無事でいてくれ。すぐに助ける」

 水中で何が起きてるかはわからないが、なんとか手助けをしよう。


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