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118話 暗殺者ギルド

 

 オズの知り合いという暗殺者集団とは俺の素性を知っていたようで、難もなく話を聞いてくれるようだ。

 暗殺者という名もありどんな連中かと思っていたが、見た目はそこらの民間人と変わらない服装の獣人だった。だがその獣人は猫のような見た目をしており、線の細い体と足音が出ないという性質、隠密に長けた性質を生かしているんだろう。

 その獣人は名を名乗ることもなく、そしてその見た目、人間の顔と違い、獣人の顔は見分けがつきにくい。

間者に向いた人物だ。


 連れて行かれたのは、街の大衆酒場。そこが暗殺者達の隠れ家、毎日、四六時中人の出入りがあり、同じ顔ぶれで集まっていても違和感がなく、そしてそれが日常の風景として溶け込む。ここでの怪しげな会話も、ただの冗談といえばそれまででしかない。

 猫の獣人はここ以外にも至る所に存在し、魔術師ギルドの居場所には暗殺者ギルドがあると暗殺者ギルドの獣人は語る。


 獣人は慣れた会話で席につき、木の実を燻らせて煙を吸い込む。オズも吐き出された煙を吸い込む。

「それで魔術師共に何を奪われた?」

「珍しい変容生物と言っておこう。それは腐れ魔術師の手に落ちていい代物ではない。日にちにして二日前だ」

 オズは煙をもう一度吸い込む。目をこちらに向けた、俺が話せと言うことか。

 オズは相手の言葉は聞こえないが、俺の言葉は聞こえる。だから俺と交互に話そうと言っていた。こうすることで会話の内容が鮮明に理解できると言っていた。


「そいつがまだ生きてるとは思えないが……だがあんた、英雄の仲間と一緒に山道の通行人を襲っていた大蜘蛛を倒したとか、ダークエルフと協力して大蝙蝠を倒したという話は聞いたよ。そのあんたが来たってことは、その関係だろ?」

「ああ。使徒が魔術師のとこにいる」

「なぜ取り逃したんだ?奪われる前に殺しておけばよかったじゃないか」

「確かにそうだ、でも理由がある」

「君、起こった過去よりも。今魔術師の元に不死身の生物がいると言うことに興味を持つべきじゃないか?」

「確かにな。不死身の研究、奴らの大きな目的の一つ。それが叶うかもしれない材料が手に落ちた、もちろん憂うべきだ。だがここの魔術師ギルドの大きな目的は人工的な生物の製作。二日前と言ったな?なら不死身を研究をしている術師がまだ到着する頃じゃない」

「どこに運び込まれたかわかるか?」

「ブレードックの東、我々が実験棟と呼んでいる場所に運び込まれたことは明らかだな。そこには侵入したこともあるが、周囲を出来損ないの生物が徘徊していて危険だ。解呪ができる奴も連れて行ったほうがいい、侵入を邪魔する術式が至る所にある」

「解呪は私でも出来る。戦闘は行う予定はない。問題なくこなせるか」

 悪魔の作戦は穴があり、その穴は自分に対する根拠のない自信だとレームは言っていた。

 契約する悪魔は、得意分野について聞く、やらせることは問題ないが、それ以外ができるとは限らない。

 ということは、オズは真実を明かす、見た目を変える。そこは得意分野だが、それ以外は信用してはいけないということだ。

「いや。もっと情報がいる」

「懸命だな。周囲を彷徨いているのは屍人、グールと人間の合いの子みたいな怪物。人を見るや否や襲いかかってくる。他には幻惑魔導生物、スフィンクスという名の怪物もいる。奴らは侵入者に質問を与えて、強制的に答えさせるという能力を持っている。対策は必須。我々が一番に警戒している怪物だ」

「なるほどな。グールとスフィンクスか」


 女王蜂の使徒の針、それは麻酔に近い性質がある毒を永遠に分泌する針。加工されてメイルブレイカーとして使えるほどの鋭さを持っている。

 それを人に刺せば、感覚を麻痺させる。マルシアは蜂が本来持つ毒で強い痛みを与えて、この針で痛みを消して助けることで、行動をコントロールしていたと予想していた。あの女王蜂は僕を飴と鞭で支配していたようだ。いかにもな手口だな。

 怪物に見つかった場合は試してみてもいいかもしれない。

 俺の体には、蜘蛛の牙による対毒能力で悪い効果は効かない。だからその毒を口から摂取すれば、鎮静作用がある薬となるし、傷に使えば痛み止めになる。注射器よりも深く刺さるから後が痛そうだが、効果は俺の使ってきた薬よりも格段に強い。

 全く、レームの語る英雄譚やダンジョン探索記とは大違いで、俺が手に入れる力は陰湿な力ばかりだ。足が速くなるとか、大岩を持ち上げられるとかそういう力が欲しいところだが。使徒を作ってる奴を見つけたら頼んでみるか。


「建物の侵入は…言うまでもなさそうだな。いや、我々よりも得意だろう?」

 ドローンで、動作感知しながら常に敵の位置を確かめながら動ける。幸い電波妨害もなさそうだしな。経路も常に監視できる。

「ふむ。ならもっと慎重に協議しようじゃないか。しかし、不死身の研究者がくるまでに事を起こす必要がある、それまでの時間は十分ありそうだ」

「密偵は至る所にいる、来た場合は知らせるように伝えておく」

「魔術師ギルドは人攫いをしてるんだろ?衛兵の調査はないのか?」

「ふん。俺たち亜人種を助けるはずがないだろう。魔術師が狙うのは、密航者、孤児、そういった人種ばかりだ」

 獣人は怒りを露わにし、衛兵への不信感を募らせた原因となった身の内話をした。

 彼らの立場は弱い、みんながボルドのような正義を持っているわけではない。魔術師に奴隷として売るなんていう悪い奴もいる。

 俺もそうなっていたかもしれない。俺も密航者と変わらない、レームに身を保護してもらわなければ、魔術師に捕まっていたという可能性は十分ありえる。

 だが、彼らの事情と俺との事情は違う。

「猟犬、言いたいことはわかる。でもその話を彼らにするのは、適していない」

「わかった、すまなかった」

「いや俺も立場の違いを理解していなかった。知り合いの衛兵長とやらに話してみたらどうだ?俺らも出来る範囲で協力する」

「分かった。行ってみよう」

 ボルドに相談してみよう。


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