表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/145

110話 墓荒らし


「墓石を開けたら、研究者が焼き殺された話をしたよな?」

 二人と顔を突き合わせる。

「ええ。聞いたけど」

「何をするつもりだ?」

「罰当たりな策だが、墓をこじ開けられれば、龍脈を枯らせないかと思って」

「墓石を全部開けたら、罠が発動して、その発動にマナが大量に消費されて、辺りの龍脈の流れが止まるかもってことね。もしかしたら出来るかもね。どうにかして、おねむなニオちゃんに目を覚ましてもらわないと」

「どうやって開けるんだ?」

「爆破か?…」

「そうね。ならあの女王ちゃんにも協力してもらいましょう。怪物が壊したなら文句言われないはずだわ」

 自信ありげだ。なにか考えがあるんだろうか。


「狂乱の呪いをかけてあげる。その間に色々とやっていきましょう」

「まず左側の部屋に誘導する。中は広さはあるから、距離を取りながら、墓に攻撃を当てさせよう」


『あら?逃げるのかしら?巣の中を逃げ回ったって、無駄よ!』

 走って巣に滑り入る。天井にもびっしり居やがる。

 この気色悪い芋虫どもも、まとめて焼き殺してもらおう。

『何!?何これ!?』

 レイレイが呪いをかける。

 女王蜂の体が赤いオーラを纏い、発狂の叫び声をあげて、暴れ回る。

『いや!いや!いやぁ!!』

 自分の子供を踏み潰し、鋭い爪で殺し回り、墓石にも攻撃が何度も当たっている。

 俺たちは部屋の攻撃の届かない場所で狂乱を見届ける。

「残酷かしら?」

「いや…あいつは怪物だ」

 だが、なかなかにひどい光景だ。自分の手で、自分の子供であろう幼虫を踏み潰し、切り刻んでいる。

「よしっ、これで一つ!」

 攻撃が墓を破壊する。

 中から光が漏れて、火炎が墓荒らしの体を焼き尽くす。熱線の射線は、墓を覗く奴に向かってる。姿勢を低くしておけば食らうことはない。


「移動するぞ」

 女王蜂は体を焼かれ悶える。

 その傍、ぐちゃぐちゃになった芋虫をかき分けて、別の部屋に滑り込む。

 

『嫌だ!嫌だ!嫌!!!』

 発狂して、入り口の壁を破壊しながら突っ込んでくる。

 一瞬にして、室内がめちゃくちゃに…恐ろしい力だ。細い手足からあそこまでの力が…

 ブンブンと翅がはためく、それだけで天井に張り付いていた六角形の巣穴が壊れて、中からミンチになった幼虫が落ちてくる。

 的にならないように身をかがめる。

 一撃が、目の前を通り過ぎ、壁に穴を開ける。

 転がって回避して、出口に向かう。

「仕方ない」

 梱包爆弾を投げ込んで室内を爆破する。

 墓荒らしへの罠が発動し、その熱線が、かがめていた頭の上を通り過ぎた。爆薬と、熱線を浴びたはずなのにまだ暴れ続けている。

 狂乱の呪いも恐ろしいが、やはり使徒の耐久力は異常だ。梱包爆弾だぞ、もろに食らえばバラバラになってる。

「なんだか、本当に魔力が枯れてきてる気がする。ならあと少しよ」

 仕方ない。ニオに目覚めてもらわないと、奴に死んでもらうことはできないんだ。

 

『ふぅ…ふぅ…』

「呪いが切れたわね…思ったより抵抗が強いのわね」

「もう一度出来るか?かなりしんどそうだ。無理なら…」

「そんなこと言ってられないわ。とっても大事な二人だもの。助けてあげないと。でも呪いは、かける側もしんどいの。介抱してくれるって約束してね?」

「ああ。もちろんだ」

「どこ触ってもいいからね」

「馬鹿」

「やるわよーっ!」

 レイレイは勢いよく、女王蜂に向かって杖を振るう。

『ふざけるなぁ!ふざけるな!殺してやる!!!』

「じゃあ、もっと応援してあげるわ、よっ!!」

 レイレイは、杖を向け、呪詛の言葉を吐く。反動のせいか、レイレイの身体中に黒い紋様が現れる。

「二度目は大変なのよね。お返しがきちゃった…」

「ありがとう。これで奴を仕留められる。ニオ、聞いてるか?さっさと目を覚ましてくれ」

 鱗が少しずつ熱を取り戻している、大丈夫だ。ニオは必ず目を覚ます。

「アル殿。手伝うぞ」

 レイレイの肩を担いで、別の横穴に入る。


『ああっ!頭が痛い!!何!?なんだっていうの!?私はただ…子供達と一緒に、永遠に生きたかっただけなのに!』

 狂乱して、なりふり構わず追いかけ回してくる。

『ふざけるな。ふざけるな!お前らの都合で、私たちは居場所を失った!』

「だがお前も、お前の都合で人を殺した」

『だまれぇええええ!!!』

 毒針の一撃、それがレイレイの体を狙って飛んでくる。

「危ない!」

 レイレイを抱きしめて、風を巻き起こす。

『お前が悪い!お前が悪い!!』

「違う。俺とお前は生物として、どちらが生き残るかを命懸けで戦って、今証明している」

 きっとニオが目覚めないのなら、俺はこの場で死ぬことになるだろう。でもここで死ぬわけには行かない。

『調子に乗るな!!!』

 大丈夫、攻撃は回避すればいい。どうにかして、あの墓を壊させるんだ。

 墓で眠ってる奴には申し訳ないが、今回ばかりは大目に見てくれ。気持ち悪い芋虫どもの胎盤に沈むより、壊された後、綺麗に直してもらう方がまだマシなはずだ。

「派手に壊してるな」

 墓に梱包爆弾をくっつける。

 レイレイが動けない今、こちらから動かないと遅れをとる。前回の蟷螂の使徒の件で、自分なりに理解した。後手が被害を被る。当たり前のことを再確認した。


 信号を送って爆破する。

「ニオ!頼む!」

『ふあーぁ』

「あくびしてる場合か!」

『あれ?使徒がいるじゃない。しかもぼろぼろになってる』

「お前さんが寝てる間にな!」

 鱗は黒煙を上げて、大型拳銃に姿を変える。

 重たい引き金だ…

 暗い洞穴に轟音が響き渡る。


『死ぬの?いや。まだ子供が育ってないのに…役立たず共!早く私を助けなさい!!早く!早くしなさい!』「のたうち回るな。もう終わりだ」

 踏みつけると、女王蜂の体がぼろぼろと崩れる。

 崩れる体を目と触覚で感じ取って、静かに息を引き取った。

「これか」

 久しぶりに自分で使徒の落とし物を拾った気がする。

 鋭く先端が尖っている。これは毒針か?ずっしりと重たく、手の平に収まらない大きさだ。握るとドロドロと液体が溢れる。

「今回はしっかり戦えたな。被害は…無い……まあ、私たちは無事だ」

「ああ、よかった。でも知りたいことは知れなかった。あの女王が使徒の力を与えていたとは思えない」

「まあ、戦っているうちに、答えもわかるだろう。今日は撤収しよう」

「そうだな」

 ラタトスク、まだどこかで生きてるのか?それとも別の誰かか。答えはまだわからない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ