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109話 虎穴でも怯まず


『本当に迷惑しちゃう。あなたのせいで、私の計画が台無しになっちゃったじゃない。それに二回も!』

「誰だ?」

 銃を向ける。

『私は女王様。いずれ人間をみーんな可愛い蜂に変えてあげるの』

 暗い奥から、他のとは明らかに体の大きさが違う蜂が現れる。

「お前が親玉か」

『そうよ。ここにいる子達は、あの花が集めてくれた人間たち。逃げようとするから羽をもいじゃったけど』

 だから蟻みたいに見えたのか。いや…花が集めてくれた人間?どういうことだ……


「あなた。どうして言葉を喋れるのかしら?」

『だって私は女王様だからよ。一人だった時から、沢山人間を食べて賢くなったの』

 挑発するように口をカチカチ噛み合わせている。

「そうなのね。どこから攫ってきたのかしら?」

『私、美しい声でしょう?みーんなこの声に騙されて立ち止まっちゃうの。あの大輪を咲かせた大樹ができた時には、怯える人達に声をかけてね。それで、あの木がダメになってからは、道ゆく人々に声をかけたの』

「まさか、あの神父もお前が?…」

『そうよ?私は天使だから。それにあの神父は苦しんでいて、神の言葉を伝えるって言ってあげたら、すーぐ騙されちゃった。神様なんて信じる人は馬鹿ばっかりよね』

「下衆が……お前、使徒で間違い無いな?どうやって力を渡してる?」

『教えるわけないじゃない!私はあなたが大嫌いなんですもの。あなたは特別な肉団子にしてあげる。じっくり焼いてあげるから、ねっ!!』

 喋る女王蜂が、采配するように手を広げる。


 巣穴から大量の蜂が襲いかかってくる。

 前までは恐ろしかったろうが、今回は違う。 

 蠍の使徒。奴が落とした水晶は全方位に衝撃波を放つ。それは爆発反応装甲のように受けた衝撃を打ち消し、近接防御兵器のように、範囲を強い衝撃で攻撃する。

 群れで取り囲まれるなんてのは、もう恐れる必要はない。それに、蝙蝠の宝玉のおかげで溜め込んだ魔力で何発も連発できる。そこに新しく学んだ熱風の魔術を上乗せすれば、もっと効果的だ。


 ルルとレイを引き寄せる。

「爆発するぞ!」

 目を合わせた二人は耳を塞ぐ。


 周囲を衝撃波が襲う。砕けた石などが巻き込まれて、恐ろしい殺傷能力を発揮する。近づいた小さい蜂の群れは、バラバラと地面に落ちていく。

『私の羽に傷が!貴様ぁぁぁ!!!』

 翼を広げていたから、もろに爆風を受けたようだ。あれではもう飛べないだろう。

「猫を被った声はやめたのか?随分野太い声だ」

『殺しなさい!!もう容赦なんてしない、生きたまま焼き殺してやる!!!』

 大量の小さな蜂が取り囲んでくる。

「何度やっても同じだ」

 全方位の敵を撃ち落とす。

 

 群れの煙幕をかき分けて、尻をこちらに向けて、突っ込んでくる。

「不恰好ねっ!」

 レイレイは向けていた体を雷で打つ。

 雷が全身を巡り、痺れて体制が崩れ、関節にくらった銃弾と矢でもう動けなくなった。周りの蜂は女王を助けるつもりは全くないようで、ただ影に隠れている。


「おい。ニオ、聞いてるか?」

 反応がない。

「おい!」

 鱗に声をかける。

「何してるの!?早く!」

「反応がない」

『バカね。ここは龍脈よ?魔物の寝床も同然』

「ニオ!」

 ダメだ。ぐっすり眠ってやがる。

『早く回復なさい!』

 女王蜂は隣で首を垂れていた大きな蜂、その頭をしつこく叩き、回復をするように促す。

 働き蜂は怯えた様子を見せて、回復の魔術を使用する。

「回復術師まで…」

 奴め、かなりの数を拉致したな。中には魔術師も含まれているみたいだ。戦う意志がないのは救いだが、裏を返せば、あの体の大きな蜂たちには、人としての意識がまだ残っているということになる。

「元に戻せないのか」

「いや、神父のこともある。冷酷な判断も必要だ」

「クソ…」

「そんなことより、どうしましょうか?こちらが逃げるのはできるけど、向こうを地上に引きずり出さなきゃだめよね?」

「待て…何か方法が…」

 思いついたぞ…


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