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105話 事件の後日

「お主、どうなったか覚えておるかのぉ?」

 心配するレームがそばに立っている。

 ルルとボルド達は皆治療所に運ばれていったのを見届けて、脱力するように倒れてしまった。

 俺の体は無傷だった。いや受けた多少の傷が、何もなかったように治った。流石、不死身の(ドラゴン)様ってところか。

 だがとにかく頭が痛い。何かに頭を握られてるみたいな痛みをずっと感じている。

 立つことさえままならず。また瓦礫に座り込む。

「何をしたかは覚えている。だが…」

「お主は心配するでない。驚きのあまり気を失った兵士がおったが、皆大事にはなっておらん。それよりお主じゃ。体はどうじゃ?」

「体の痛みはない。だが頭が割れるように痛い」

「火線を放ったであろう?それは離れていたわしにも見えておった。あんな熱を顔から出したんじゃ、辛くなって当然じゃろうて。あの娘っ子が言っておった通りじゃな。お主、短い期間に何度も…体が壊れてしまうぞ」

「それは俺が一番理解している。でもな…」

「わかっておる。ぬぅ。克服の術があればいいんじゃが。まずは体を休めよ」

 レームの介抱を受けてなんとか、店まで戻ることができた。


「アルヴィ!」

 レイレイが飛びだしてくる。肩を掴まれて、柔らかい胸に抱き止められる。

「可哀想に…」

 後ろからライラーと双子が続く。

「はよう頭痛に効く薬を持ってくるのじゃ。こんな千鳥足でよくもどってこれたわい」

 足元がふらふらで真っ直ぐ歩くこともできなかった。道すがら何度も吐いてしまった。

 街は混乱の波が広がっていたようで、大通りには野次馬が溢れかえっていて、騎兵がなんとか対応している状況だった。

 教会付近の地域に放たれた虫の影響で、凶暴化した民衆もいて、戸惑った兵士も殺害され、止むを得ず殺害された民もいたとのこと。

 前代未聞の状況だとレームも頭を抱えていた。今回ばかりは恐怖を禁じ得ないと。

 今までの使徒と毛色が違っていた。どういう経緯であの力に目覚めたのかは不明のまま、死なれてしまったのも問題だ。

 まだラタトスクが生きているかもしれないし、それ以外にも同じようなのがいるのかもしれない。今更知る方法が無いのが悔やまれる。

 この混乱は当分続くだろう。

 出来ることはできただろう。だが満点とは到底言えない結末だった。

 ただ、反省の前に、もう体が悲鳴をあげている。力尽きるように眠ってしまった。


「アルヴィ?起きた?」

「あ…」

 喉がカラカラで声が出せない。

「水?」

「はい。アルヴィさん」

 渡された水差しごと口に運ぶ。

「二日寝てたんだよ。喉も渇くよね」

「顔色は元気そう」

「色々世話をしてくれたのか…」

「うふふっ。気にしないで?このくらいはさせてちょうだい」

「レイレイさんは、元気が出るように薬の素材を取りに行くって」

「街はどうなったんだ?」

「うーん。元に戻ろうとしてるかな。みんな現金だよね」

「有耶無耶なままだけど、事件は解決ってことになったって。申し訳ないが、衛兵は次の脅威から街を守るためにも仕方ないって、ボルドさんが」

「だろうな。気になることが多かったが、これで終わりか…」

「レームお爺さんは、灰になった体を持って帰って調べるって。それと今回は何も落とさなかったって言ってたけど。なんのことだろ?」

 使徒は今まで、力の一端を形として残していた。今回はそれがなかったのか。

 虫を吐き出して操ったり、壁を足だけで張り付いたりと、異質だったのに…


「それと、蠍の水晶?あれはレームさんが持っていっちゃった。その…」

「ん?」

「教会にアルヴィさんはいたんですよね?」

「ああ」

「その外で大爆発が起きたって」

「どういうことだ?」

「教会は大丈夫だったのかもだけど、衝撃波みたいなのがドーンって起きて、近くの建物が壊れちゃったらしくて」

 そういえば…翼を広げた時か?…瓦礫を押しのけた時に翼が勝手に持ち上がった気がしたが…

「多分、その時、水晶の力が勝手に発動したんじゃないかって。だから調整するためにも持っていくからって」

「やらかしたみたいだ」

 龍の力は、魔力だからそれが身体中を巡った時に勝手に発動したのかもな。あの水晶は剥き出しの回路だったからな。スイッチが付いてないから、魔力が流れると発動した。とはいえ関係ない人にとっては迷惑な話だ。

「うん。でも衛兵達はみんな助かったってね。虫を封じたのも、倒壊から救ってくれたのも」

「虫に関しては、魔術師がいればもっと良かったんだが。衛兵の中にも術師は何人かいたよな?何やってたんだか」

「宮廷魔術師はやる気なしだもの、安全を守るとか言っちゃって。呆れちゃう。結局ギルドの野良術師たちがレーム様の手伝いしてたみたいだし」

 ライラーは不快感を示している。何か嫌な思い出でもあるんだろうか。

 宮廷魔術師め。世襲制の末路だな。街よりも自分を守ることが優先か。

 新しく宮廷魔術師になるには多額の賄賂を何人にも払わないとなれないときた。金のない魔術師は、国に仕えることすらできない。ギルドが受け皿になってるとはいえ、残念な話だ。

「代々やってるんだったら、仕方ないんじゃない?」

「そうかもな」

「アルヴィ。今日はゆっくりしててね。元気になったからって絶対にギルドとかいっちゃダメだから」

 ナディアに釘を刺された。

「そうよ?今日はゆっくりね」

 今日はそうしよう。だが、まだこれで終わりじゃないというのを何となくだが、感じている。何かが起こる気がしてならない。

 事象に注意しておかないと。今まで後手に回り続けてきたが、調べをつけるための糸口ぐらいは探し始めないと、被害は広がっていくばかりだ。

 鱗は完全にくたびれてるな。艶がなくなってる。俺と同じってわけか。

「ふぅ…」

「よしっ…」

 後ライラー達はなぜ服を脱いでる?…

「何してるんだ?…」

「え?抱き合って魔力を循環させるの。あなたの体にある悪い魔力も私達に渡せば、綺麗になるから。これは依存種の特権ね。もしもそれ以上がしたくなっても…ね?」

「早く寝転がって!」

「朝からか…」

 彼女達との距離感も掴んでいかないと…


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