14.荒野を探索
荒野、見渡す限りの荒野。
レイルたちの周囲には荒れた地面が広がり、植物がほとんど生えていない。
「その、この荒野が格安の土地ってことですか?」
「そうだぜ、この広さで2000eだ! どうだい、破格だろ?」
レイルの所持金でも補えるほどの驚きの安さで、こんな土地が手に入るとは。
しかし、レイルには2つの問題が頭に浮かんでいた。まずはその1つ目から解消することにしよう。
「その、なんでそんなに安いんですか? ちょっと怪しくないですか?」
「ああ、ここはもともとスラムの奴らが勝手にテントを張ったりしてた場所だったんだ。それを王国が追い出してここに何か作ろうとしてたんだが、それが途中で頓挫しちまったらしくてな。管理に困った王国が俺たち不動産組合に押し付けたってわけだ」
「な、なるほど……」
つまり、不動産屋的には維持管理ができないこの場所を押し付けることができるので安いというわけか。
「じゃあ、あともう1つ聞いて良いですか?」
「ん、なんだい? なんでも聞いてくんな」
「この土地って、野菜を育てることができますかね?」
不動産屋のおじさんは一瞬キョトンとした顔をすると、大声で笑い始めた。
「わっはっは! 冒険者さん、もしかして家庭菜園でもするつもりかい? ならプランターでも買った方がよっぽど良いよ! こんな荒れた土地で野菜が育つわけがない!」
レイルは言われる前から、この土地では野菜が育たないだろうというのはなんとなく予想していた。
見渡しても、植物が見当たらないのである。
「その、家庭菜園よりもっと大きい規模のものにチャレンジできないかと思いまして、野菜が育ちやすい土地を探してるんですけど」
「へぇ、冒険者さんが副業で農家かい。Sランクパーティなのに副業なんて必要なのかい?」
「いや、まぁ……」
そりゃ、仕事は必要だろう。元Sランクパーティなのだから。
「でも、農業ができるほどの豊かな土地ってなるとやっぱり格安ってわけにはいかないね」
「まぁそうですよねぇ……」
こんな荒地で農業をするなんてこと可能なのだろうか。
この時、農業の知識がある人間であれば、不可能と見限ってこの土地を諦めただろう。
しかし、この時はレイルの無知が後に功を奏すことになった。
「でも、やっぱり今は安くないと困るので、この土地で農業頑張ってみたいと思います」
「そうかい、正直難しいと思うけど、まぁ土地を買ってくれるってんなら別に文句はないさ!」
レイルはポケットのなけなしの3700eから銀貨2枚を取り出して不動産屋に手渡した。これで彼のポケットはさらに寂しいものへとなってしまった。
「はいよ、確かにいただいた! じゃあ俺はもう王都に帰らなきゃならないから、じゃあな!」
「はい、ありがとうございました!」
レイルとウーガスは不動産屋を見送り、再び荒野を見渡した。
なんもない、マジでなんもない。
「まぁ、広いしとりあえず散策してみるお。もしかしたら何かあるかもしれないお」
「今のところまったく気配はないけどな」
レイルとウーガスは荒野を歩き出した。
2人はキョロキョロとその荒野を注意深く観察しながら歩いた。既に日は沈みかけ、空が赤く染まっている。
「これは!?」
「どうした!? 何かあったのか!?」
「う○こが落ちてるお!」
「いや、正直どうでもいい!」
やがて日は完全に沈み、月明かりで荒野が優しく照らし出された。王都から遠く人工的な光が辺りにないので、綺麗な満点の星空が天に映し出される。
「これは!?」
「どうした!? 今度こそ何かあったのか!?」
「う○こが落ちてるお!」
「なんでう○こばっか見つけるの!? う○こ見つける天才か何かなの!?」
月明かりの下、レイルとウーガスは観察を続けた。
「これは!?」
「いや、もう騙されねえよ! う○こはもういいか……」
レイルが後ろを勢いよく振り返ると、しゃがんだウーガスの足元にあったのはう○こではなかった。
植物だ。トゲの生えた緑色の植物である。
「これって、植物だぞ! やったー植物が生えてる!」
「いや、でもこれサーボだお」
サーボという植物のことはレイルも知っていた。
砂漠や荒野に生えているトゲトゲの植物であり、食べるとマジで不味いらしい。
「サーボは観賞用植物としては人気があるお。もしかしたら商売になるんじゃないかな?」
「いや、でも食べられないんじゃ俺の人々を腹いっぱいにするって目標は達成できないだろ」
せっかく見つけた植物だったが、正直言ってあまり使い物にはならなそうだ。
「じゃあこのまま放置する? せっかく見つけたと思ったのに……」
「確かに、まだ小さいけど成長させれば観賞用として売れるかもしれないな」
「なら、レイル君の生命魔法で育てれば良いお」
レイルは腕を組んで考えた。
「でも、俺はサーボの生態を詳しく知らないから、イレギュラーが起きて変なふうに育つかもしれないぞ?」
「逆に変なふうに育った方がプレミアがつくお」
「そういうもんか?」
「そういうもんだお」
商売を生業としてる人間にこう言われてしまえば、その意見を無下にもできまい。
レイルはその小さなサーボに向かって手をかざした。
「ライフ・コントロール!」
サーボはみるみるうちに成長していった。
しかし、成長していくにつれてその原型を完全に失い、本来の成長ではありえないことが起こった。
「こ、これは……」
レイルがライフ・コントロールで正しく成長させられるほどに熟知している生命体は、人間だけである。
彼は、人間の成長の仕方を無意識にそのサーボに同じように与えてしまったのだ。
レイルとウーガスの前に立つのは、深緑色のサーボと同じ色をした長い髪の少女。
「はじめまして、ご主人様」
「……はい?」




