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キとラの真実   作者: 海野みうみ
8/8

最終章 キラキラ+らぶ

いよいよ最終章となりました。

イカに転生したゴーティは、ジュッティに迎えられ、カーニーとの絆に涙する。

宇宙創世の真実と、地球誕生秘話。

そして幸せな未来のために、ゴーティは旅立つ。


 ゴーティは叫んだ。


 カミナリとしてドンガラガッシャン、一瞬で海に突ッ込んで、水の中でなおもブクブクボコボコ叫び続けた。実際には叫びを上げる口も息も何も持ってはいなかったが、迫り来る水圧への恐怖に、真の暗闇の脅威に、それ以上に自らの落下の勢いに驚愕し、メタクソメッタに叫びまくった。


 …もうダメ!もうダメ!もうダメ!もうダメ!

 なんでなんで!さっきより長いし~!!コワイ、コワイ、コワイ、コワイ、コワイ、コワイ、コワイ !


「キャ~ああああああああ!!」


 ぷりっっっっ!!…


 ゴーティ・イカは、見事孵化を果たしてぷかぷか水中を漂った。生身のイカとして、実に鮮明に世界を見渡せる目を持って生まれていた。


 明るい。あったかい。透き通った明るく穏やかな海にいて、水面はすぐそこだった。今度はサカナの気配はない。自らの十手が透明なぷよぷよなのを確認し、ひと回りふんわり泳いでうふっとして、目ん玉をキョロリと水上に出してみた。ふむ…太陽に、よく晴れた空だ。海底に突っ込んだかと思いきや…あ…!?


 上空を滑空するのは、何ともでっかい翼竜だ…!バッサバッサと、群れを成して飛んでいる。ゴーティは、懐かしさにチャプチャプ水面を飛び跳ねた。



 ここは、故郷の海…かつて、ゴーティは翼竜としてこの海を自由に飛び交い、ツルになってもずっとここで生き、飛び続けた。だが、この星は生きている。時に地は揺れ、海はうねり天は天誅を下す。すべての営みを支配する力は、時と共に生き、変化となる。南の島は動き、海を押し退け、陸に衝突した。あたたかい海は消え、衝突は、乱暴に縫い合わせた傷跡のように膨れ上がって、山々となった。


 それでもツルは飛び続けた。山々はどんどん高くなり、雪が積もって凍り付いた。それでもここで生きたかった。ツルたちは冬と標高との死闘を繰り返し、上昇気流に乗って山々を飛び越えた。アネハヅルのゴーティは、いとしい仲間たちと生きた海に、帰って来た…ん…?



 んんんんんん…ぶうーんんん…ぶぶぶぶぶ…ざぶーん!


「ハーイ、ゴータマちゃん!お誕生日おめでとう!」


 イルカに乗った巨大イカ・ジュッティ師が、巨大な目をぬらぬらと輝かせてやって来た。ベビーイカ・ゴーティは、その勢いに吹ッ飛ばされて海中に沈んだが。


「アラ、ゴメンねベイビー、生きてるぅ?」


 慣れない足でジタバタと再浮上したゴーティは、海水を吐き出そうとしてイルカの鼻に押し上げられていた。イルカというよりはカバのような生き物に乗せられ、かのジュッティと初対面だ。


「ブへッ!!ゲッ!ウガッ、カッ!い、生きてます…ハイ…」


 ジュッティは、足をくねくねよじらせて、おちょぼ口でニッコリ笑った。


「今回のアナタはね、ワタシのベビーとして生まれたのよ、ゴータマちゃん!う~ん、とってもカワイイわ!会いたかった!ワタシがママよ!」


 ぬらぬらぬめぬめ、だっこにほおずり、ぶちゅっとされて目玉が飛び出るゴーティである。


「昔のアナタは誰よりも先に海を出て行っちやったのよね、ホント元気なサカナちゃんだったわね!ウフフ!がんばってツルになって!立派だワ!もう旅立つ決意なのね、その前に来てくれてうれしいわ、ワタシも胸がいっぱい!あぁ、いろいろなことがあったわね。どんな試練の時にもアナタはがんばってくれて、ワタシもここから見ていて感動したワ!あ、このコはね、クジラとイルカの先祖にあたるドリーちゃんよ。カワイイでしょ?」


 ドリーは、キャッと一声鳴き声を上げた。


「なつかしいでしょ!この海も!ここはワタシが創った絶滅動物ランドなの。地上で罪を犯して落ちて来た極悪魂を再利用してね、絶滅を回避する方法をシュミレーションしてるのよ。タニーちゃんには誤解されちゃったけど、ちょっと新鮮なタネを仕入れてここの原人たちにカツを入れたくってね、ウチのコたちが人間で遊んじゃったみたい。でももうしないワ、ゴメンね、後で説明しておいて。ふふ。あ、ここはね、海溝の底をくりぬいて地上を再現したの。箱庭みたいなものだけど、全く独立した生態系よ。地上に昇らせるワケにいかない魂たちの楽園なの。すっごい広いけど、この空の上には実は天井があるし、この先をずっと行くと本物の深海に出ちゃうから、安心なの。下を掘るとマントルが煮えてるしね。どう?ステキでしょ?」


 ベビー・ゴーティはジュッティ・ママにだっこされて、箱庭天国に圧倒されている。内海では首長竜がのっそりと首を出し、向こうに見えて来た陸地には、絶滅種の森が繁っている。


「ここはね、今までカンカンちゃんと、タンタンちゃんにしか見せたことないのよ。アナタにもその時が来たのね、感激だワ!」


 ドリーから降りたジュッティー、ゴーティをだっこしたままくねくねと陸を歩き出した。


「森の中には恐竜もいるの。気をつけてね、あのコたち、落ちて来たばっかりでちょっと乱暴だから。ふふ。」


 ジュッティがその木に触腕をかざすと、上から風のカーテンが落ちて来て、さあっと、湿った体がさっぱりしたことに気がついた。にゅるりとしたイカたちが一瞬で、ゴーティは元のアネハヅル・ゴーティに、ジュッティは七色に光るツル様の鳥になって向かい合っていたのだ。


「うふっ!どう?元に戻ったわね。地上でイカのままだとしんどかったでしょ?今のはね、前世に戻れる風なのよ。ワタシも大昔はキラキラヅルだったんだから。ふふ。ウチに案内するわ。ちょっとひとっ飛びだから、ついて来て!」


 キラキラヅルは、とんでもない美しさで翼を広げ、箱庭のニセ空を飛び上がった。まぶしいキラキラを必死で追って、ゴーティもどうにか天井にたどり着くと、ジュッティは風切羽をその雲に差し込んだ。


 ピンポ~ン!


「はーい!」


 ドアを開けたのは、別のイカだった。


「おかえりなさーい!あら、ハーイ、ゴータマさんね、いらっしゃいませ、お疲れ様です!」


 頭上のエラをペラッと下げて、丁寧にお辞儀をするイカである。地味な灰色をしており、ジュッティヅルの半分程の体長で、全く別種の生身のイカのようだ。


「このコは、キラキラシナイイカのアディよ。ワタシの身の回りのお世話をしてくれてるの。地上では超々ヤバイ独裁者だったから、ずっとここで働いてもらうことにしたのよ。」


 ジュッティの執務室は、がらんどうだった。ゴーティにとっても落ち着く空間だ。ジュッティの目が光ると、何もない壁に、天と地と海の各地が無数の画面となって映し出された。


「どうぞ、くつろいでお茶でもしながらゆっくりしましょ。積もる話もいっぱいあるものね。アディ?」


 アディ・イカがくねくねと運んで来たのは、何と、緑茶と、…アンパンだった。


「ちょっと前に、ネアンデルタール人たちが農業を始めたの。がんばって色々作ってくれてるワ。食べてみて、ナカナカよ。」


「…あ、美味しいです!ん…タニーが喜びそう…」


「うん、そうね、タニーちゃん、がんばってるワ。あのコの旅立ちも、もうすぐね。」


 天上の画面が拡大され、天気制御に右往左往するツルたちが映し出された。


「お天気の方は、今のところはタニーちゃんで何とかなりそうね。でも、カーニーのことよね…」


「あの…カーニーとは、何があったんですか…?あなたのこと、とっても慕ってるみたいですけど…泣いてるカーニーなんて初めてでみんな驚いていたんです。」


「ええ。…とっても古いお話なの…」


 ジュッティは、キラキラ涙に語ってくれた。




 ふたりの出会いは地球ではない。


 宇宙を股に掛けた、時空を超えた壮大な、らぶ物語がそこにあった。これを理解するには、まず、イカとしてのジュッティの立場を知らねばならない。


 ジュッティは、今となっては海の底の支配者で、最大の敵として天上のツルたちに認識されているが、本来、それだけの存在ではなかった。議員に昇格できた、いのちを導くツルだけが知ることになる真実が、また別にあったのだ。


 魂は普遍である。機会があればくり返し生き、何度も死ぬが、体を持たずとも、その存在は消えることはない。生きものとなった経験は、すべて記憶として積み重なり、カーニーのように、時に力となって発揮される。その力を更に積み重ねると、他の魂を導く役割を担うことになる。すなわちツルとなり、ゴーティのように議員として最高位に立った者が、更なる高みへ旅立つのだ。


 その高みとは、漠然と宇宙のどこかと認識されているが、どの宇宙かは、時が来なければ分からない。旅立ったツルはまず宇宙を漂い、機会を見つけ、新しくいのちを育てるための惑星を、自らの力で一から創造するのだ。悠久の時を経てチリを集め、自らが核となって星を形作り、必要な環境を整えると、イカとして体を持ち、海の底からいのちを発する支配生命体となる。


 すなわち、イカこそが惑星の創造主であり、支配者であり、至高の存在であり、星といのちそのものである。


 地球のように、生きものが多様化し、天に地に、海にあまねく繁栄すると、至高のイカは、生きものたちのキラキラを根底で支えるために、自らは輝かずに海の底ですべてを見守るようになる。


 子孫たちがツルとなり、いのちを導き、新たなイカとなるために旅立つまで、叱咤激励し、力を引き出すためには敵視され嫌われても構わず、試練を与えることもある。また、ツルに届かない弱き魂を海の底に引き受け、再起する機会も与える。魂を昇らせるために、統合や転生を許可し、実行もする大いなる力である。


 そして、旅立つ資格を得られない魂だけが残された時、星自体のいのちを終わらせる時を決定する。イカ分裂エネルギーは、宇宙最高のエネルギーである。イカが星の核であるからには、それ自体が意志を持つ爆弾であり、起爆剤である。弱き魂たちと星の最期を見守り、すべてと共にチリとなって、ふたたび宇宙をさまようのだ。


 その際、弱き魂たちに自らの力を分け与え、良き魂となるよう、統合させる。こうしてイカとしての役目を終えて分裂し、また新たなイカがいのちを育てる条件を整えるまで、宇宙を漂い、時を待つのだ。宇宙とは、このような輪廻を続けているものなのである。


 キとラの間にあるものは、イカだった。魂が底に落ちて這い上がれないとしても、イカが必ず支えてくれる。そこは、地獄などでない。最期まで取り残されても、イカが一緒にいてくれて、身を挺して力を与えてくれる。


 故郷の星が、足許から裂けて無くなるのは、生きものには絶えがたい恐怖だ。何もできず、ただ恐怖が過ぎるのを待つしかない。その時イカは、これを避ける方法があったことを教えてくれる。キラキラを軽視したり力が不足していたこと、それでも新しい世界へ旅立てること、新しい世界を創造するためには残される者が必要であることを。その恐怖はあまりに耐えがたいため、記憶は封印され、イカの一部と、共に残された仲間たちとも統合し、新しい魂として生まれ変わることができるのだ。


 この記憶を取り戻せるのは、上昇を果たしたツルだけのはずだった。しかし深海魚・カーニーのらぶは、その法則を打ち破った。




 地球にやって来る前のふたりは、ある星で、共にツルとして切磋琢磨、いのちを導いていた。深く愛し合っていたふたりだが、ジュッティが先んじて旅立つべき時が来た。


 離れ離れになりたくなかったふたりは、また一緒になれる方法を探ったが、正統のイカとなった者同士がまた再会できる可能性には、全く希望が持てなかった。再会できるとしても、想像を絶する時を経てのことになる。どこかに抜け道を探そうとしても、どうしても見つからない。


 このらぶは、宇宙の法則に反するものとさえ思われた。立場を重んじたジュッティは諦め、カーニーのらぶを振り切って旅立った。


 悲しみの余り、カーニーはツルの仕事を放棄した。天上界を追放されたカーニーは、その星が滅ぼされるまで監禁され、ひとりぼっちで、ジュッティへのらぶをあたため続けた。体を取り上げられても、既に強き魂であったカーニーは、記憶を探り、知恵を絞り、ジュッティと再会するための方法を模索し続けた。やがて星と共にチリとなっても、魂は強く保たれた。記憶は薄れても、見事ジュッティの星を探り当て、地球の生き物として輝くことに成功したのだ。


 感動の再会だった。この海の底で光を見つけたジュッティは、宇宙の法則を変える程の、信じがたい奇蹟を目にしたのだ。もう冷静ではいられなかった。らぶのために、カーニーが払ってくれた犠牲や努力の何と大きいことか…!ちっこいサカナのキラキラに、すべてが凝縮されていた。究極の幸せを、ふたりは手に入れたのだ。




 ゴーティのアンパンは、涙を浴びてドロドロになった。ゴーティが元のアネハヅルに戻っていたことで、議員ヅルの脳を介した通信チャンネルが復活し、天上にいる私、タニーの脳にも、この話は届いていた。ふたりのらぶを聞き、師は私のことを思ってくれたからだ。嬉しいやら悲しいやらで、お陰で私も天上で号泣してしまい、雨が強まって大変なことになりそうだった。慌てて感情を制徊し、どんどんコツが掴めるようにはなったのだが。


「ゴータマちゃん、アナタもキラキラできるのね?」


 見ると確かに、アンパンはほんのりと発光していた。


「あ…カーニーの涙を浴びてタニーが光るようになったから…一緒にいてアタシにもうつったみたい…」


「このキラキラなのよ、カーニーの涙が、奇蹟なの!」


 らぶの証しとして自力発光を果たしたカーニーのキラキラには、天気制御のためだけではない力が凝縮されていた。カーニーが天気ヅルになったのはジュッティの計画だったが、想定していた効果以上の奇蹟を呼んだ。魂を分割することなく、その力を広めることができるのだ。


 深海で再会した後、ふたりはしばらく共に過ごしたが、更なる未来のためには、やはりカーニーはツルになる必要があると結論を下した。正統の手順を踏んでまず地上へ進出し、天気ヅルとして支配権を手にして時間を稼ぎ、議員ヅルとして古い記憶をすべて取り戻して、再度一緒になれる可能性を探ることにした。


 叶わずに地球を滅ぼすべき時が来れば、天と海は力を合わせて弱き魂を統合させて送り出し、イカとツルとして再会し、手を取り合って共にチリとなろうと決めていたのだ。互いのほんの一部しか一緒になれないだろうと半ば諦めかけていたのだが、カーニーが天気ヅルになってから地上時間で約二千年が経ち、キラキラの奇蹟の本当の意味が明らかになったのだ。


「このお茶も、メチャクチャおいしいと思わない?ウフフ!」


 カーニーのらぶが雨となって、ジュッティの元へ届いたのだ。キラキラ涙が、天気ヅルの降らせる雨としてあまねく地上に降り注ぎ、時を経て、深海の海水循環システムに取り込まれ、箱庭天国のお茶の旨味を決定するに至ったのである。


「カーニーのキラキラとらぶが、すべての生きものに届いたのよ!スゴイことだわ!」


 キラキラ+らぶ=ツル→イカ!


 弱き魂を育てているジュッティには、その効果は著しいものに見えた。極悪魂の有り余るネガティブパワーが、箱庭天国の発展に転換されて来ているからだ。このまま至高のらぶを与え続ければ、箱庭から出せなかった魂たちが、やがて地上へ昇る力を蓄えることも可能ではないだろうか。


「ゴータマちゃんも噂で聞いたことがあるんじゃないかしら、すべての魂がツルからイカとして旅立てた星が、どうなるか…」


 何たる天啓!すべての魂を自立させた時、イカと星は解放され自由になるのか、それとも全宇宙が爆発し、何かが始まるのか…!?


 イカも知らない真実が、希望と共にそこにある。


「悪い事が起こるとは思えないワ。だって、ワタシたちのらぶが本当に宇宙の法則に反するものだとしたら、カーニーはこの星にたどり着けなかったはずよ。再会できても途端に地球が破裂してたっておかしくないワ。そうよ!ワタシたち、許されたのよ!努力を重ねれば、宇宙の法則を作り替えることもできるの!きっとみんなで力を合わせれば、新しい宇宙を切り拓いて、ずっと一緒に生き続けられるワ!きゃ~!ワタシたち、やったのよ!きゃ~!」




 地上では、雨が完全にあがって水が引き、キラキラした虹が空にあふれかえっていた。そして天上は、再び陽気なサンバのリズムと強烈なサカナ臭に満たされていた。



 ずっちゃか、ずっちゃ、ずっちゃか、ずっちゃ、ずっちゃか、ずっちゃ、っちゃか、っちゃか、っちゃっ!


 どん!だん!どん!だんだん!だだだん!ピー!


 ひゅ~!ひゃ~!や~ん!ぴ~ぴ~ぴ~!


 アイシテル!アイシテルワ!キャ~!カーニーちゃん!


 めっちゃキラキラしてくれて、アリガトウ!ハ!


 アナタのらぶは届いたワ!ずんちゃ!そうよ!奇蹟のらぶよ!


 ひゅ~!ひゃ~!や~ん!ぴ~ぴ~ぴ~!


 もう大丈夫よ!元気を出して!カーニー、マイらぶ!だん!


 会いに来て!待ってるワ~!ジュッティより!らぶを込めて!


 ひゅ~!ひゃ~!や~ん!ぴ~ぴ~ぴ~!


 P・S!タニーちゃんもアリガトネ!どんどんどん!


 ずっちゃか、ずっちゃか、っちゃっ、っちゃっ!バ~イ!



 天上は、再びスシパーティーにずんどこ沸いた。天と海の間のわだかまりの解消が、タニーとカーニーによって宣言されたのだ。イカたちは地球史上初めて天上で十手を振るい、心のこもったウマウマパーティー料理をツルたちに提供した。新鮮な海産物が竜巻に乗って続々届けられ、イカとツルは共に食い、踊り、歌い、大いに笑った。


「モシモシ?ダーリン?タニー、ダーリン?」


「姉さん!ハ~イ、お疲れ様!信じられないワ!こっちはイカたちも一緒に最高に楽しんでるわよ!ウ~!」


「よかったワ!カーニーも元気になったわね?」


「ハイ!もちろん、ここにいるわよ!食いまくってるわ!ゴーティ、今回の事、ホントにごめんなさい、でもホントにありがとう、ワタシ幸せよ!一曲歌ってくる!」


 カーニーは、ノリノリハードロック調にアレンジした例の持ち歌を披露した。ホージーがバリバリギターを弾いている。


「タニー、あなたがもうすこし天気制御を学んだら、カーニーに休暇を与えるのよ。イカに生まれさせて、ジュッティに会わせてあげてね。今後時々はそうしてやって。あなたの負担は大変だろうけど、お互い様なんだし、よろしくね。」


「わかったわ、姉さん!アタシ何でもする!だって、アタシたちの未来も希望が見えてきたものね!アタシも絶対姉さんを追いかけて追いつくワ!アイシテルから!」


「ダーリン、アタシもアイシテルワ!そうよ、アタシたちの未来のために…」


「早く戻って来て、いっしょにいっぱい食べくらべしましょ!イカちゃんたちがね、いいネタが仕入れられる竜巻ルートを作ってくれたの!これからは天上でもスシ三昧を続けられるのよ!」


「ダーリン、アタシはこのまま行くわ。」


「…え…?」


「アタシたちの未来のために、一刻も早く旅立たなきゃね…あなたもよ。みんなを激励して、地上の魂も早くツルになれるようにがんばってもらわなきゃいけないワ。カーニーの恵みの雨のらぶはどんどん高濃度になるだろうけど、個々の魂が自分のらぶを発揮できなければ、希望は実現できないわ。そのことをみんなに教えて。あなたがよ。わかって、ダーリン…ここから旅立つのが一番早いの。アタシ、このまま宇宙へ飛んで行くワ…しばらくお別れよ…」


「姉さん…!そんな…!」


「あなたなら、カーニーにも負けないはずよ。アタシは先に行って、希望を探してるから、あなたもすぐに来て。ね?」


「でも、でも!どうしたらいいの?姉さんがどこにいるのか、どうやってわかるの?!」


「ダーリン…大丈夫よ…その時が来たらわかるはずよ…」


「でも!ひっっく!いやよ!姉さん!」


「いい?アタシに会いたかったら、光りなさい!宇宙の真っ暗闇で漂いながらでも、キラキラ輝くの!さびしくってツラかったら、歌いなさい!光ながら大きな声で歌うの!どのチリよりも、星にも負けずに輝くのよ!そうすれば、必ずアタシが見つけてあげる!また一緒になれるから!あなたにはその力があるの!泣いてばかりいると体力が落ちるわよ!わかってるでしょ?返事は!?」


「ひっっっく!ヤ、イヤよ…姉さんに会いたい…!」


「ダメ…!よけいにツラくなるわ…!ダーリン、聞きなさい!いのちを導く至高のツルの中のツル、タニー議員!」


「…は、はい!」


「今できることをがんばりなさい!会いたかったら光りなさい!さびしかったら歌いなさい!疲れちゃったらひと眠り!また明日がんばりなさい!時々なら泣いてもいいの!ホドホドにね!大丈夫よ、その時は来る!キラキラして待ってなさい!絶対アタシが見つけてあげるから!了解?!」


「はい!ゴーティ議員、了解しました…!ひいいっっっく…!」


「アイシテルワ、ダーリン…」


「アタシもアイシテルワ、姉さん…!」


「ほら、もう泣いちゃダメ、パーティーに戻りなさい…いっぱい食べて、力をつけるの…」


「ひぃぃぃっつく!わかったわ、わかった…!」


「もう行くわ…忘れないで…アイシテル…以上…通信終了!」


「ねえさああああああああんんんんんん!!わぁぁぁああああ!!」




 ゴーティ師は、イカ分裂エネルギーのおっそろしいパワーでもって、別の超銀河団まで吹ッ飛ばされた。叫ぶ暇はなかっただろう。光よりも速いロケットなのだ。なむ…


 私はやはり泣き崩れたが、カーニーが既に復活していて地上には影響を与えずに済んだので、お許しを願いたい…。はぁあ…


 私は、足をバタバタさせたり、頭のてっぺんを掻きむしったり、子孫の体を乗っ取ったりして平静を保とうとした。


 乙女ちっくの息子になってシオナのおっぱいで慰めてもらおうとしたが、一日中乙女ちっくにおぶられてばっかりでもうウンザリ、ヤツの顔にションベン引っ掛けてやったが、仕方ないのでネコのキラリのどれかになって、おっちゃんちのサカナをしこたま食って、孫に甘えて気を紛らわせてもみた。


 しまいには、エベレストのてっぺんに籠ってみたりした。この方法が一番気が落ち着いた。雪が降るし、寒いしで、ツルである醍醐味を思い出した。支配者の孤独は重いが、私は、飛ばなければならない。



 ピンポ~ン!!


「タニーさ~ん、お荷物で~す!」


 エベレストの頂上の上、雪風を感じていた私の目の前に、前触れも気配もなく、ちっこいUFOが出現した。


 ぷかぷか浮かんで小刻みに回りながら、てっぺんの丸扉がひゃっっと開いて、にょろっとイカゲソがこんにちワと来たもんだ…


「あら!…どうもご苦労サマ…?」


「全銀河イカ急便のご利用、毎度ありがとうございま~す!サインはこちらにお願いしま~す。」


 配達イカのにいちゃんは、ポカンヅラの私の目玉を構わずスキャンし、ちっこいボードを差し出した。


「手かざしです、ココに、ハイ!ありがとうございましたぁ!」


 にいちゃんのイカゲソは超速攻で引っ込んで、丸扉がひゅっっと閉じられた。と同時に、UFOはもう消えていた。私は、手渡されたキレイな小箱の伝票を見て、目が覚めた。



 全銀河イカ急便


  タイムトラベルVIP特別便  元払



 お届け先


  うお座・くじら座超銀河団


  おとめ座超銀河団  局部銀河群


  天の川銀河  太陽系  惑星・地球


  天上界  ヒマラヤ山脈  エベレスト山頂


  地上時間  西暦2033年12月14日



 お名前


  タニー・タンチョウヅルノナカノタンチョウヅル 様



 ご依頼主


  ゴーティ・元アネハヅルノナカノアネハヅル 様



 全銀河イカ急便


  局部銀河  アンドロメダ銀河支店留


 お品物  衣類



「えっっ!!ちょっと!お兄さん!これってどこから来たの!?」


 私は四方八方に向かってひとしきり騒いだが、ナシのつぶて、イカにいちゃんを乗せたUFOは、とっくにこの銀河を飛び出していた。


 あああ…姉さんから…!


 キュートなラッピングを震える手羽先で開いて、中身のキラキラに圧倒された。私のための、新開発・議員用ハゴロモだ。


 以前のものと同じようでいて、全く違った。ふんわり首に巻いてみると、羽にすっとなじんで消えてしまった。ハートの芯までジーンと染み込んだ感じがして、脳ミソでイメージすると、自由に起動ができるのだ。


 …ハ~イ、ダーリン?もう元気は出た?このハゴロモが身に染みたらもうアナタは無敵よ、すべての真実は宇宙にあるワ。早くこっちに来てカギを見つけてネ。アイシテルワ…悠久の未来から、らぶを込めて…


 元ゴーティより…んちゅ…



 体の芯からホットになった私は、頭のてっぺんにピンクの火を揺らしながらひと踊り、ステップを決めて、どこでも行けちゃうドアを起動した。国宝級漆塗りの赤と黒と金箔が、キラリ、輝いている。


 ああ、そうだね、この先に、未来があるんだ…!


 私は、首を延ばしてドアを開けた。仲間たちが、そこで待ってくれていた。カーニーに、ホージーに、新たにタンチョウヅルとなった、つるっぺもいる。


 私を迎えて、あたたかく抱き締めてくれる仲間たち、ナイスな音楽、ウマいスシ、この星のすべてのいのちがキラキラしていれば、未来はすぐに来てくれるんだね、姉さん…。うう~ん…らぶだわぁ…


 よっしゃ、ツルの体で踊り明かすぜ!!ひゅ~!




 だんだん!どんどんどんどん!


 イェ、イェ、イェ、ガッ!オーマイ、オーマイゴーティー!


 会いたかったら?イエーイ!


 光りなさい、光なさい!ナム!


 さびしかったら?いや~ん!


 歌いなさい!歌いなさい、ナム!


 疲れちゃったら?うえ~ん!


 寝ちゃいなさい!寝ちゃいなさい、ナム!


 また明日、がんばりなさい!


 ナムナム!ナムナムナムナム!


 時々なら、泣いてもいいのよ…ホドホドにね!


 だんだん!どんどんどんどん!


 ずっちゃずっちゃ!ずっちゃずっちゃ!ずっちゃずっちゃ!


 ずんずんずんずん!


 今できることを、がんばるのよ!その時は、必ず来る!ハイ!


 絶対見つけてあげるから、全力で光りなさい!ハイ!!


 キラキラに、らぶを足して、飛び立つのよ!ハイ!!


 イェ、ナム、ツルはサイコー!


 イェ、ナム、らぶはゴーティ!


 イェ、ナム、イカもサイコー!


 イェ、ナム、らぶはキラキラ!キラキラ!キラキラ!キラキラよ!


 だんだん!どんどんどんどん!


 イェ、イェ、イェ、ガッ!オーマイ、オーマイゴーティ!


 イェ、ナム、らぶはキラキラ!キラキラ!キラキラ!キラキラよ!


 ひゅ~!!


 バ~イ!!


 だだ~んんんん!!



終了です、今までありがとうございました。

キとラのシリーズとして、これで第二部まで投稿できました。

第三部の構想はありますが、なかなか進まずでして…またその内にお目にかかりたいと思っています。

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