バンとサリー、互いの目的
その頃バンとサリーは、無人兵器と交戦していた。
「しかし、デカイよな相変わらず!」
「文句の割には楽しそうじゃない、バン!」
太刀を振り抜くバンと、弓矢を放つサリー。
本来ならば近代兵器が有利なのだが、それが分からない二人ではない。
この二人が最も得意とする武器で、近代兵器を超える改造を施しているのが、今回の武器である。
バンの太刀は、超極細微の振動とプラマイと出力の切り替えができる電流機能が搭載されている。また、やたらと軽量。
サリーの弓は自動照準と拡散弾がついており、元々のサリーのスナイパースキルがより強化されるカスタムである。
この無人兵器は、巨体の為に関節が広く取られる。そのため関節を集中的に攻めることで簡単に崩せる。
しかし装甲の固さと火力の大きさによって、簡単に近づけないのが現状である。サリーが射ち、その隙にバンが斬る。現状はこれが最も安定した策である。
「しかし何だコイツは、隙が多すぎだ。まるで……」
「使い捨て、みたいだね」
バンとサリーには違和感が感じられた。普通に襲撃用に送り込み、時間稼ぎをするなら、もっとしっかりしたのを送り込む。
ということは、これがやられようがどうでもいいということ。目的は、別にある。
「っ……、迅!」
思い当たるのは一つ。迅が確保したあの着ぐるみ。
月の軍がもし、あれの回収が目的だったのならば。自分達の作戦が予想通りで、計画通りに迅を仕留めて、着ぐるみを回収しようとしているならば。
最悪の事態と言っても過言ではない。これが、奴等の狙い。
「サリー、お前はバンのところに行け。俺もすぐに追い付く」
「アンタ一人じゃ無理だ。それともアレを使うのかい?」
「ああ、迅の救出にはお前が適任だ。アイツはここで死なせてはいけない、その事実には、お前も気づいてるはずだ」
バンとサリーは互いに背中を向け、お互いの目的を感じ取った。だからサリーにはバンへの警告しかできなかった。
「制限時間は5分だ。それ以降は死んでもおかしくない」
「安心しろ、1分あれば充分だ」
サリーは微笑みその場を去った。
そして、バンも久しぶりに笑みを浮かべる。
「お祭りだ。遊ぼうぜロボット野郎」
次の瞬間、周囲は青い光に包まれた。
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